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闇の奥 みんなのレビュー

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一般書

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みんなのレビュー38件

みんなの評価3.8

評価内訳

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37 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

映画「地獄の黙示録特別完全版」では、銃撃シーンよりも密林奥地への探索行が印象強いとか…。あの映画の原案になったということで読んでみたが、まさに闇の奥に分け入るような難解さ。

2002/03/05 11:07

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『地獄の黙示録』の原案だと聞いていたので、インドシナの奥地を描いた冒険小説だとずっと思っていたのだけれど、舞台はアフリカ奥地であった。コンラッドといえば英国作家なのだから、植民地支配の勢力地図をよく考えれば、確かにインドシナであるはずがない…と合点がいく。

 しかし、コンラッドは作家としてのペンネームで、もとは生粋のポーランド人。1857年に彼が生まれたとき、列強に分割された故国ポーランドは地図上に存在しない国なのであった。巻末の作家小伝をさらに抜粋すれば、コンラッドの父は英仏文学の訳書を手がけるインテリで、暮らしは貴族的であったとか。だが、その父が独立運動に参加して北ロシアに流刑、家族も強制移住。孤児となったコンラッドは親戚に引き取られ、17歳で船乗りとなる。冒険小説家コンラッドのバックボーンに納得する。でも、この『闇の奥』の難解さが、インテリの血筋によるものなのか、言語的な問題なのか何なのかは判然としない。

 本文は160ページ弱の中篇なのである。2時間ぐらいあれば読めそうな気がしていた。が、60ページぐらいまで読んだところで中座を余儀なくされた私は、次に手にしたとき、中身がよくつかめておらず頭が空っぽなのに気がついた。そこで、もう一度集中力を高めながら最初から読み返してみることにした。

 船乗りというのは船が家ゆえ、案外出不精なたちらしい。ところが、この物語の語り手であるマーロウは漂浪を好む船乗りで、アフリカの地図上に広がる空白(探検隊の未踏の地)に疼くようなあこがれを感じていた。コネを頼って貿易会社を訪ね、アフリカ奥地の川を航行する三文蒸汽船の船長に就いた。
 乗り込んだアフリカで、マーロウはクルツという男が失踪したという話を聞く。奥も奥も一番の端っこの出張所を預かっていたクルツは、腕ききの象牙トレーダーで、原住民から相当量の象牙を入手し、基地に送り込んでいたのだが、音信を絶ったという。さらに川を遡っていくマーロウだったが、肝心の自分の職場となる船は、なぜか沈んでしまったということを知らされる…。

 物語はむしろシンプルで、得体の知れない密林の奥へ奥へと、クルツなる人物に吸い寄せられるようにして主人公が探索をしていく…というだけのことである。何が難解かというと、たとえばある状態のマーロウの心理を描写するのに書かれている暗喩とか抽象的な概念とか、観念的な表現を読み解いていくのに時間がかかるのである。つまり、行間やら作家の世界やらに分け入るのに難儀する。

 闇の奥というのは、暗黒大陸の奥地のほかに心理的内面的世界という処女地をも指しているという訳者のガイドがあったが、小説という闇の奥を、ゆっくり慎重に筏で遡行していくような気分が襲いかかってきた。それはまさしく、映画「地獄の黙示録」で味わったあの感じなのである。小説の結びの数行が、この遡行の行く末を象徴しているようであった。短い文章だが、クルツという人物のように圧倒的な存在感ある作品だと思えた。

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紙の本

暗黒の中心部へ

2005/02/16 22:43

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

自然と闘う姿というのは一つの分かりやすい形だろうが、文明、社会、あるいは自分とは別個の1人の人間に対してでも、闘う、あるいは征服するということだけで他のすべてを投げうってしまえるだけの動機足り得る。それが人間の中に棲む魔物の正体だ。とりわけ社会、人間を相手にする場合の欲求こそは、人間が高度な社会を形成する原動力であり、これがあるからこそ人間を人間たり得させているのではないだろうか。
語り手である英国人船乗りは地図上の空白と呼び、また暗黒大陸とも言われたアフリカや、あるいはインド、清教徒にとっての新大陸なども、征服に足る巨大な獲物と言っていいだろう。船乗りと言う職業もまた海という強大な自然と闘う者であり、その欲望の存在には感を得やすいところに立っていた故に、この物語を発見できたのだと思う。
語る側の男は、パリにある交易会社、無論その実はビジネスと称して象牙その他の植民地からの収奪を目的としていた、その持ち物である蒸気船の船長としてコンゴ川を上流に数百マイル遡る。その「交易」の論理に正当性を認めることが19世紀末のヨーロッパ社会でまっとうな人間として認められる道であったわけだが、語られる男=クルツは、それからまったく独立して直感に従い、衝動を解放させるという方法でその地に自分の地歩を築くことができた。その欲望は、単なる未開地の開拓でなく、原住民社会の存在の上でより一層の魅力を放っていたはずだ。それをヨーロッパの論理で説明しようとすれば、既にそこが漆黒の闇であり、密林の広がりと同じに果てしない謎となる。
語り手=作者はそこに闇の存在を確かに嗅ぎ付けた。
現代においてはこの闇のメカニズムはよく知られていると思うが、それでも相変わらず「心の闇」とだけ称して説明を拒もうとする態度が多く見られるのは、果たして文学者の怠慢なのだろうか。
ポーランド生まれの作者による英語のせいか訳文のせいか、とにかく読みづらいのだが、気分の乗り方次第で気楽に読み継いだらいい本だと思う。

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2006/07/20 22:50

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2012/10/31 21:15

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