紙の本
<ポアロさん、あたしのサイン帳にあなたの名前を書いて!>本書 p.427より。万華鏡でも覗くように、エルキュール・ポアロの活躍が楽しめる短篇集です。
2010/05/01 06:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
エルキュール・ポアロの“エルキュール”という名前は、ギリシャ神話に登場する“ヘラクレス”のフランス語読みにあたります。そのことに興味を引かれたポアロが、あたかもヘラクレスが十二の難業を成し遂げたように、十二の事件を手がけることにした、というところから、話がはじまる短篇集。
おしまいの短篇「ケルベロスの捕獲」を除いた十一篇がまず、『ストランド・マガジン』誌の1939年9月号から1940年9月号に連載され、おそらくは話の内容により掲載されなかった「ケルベロスの捕獲」が、全く別の話に変わって追加され、『ヘラクレスの冒険』として出版されたのが1947年の9月だった、という経緯がある作品集です。この辺の事情は、『アガサ・クリスティーの秘密ノート』の上巻に記されています。
ひとつひとつの短篇はそこそこ楽しめるという程の小粒なものですが、舞台がヨーロッパのあちこちにまたがる国際色豊かなもので、ポアロという探偵が“ヘラクレスの難業”にちなむ事件にあたるという統一性があるせいでしょうか。作品の雰囲気に調和とセンスがあって、全体としてとても読み心地のいい短篇集になっていますね。
ポアロものの名作と引っかけて言わせてもらえば、ちょうど、かの有名なオリエント急行に乗車して、様々に変化していく窓外の景色を眺めながら、卵型の顔にぴんとはねた口髭の小男(コンパートメントに相席していた、不思議な存在感を持った人物!)が活躍する探偵譚に耳を傾けている、とでもいった感じ。なかでも、「ネメアのライオン」「アウゲイアス王の大牛舎」「スチュムパロスの鳥」「ヘスペリスたちのリンゴ」の事件が面白かった。
それと、おしまいの「ケルベロスの捕獲」は、この第二バージョン版よりも、当初、雑誌に載るはずだった初期バージョンのもの(『アガサ・クリスティーの秘密ノート』上巻に収録)のほうが、インパクトがあって魅力的ですね。この初期バージョン「ケルベロスの捕獲」からさらに、フリッツ・ライバーのSF短篇の逸品「あの飛行船をつかまえろ」(『20世紀SF 第4巻 接続された女』所収)を読んでみると、なかなか風変わりで素敵な本の旅ができるかもしれません。
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ヘラクレス
2021/05/23 16:12
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
エルキュールがヘラクレスとは!
存じ上げずにお恥ずかしい限り。
ポアロさんの意外な一面も垣間見られて、ちょっとびっくりしました。
これで引退?さみしい限りです。
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ミス・カーナビ
2019/10/08 19:56
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポアロは長編の方が好きですが、これは多様な話が収められていて面白いです。ミス・カーナビという女性が良いキャラクターでした。長編にも出て欲しかったです。
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ポアロの十二の難業
2017/05/16 22:14
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポアロが舞い込んでくる依頼をヘラクレスの十二の難業になぞらえて次々と解決していく短編集。しかも引き受ける依頼がいろんな種類になっています。殺人事件はもちろん、人捜しや、誘拐事件、果ては横領事件のもみ消しなどなど、話ごとに事件の性質に変化があるから飽きませんね。最後の話でロサコフ伯爵夫人が出てきたのがうれしかった。ポアロとロサコフ伯爵夫人のやりとりは読んでいておもしろいんですよね。
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ヘラクレスの冒険
2013/05/20 22:18
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投稿者:ホームズ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みやすい短編集でした(笑)ミステリとしては割と分かりやすいのも多かったかな(笑)『ヘスペリスたちのリンゴ』の最後のポアロと修道院長との会話が好きですね(笑)やっぱり原作とドラマではポアロもミス・レモンもキャラクターが全然違いますね~(笑)
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はじめて読んだエルキュールポワロのおはなし。エルキュールという名前の意味や12の事件に分かれていてとても読みやすかった。長編が苦手という人にお勧め!!!
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期待はずれ。ポアロファンの人にはいいとおもうけどトリックの粗が目立って無理矢理感がある。短編だから仕方ないのかな・・・短編だから読みやすいです。
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引退を控えたポアロが、自らのクリスチャン・ネームであるエルキュール(=ヘラクレス)にかけて「十二件の依頼を受けてやろう。しかも、その十二件は、ギリシャ神話のヘラクレスの十二の難業を参考にしてえらばなければならない」と、難事件の数々に挑戦。オムニバス形式の短篇十二篇を収めた作品集
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程好い厚さなのに短篇集なのでお気に入り。でも、ポアロらしくない一冊かも。ミステリ要素は薄いです。ポアロが引退しようと自らの名前エルキュールにちなんでヘラクレスの偉業に見立てた事件を次々とこなしていく話。
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クリスティのポアロ短編集。ヘラクレスの12の偉業になぞらえた、ポアロの事件。
ポアロが充分に活躍するには大きな舞台が必要だ、といったのはクリスティ本人だったか。実際その通りだと思います。ポアロに短編はあまり似合わない。
とはいえ、物語的に言ってヘラクレス(=エルキュール)の物語になぞらえたこのお話は、まとまりがよく、面白いと思う。
クリスティの物語は、イギリスの当たり前を前提にしており、ギリシャ神話への理解というのもその一つ。日本人にはなじみにくいヘラクレスの12の難行について、あらかじめ知っておけばなお楽しめるはず。
なお、クリスティの話にはこの手の話が多い。マザー・グースになぞらえた話(最も有名なのは、ノン・シリーズでもっとも著名な『そして誰もいなくなった』である)、コントラクト・ブリッジを知らなければおよそついていけない『ひらいたトランプ』、クリスマスについてのイギリス的な理解やディケンズの『クリスマス・キャロル』を読んでいなければあまり理解できそうもない『ポアロのクリスマス』など。
『アクロイド殺し』や『オリエント急行の殺人』が人気なのは、斬新で分かりやすいだけではなく、イギリスという文化的背景を共有しなくても分かりやすいからだというのがありそうである。
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そろそろ引退を考え始めたポアロが、自分の名前である
エルキュールに因んだギリシャ神話の英雄「ヘラクレス」が
成し遂げた「12の冒険」にかけて、
その一つ一つの偉業に絡む「12の事件」の依頼を引き受け、
ものの見事に解決する短編集。
彼の引き受けた12の事件は、
ペット誘拐とか政治家のスキャンダルの揉み消しとか
普段の長編ではポアロが興味を示さず手を出さなそうなものから、
クリスティー女史のある意味得意分野である「毒殺」も数編あるし、
現代の世の中でもニュースで話題になるような
宗教がらみの犯罪もあったりと、実にバラエティ豊かで、
最初の事件「ネメアのライオン」から
最後の事件「ケルベロスの捕獲」まで
途中で飽きる事なく楽く読める。
でも、やっぱり私はポアロ作品は長編の方が好き。
短編になると、元来のポアロ作品の持つ良さが
「凝縮する」というよりは「薄まっている」感じ。
犯人が殺害に至るまでの動機、事件が起きるまでの
経緯(そこに張り巡らされた伏線)、
ポアロがいよいよ事件解決に乗り出し、
容疑者や関係者達と対話し、
分析して真相に辿り着くまでの過程が、
緻密、かつ丁寧に描かれる事で、
真犯人を中心として登場人物達の隠された
心の様(さま)や魅力を浮き彫りにするのが
「ポアロ・シリーズ」の魅力だと思うので、
その表現のボリュームと内容の濃さは
短編だと収めきれない感がある。
ただ、さくっと読めて軽く楽しめる作品ではあるので、
移動中の電車やバスの中での読書とか、
「一人カフェでお茶」とか、
誰かを待っている時の時間つぶしなどにおススメ。
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『ネメアの犬』
犬の誘拐事件。散歩中のコンパニオンの元から消えた犬の謎。
『レルネーのヒドラ』
自分の妻を毒殺したと言われる医師の依頼。新たな恋人の看護婦と昔から勤める看護婦の証言。
『アルカディアの鹿』
旅先で知り合ったバレーダンサーのメイドの行方を捜す青年。イタリアの故郷で死んだというメイド。引退したバレーダンサー。
『エルマントスのイノシシ』
スイスで静養中のポアロに依頼。友人の警視から山荘に逃げ込んだ殺人犯とその仲間の逮捕要請。ケーブルカーが破壊され孤立する山荘で襲撃を受けるポアロと遺体。
『アウゲイアス王の大牛舎』
首相の義父であり師匠である人物を強請る新聞社。首相の妻のスキャンダルを扱うが・・・。
『スチュムバロスの鳥』
暴力的な夫から逃げる妻と恋に落ちた青年。謎のポーランド人姉妹。襲ってきた夫を誤って殺害してしまうが・・・。
『クレタの雄牛』
自分の婚約者が狂気の遺伝子を理由に婚約を破棄してきた。婚約者の父親、死んだ母親、友人の関係。婚約者の家で起きる羊などの動物の殺害事件。追い詰められる婚約者。
『ディオメーデスの馬』
コカインを常用し恋人に向かって発砲した女性。コカインの出どころの調査。犯罪者を養女にするグラント将軍の秘密。
『ヒッポリュテの帯』
ルーベンスの絵画の盗難事件。フランスでの調査に赴く直前のジャップ主任警部からの依頼。旅行中の女学生の失踪。列車から消える。ルーベンス盗難との関係。
『ゲリュオンの牛』
元窃盗犯の女。謎の宗教の教祖となった科学者。信者たちは孤独な女性。信者たちの謎の死との関係。
『ヘスペリスたちのリンゴ』
10年前に盗難されたボルジア家の杯の行方。所有権を主張する男の依頼。修道院に隠された謎。
『ケルベロスの捕獲』
知り合いのロシア夫人に「地獄」へ招待されたポアロ。「地獄」での刑事の張り込み。「地獄」が舞台の麻薬取引。番犬に隠された謎。盗まれたエメラルド。
2010年4月17日読了
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どちらかといえばミスマープルのほうが好きなのだが、新訳をみつけたので再読。「クレタの雄牛」は怖い。
lib
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この本すごい大好き。
ヘラクレスの12の偉業になぞらえた短編集。
盛りだくさんで贅沢な内容だ。
30年間掃除したことのない牛舎を1日で掃除しろと言われた
王様からの難題は、「無責任なうわさを消せ」というポアロへの任務へ。
さて、どうするのか?
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クリスティのマイベスト10に入れたい、短編を体系的にまとめた作品です。
ひとつづつの事件は、必ずしも殺人があるわけではない。
必ずしも犯人がつかまるわけではない。
ヘラクレスの物語になぞらえた事件設定と、ポアロの人間性が現れている。
本書の、解説に書かれている
「著者を通しての、イギリス人の考え方やその他の国々の人たちに対する歴史認識、思想、政治や人種に対する思いなどもまた、やはりある年齢に達しないと面白がれないのではないかと思う。そうでないと、ただ予想外の犯人や驚天の犯行動機、奇想天外のトリック、そして鬼も泣く探偵の推理などに目が奪われるばかりで、クリスティ特有の深みを享受することは難しい。ことに食べものや飲みものに対する好みや道具類、服装などに対する薀蓄、たとえばポアロやミスマープルたちに生かされているそれらを十分に味わうには、やはり読む側にも受け入れる素地がないと」
という文章は、クリスティの楽しみ方を示唆していると思われた。
イギリスでの生活もしたことがなく、
クリスティが書いた年齢にも達していない人間には、
映像を通じて、読む側にも受け入れる素地を醸成するのも手だと確信した。