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山本周五郎を読むなら、ほかの本からどうぞ
2018/05/19 09:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
山本周五郎の短篇集『あんちゃん』は、町人物あり、武家物ありの作品集。
救われない話あり、無私の愛あり、極悪非道の男あり、 どたばたユーモア物あり、家族内いじめあり、LGBT的な話までありと、バラエティに富んだ作品集でした。
山本周五郎は、やっぱり人間は素晴らしい、と思わせる名作がいくつもあるのだけど、この作品集は、生きるのはなかなかしんどいなあと思わせる作品が多かったように思います。
これから山本周五郎を読んでみようか、と思う人にはおすすめできませんね。
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あんちゃんについて
2001/07/25 16:21
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投稿者:江湖之処士 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東映時代劇全盛の時代「暴れん坊兄弟」という作品が封切られたことをご存知の方はどれだけいらっしゃるだろうか。東千代之介演じるおっとりとした兄と中村賀津雄扮するせっかちな弟が、殿(中村錦之助)の御国入り間近の藩政を改革するという物語である(昭和35年 沢島忠監督)。あるとき私はこの映画を見て、すっかり虜になってしまった。千代之介、錦之助、賀津雄といった面々の魅力が画面一杯にあふれ返っている。この映画の原作が周五郎なのであった。「あんちゃん」所収の「思い違い物語」がそれである。映画はこの作品のほかに「町奉行日記」所収の「わたくしです物語」、その他さまざまな要素をぶち込んで膨らませたものであるが、原作も思わず笑ってしまう、周五郎作品の中では明るい部類のさわやかな一編であった。もし、周五郎は暗く悲しいから、といって読まない人があったならぜひともこの短編集を読んでみてほしい。
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禁断の愛。その愛ゆえに悩みもがいていく様子。愛するが故に幸せになって欲しい。自分の幸せより先に・・・。
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なんたって山本周五郎の兄妹ものってことでずっと前から読みたかった。今よりずっと風当たり強かったんだろうな。どの時代にだって絶対いるのに。せつない
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女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた武家のお姫様が主人公と云う、ちょっとベルばらちっくな(笑)『菊千代抄』が目当てで読みましたが、他の作品も面白かったです。知らず知らずのうちに引き込まれて読んでいました。
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・生き別れの父親との再会(いさましい話)
・男装の麗人と、影となってお仕えする寡黙な男(菊千代抄)
・想いに戸惑う、血の繋がらない兄妹(あんちゃん)
山本周五郎作品の中でも、「お好きな方にはたまらない」系設定の短編ばかりを集めた本です。が、人間の本質に対してモラリッシュな山本周五郎作品ですから、萌え展開にはなりません。
男として生きることを強いられ、途中からは自分でそれを選んだつもりの菊千代は、トリックスター的に周りを戸惑わせる存在ではありません。専ら振り回され痛めつけられるのは彼女のほうです。社会が社会を機能させるために決めたルールが自分を阻むときは、どこかで打ち破っていくべきだ。けれど、人間が人間として生きるために必要な掟は、失ってはいけない。どの作品もそれが根底にあるように思います。
この本に対して饒舌なのは、私が「菊千代抄」で卒論書いたからです。最初は「設定がベルばらみたいー!」と、漫画的展開論みたいなのをやろうかと思ったんです。全然違いました。肩より低く頭を垂れました。打ち破るべきものと、壊してはいけないもの。そこを履き違えると、おそろしいことになりますね。確かに。
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後半の数編、ノウゼンカズラやあんちゃんはあまり面白くなかった。長編に見る細部の緻密さがない。
これだけの文豪にも駄作があるのか、とちょっと安心。
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菊千代抄
思い違い物語
七日七夜
が良い感じ。
人間関係の不思議さを凝視した作品という解説があったけど、
人間関係というより、
一人一人の人間の心理と行動の不思議さに注目してる感じがしました。
人間関係の不思議さを突き詰めていくと個人の内面に到達するってことなのかな。
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昭和13年~33年にわたって発表された作品を集めた文庫だそうだが、
凌霄花(のうぜんかずら)が良かった。
狂おしいほどに渇望していたものでも、手に入れてしまえば当たり前になってしまう。
そんな人間の性がうまく書かれていて、グイグイと引き込まれてしまった。
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図書館で。
思い違いの弟みたいな粗忽もの、苦手だなあ~ でも次女とは良い夫婦になりそう。お父さんは胃が痛いだろうけど。なんとも文章もお話も上手だなあ、というありきたりな感想しか出てこない。でもそれってすごい事なんだと思う。
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鉄板でおもしろい山本周五郎.どれも人情味溢れる話だが,やっぱり藩政改革の「いさましい話」と「思い違い物語」かな,まったくトーンは違うのだけれども.
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少し変わり種の設定が多い短編集、でも最後のオチはなかなか。もう少し良い環境、時間の時に再読したかったですな。
許すまじき輩どもの多いことよ。。。
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菊千代抄を読んだ。
1945年に第二次世界大戦が終わった。
この小説が発表されたのは1950年。
小津安二郎の「東京物語」は1953年。
なぜここで俺「東京物語」を持ち出すのかというと、戦争を引きずった作品だからだ。
菊千代抄は、武家の物語だ。最近のトレンドであるLGBTがテーマでもある。
敗戦後、時代の空気は重かったのだろうか。もしくは、終戦後、ある種の開放感があったのだろうか。
菊千代が江戸にいた時代を戦時中に置き換えるなら、地方に移動した時代は戦後ではないか。暮らしは不自由だが、メンタルは自由に生きられたのかもしれない。
戦争が終わって、人は自由になった、という気持ちが、本作にはこめられているのではなかろうか。
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山本周五郎の短篇小説集『あんちゃん』を読みました。
『編傑作選4 しづやしづ』、『花杖記』に続き、山本周五郎の作品です。
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妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。
世継ぎのいない武家の習いとして、女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた者の悲劇を追った『菊千代抄』。
ほかに『思い違い物語』『七日七夜』『ひとでなし』など、人間をつき動かす最も奥深い心理と生理に分け入り、人間関係の不思議さを凝視した秀作八編を収録。
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昭和10年(1935年)から昭和33年(1958年)に発表された作品8篇が収録されています。
■いさましい話
■菊千代抄
■思い違い物語
■七日七夜
■凌霄花
■あんちゃん
■ひとでなし
■薮落し
■解説 木村久邇典
収録されている8篇のうち『菊千代抄』だけは再読… 共感できる好みの作品と共感できない作品が半々だったかなー
藩政改革に意欲を燃やす藩主の意を受け、大幅な緊縮財政を断行するため勘定奉行として江戸から国元へ下向した笈川玄一郎が、よそ者扱いされ反発されながら、実父の助けもあり改革を成し遂げる『いさましい話』、
後継者を絶やさぬため男として育てられた姫君の哀しみ、苦悩し嫌悪感に苦しめられる痛ましい半生を描いた『菊千代抄』、
こっけいものの一篇でユーモアたっぷり… 軽率でおしゃべりで粗忽を繰り返す典木泰三は、あまりにも迷惑なので閑職である古い帳簿を計算しなおす検計係に飛ばされてしまうが、そこで、藩内の不正金を見事に暴いてしまう という、愛すべき憎めない人物造形と痛快な展開が愉しめる『思い違い物語』、
旗本三千石の四男坊という一生うだつのあがらぬ星の下に生まれた本田昌平の境涯をがらりと変えてしまう七日と七夜を描いた物語… 新吉原などで大失態を起こし、金を巻き上げられ、自自暴自棄になった昌平が、町人たちの心の優しさに触れ武家を捨てて門前仲町の居酒屋で夫婦になり立派に町人として独り立ちするという心温まる展開が印象的な『七日七夜』、
が好みでしたねー 小説を愉しみながら、ひとの生き方を教えられたような作品たちでしたね。