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徳川幕府の内政改革史
2021/02/01 21:37
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投稿者:だい - この投稿者のレビュー一覧を見る
○六代家宣の新政
家宣は綱吉の遺言に逆らって“生類憐みの令”を即日廃止するなど、綱吉政治の否定と見られるが、それは政治理念の違いであるだけであり、政治システムは綱吉の後継者である
家宣の新政を“正徳の治”という
家宣は綱吉の側近や重臣をことごとく更迭したが、勘定奉行荻原重秀だけは残した
貨幣改鋳の問題を終息できる人材はいなかった
家宣は将軍家に後継者が絶えた場合、尾張徳川家から吉道を迎え入れるべきと考えていた
家宣は紀伊家を嫌っており、将軍が紀伊家から出ることは絶対にないことは幕閣の常識だった
しかし、吉道は若くして死んだ(暗殺?)
七代家継も八歳で亡くなった
家宣の生母“月光院”への正室“天英院”(大奥)の反発により、紀伊家吉宗が迎え入れられることになった
○八代吉宗の支配
吉宗は家宣への反感から、綱吉への回帰を図った
また、伊勢山田奉行だった大岡越前守忠相を江戸町奉行に抜擢した
大岡は町奉行として吉宗の善政を大いに助けた
代表例は、町火消の設置と小石川養生所の設置・運営である
吉宗は目安箱の設置により“将軍家といえども誤りを犯すこともある”ことを宣言した
が、名君吉宗は経済の運営者としては“下の下”であった
それは儒教の持つ欠陥であり、商業・金融は悪という発想である(貴穀賤金)
米を基軸通貨としているのに、実際には商品であるため、“貴穀”の下に増産されれば価格は下がり、幕府の財政は悪化する
給料を米でもらっている武士階級も困窮する
儒教のもたらす“貴穀賤金”思想と日本独特の“ケガレ忌避”思想の結果である
○将軍吉宗vs尾張宗春
尾張七代徳川宗春は、吉宗の失政を批判し続けた
“お上が倹約するのは構わないが、商人や庶民にまで強制するのは経済政策として誤りである”
宗春は尾張入部の際に吉宗の政策を批判した“温知政要”と名付けた著者を全藩士に配布した
名古屋は東海道五十三次に入らない土地であったが、芝居小屋を認めるなど名古屋活性化策を成功させた
対抗策として二卿(田安・一橋)を創始、息子家重が創始した一卿(清水)の御三卿を創始し、尾張徳川家つぶしを図った
御三卿は藩ではなく家なので、無嗣絶家になることはなく、吉宗の血筋を確実に残し、未来永劫将軍職を独占した
尾張徳川家は宗春の強制隠居の後、10代で直系断然し、一橋家斉朝が継いだ
一橋家も後継者がいなくなり、養子となって継いだのが、水戸徳川家七男の慶喜である
ここで一橋慶喜となり、水戸家出身がリセットされ、水戸学を硬く信じる男が将軍になることができた
○田沼意次vs松平定信
江戸時代は、幕府は“米”が貨幣であったが、民間は貨幣経済になっていた
米は商品なので、農民は米を作れば作る程、生活が苦しくなっていった
田沼意次は、賄賂好き悪徳政治家と言われているが、これは松平定信政権時にデッチ上げられたもの
意次は九代家重に側用人に抜擢され、十代家治時代には、老中でありながら側用人も兼ねる破格の地位が与えられた
家重・家治親子は、長い目で見れば失敗だった”享保の改革”の抜本的改革が必要だという認識を持っていた
松平定信は、日本を通商国家として開国を目指した田沼意次・意知親子の改革を潰そうとした
意知は暗殺され、意次は失脚し、一橋治済の強い指示で松平定信政権が誕生した
八代吉宗の孫定信が行った“寛政の改革”は、意次・意知改革の逆行であり幕府滅亡の原因を作ったとも言える悪政であった
電子書籍
改革と治、松平定信について勉強になった
2017/09/08 11:28
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投稿者:よしヒーロー - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズは通読している。
今回もまた新たな視点の見方を勉強できた。
特に、松平定信や寛政の改革に関して、
後世への悪影響が大きかった、という見方が最も印象に残った。
紙の本
逆説の日本史 お勧めです
2015/09/30 22:12
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投稿者:kobaです - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズは図書館で何回も借りて読んでいたのですが、井沢元彦氏の
歴史認識に共鳴して、手元に置いて、何時でも読みたいときに読めるように、購入しています、いよいよ本書で15巻、読み始めました、
テレビでの暴れん坊将軍などとは大違い、色々な前半生の話から、
目からウロコの話ばかり、面白いです。
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2012/6/6 Amazonより届く。
2016/12/12〜12/21
江戸時代中期の色々。徳川吉宗、田沼意次、松平定信ら、教科書でお馴染みの人物の認識が改まる。勿論、自分には従来型の専門家と井沢氏のどちらが正しいか、という判断を下せる程の知識は無いが、井沢氏の主張は尤も。近代史を含め、日本の歴史教育をキチンと考え直して欲しいなぁ。
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1年毎に出ていたシリーズが、2年開いたり今度は半年で出たり。発売のサイクルってどうなってるの?
さて江戸時代も中期から後期に差し掛かり、「将軍吉宗vs尾張宗春」や「田沼意次vs松平定信」、章題にはなってないけど「新井白石vs荻原重秀」を取り上げて、『「バカ殿はバカ殿である」という下らない証明のためにあまり紙数を費やしたくはない』と書きながら、この本の大半は、名君の誉れ高い吉宗や定信をこき下ろし、極悪人・田沼や遊び人・宗春に対する偏見を正すことに費やされ、これまでも述べてきた“正史のワナ”からするりと逃れる、正に“逆説”の真骨頂。
前の巻でも追及された朱子学の、特に「貴穀賎金」の考え方をまたもや槍玉に挙げて、吉宗や定信の経済政策を断じるなどは、これでもかというくらいで、作者としてはかなり力が入っている感じ。
残念ながら、読んでる方としては、前の巻辺りからそうだけど、学校での勉強でもあまり強調されなかった時代の話で、さほど興味も持てない中でもはや惰性で読み続けている感じなんだけど…。
最後の最後に光格天皇の件りになって、この時代の失政が直接原因で明治維新につながる尊王論の萌芽が育ちつつある中、「幕府政治」と「天皇主権」の鬩ぎ合いが起こり始め何だか漸く話が面白くなってきたところで次巻に続く。
次あたり、そろそろ面白くなるかしらん?
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官僚政治と吉宗の謎
徳川幕閣の展開と改革Ⅰ
第一章 六代将軍家宣の新政編
徳川幕閣の展開と改革Ⅱ
第二章 八代将軍吉宗の支配編
徳川幕閣の展開と改革Ⅲ
第三章 将軍吉宗vs尾張宗春編
徳川幕閣の展開と改革Ⅳ
第四章 田沼意次vs松平定信編
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文庫化、もう15巻かー。徳川6代から11代将軍までのあんまり馴染みのない時代。権謀術数ドロドロ渦巻いてて、案外好みじゃないか。
儒教・朱子学に染まりきった幕閣たちは、歴史の教科書では「改革」を牽引したとされる英雄扱い。一方、米本位社会からの脱却を図り通商国家を目指した田沼意次は、超極悪人扱い。
何が「終わりの始まり」になり得るのか、組織崩壊の参考としてこの時代をみるのも面白い。具体的には次の巻くらいになるのか。
倒幕・維新の萌芽はもうこの時代から始まっているのであった!
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大学生の時、バイト先にあった週刊ポストで読み始め、文庫版を買いづけて15冊目。歴史を正しく見る目を養えると思います。
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やはり、通説とは違う視点を与えてくれる。
ただ、表現に過激すぎる部分があるのと、中国、韓国に対して、感情的な主張をしているところが少し鼻につく。
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吉宗から田沼~松平定信まで。このあたりはマンガ「風雲児たち」にも詳しいけど、田沼親子は悪臣ではなく名宰相だったこと、松平定信の改革は幕末の腰抜け幕府への「はじまり」だったこと、など、「風雲児たち」と同じ解釈を取ってる。
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いやー今回も面白かった。
江戸時代はかなり知識がないので、するーっと入ってきます。
吉宗、定信の政治と田沼意次の政治、歴史教科書の知識とはかなり違う見方で面白い。
なぜ改革といわれるものと、そうでないものがあるのか、など、読みごたえあります。
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タイトル通りなのですが、綱吉を名君、吉宗をバカ殿とし、また、新井白石の経済オンチと田沼意次の名政策ぶりをアピールしています。
ふむふむ。確かに私も高校時代に、「白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき」といった狂歌を読んだ瞬間に田沼意次に対する評価が自分の中で180度変わったことを覚えています。
それ以降、「他人の評価というものはバイアスがかかっているのだから決して鵜呑みにしてはならない」ということを悟ったのだけれど、、、でもでも、吉宗に対してはもう少し高い評価でもいいんじゃないかなーと思いました(と思うのも、時代劇の刷り込みなんだろうけどさ)。
ということで、他人が貼ったレッテルに惑わされないようにしようとか、その人物が何を成し遂げたのか結果からみようとか、そういうことを考えさせられた巻でした。
幕末へ向けての萌芽があちこちに出てきていて、続きが楽しみです。
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資料の多く残る江戸時代においても、というか多く残るが故にか、事件の本質、人物の評価というものはいかようにも変わってしまう。
歴史的事実を前後の広く大きな流れの中で検証するこのシリーズは面白い。
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逆説の日本史シリーズの江戸時代編。
綱吉以降の6代目家宣から、10代目家治までをまとめている。
とにかく正しい歴史を理解するうえで重要なのは、「史書というのは勝者=時の権力者が書いてきたもの」という視点だ。
書いた人自身にとって、都合の悪いことは書かれない、または都合の良いように書き換えられている、という「推測」を歴史解釈に取り入れるべき、という井沢さんの観点に大いに共感する。
今作では、徳川吉宗およびその孫松平定信がいかに愚かな政治家であり、教科書に載る様な「名君」とは程遠いのか、そもそも性格自体も粘着質で尊敬に足らない人物だったか、はっきりと分かって非常に面白い。
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井沢氏の基本的な歴史の見方には同意できる事も多い。なので、ずっと読んでるわけだが。
ただ、本書は繰り返しが多くくどい。また、近世には入ってから、少し鼻につくのは対中国、韓国に関するくだり。井沢氏は、これを書きたいために、本シリーズを延々書いているのだろうから、仕方ないといえば仕方ないが。
また、自説を主張するあまり、筆が滑っている部分もあるような気がする。もうちょっと公平な記述もできるのではないかな。