また、いつか石田衣良さんの掌篇集に会いたい。
2009/06/28 20:56
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
『てのひらの迷路』は24の掌篇集です。著者・石田衣良さんは「気ままで、自由で、読者のことをまったく考えずにつくった作品集である。」と、語っています。また「小説の最初の一行と同じくらい短篇集の最初の一篇は重要なものだ。」とも、語っています。
最初の一篇は「ナンバーズ」。
冒頭は「77 1 58 65 14 0 61 39 2」
この数字を見たとき、フリーターだった彼は、いつか小説にしようと心に決めました。
そして最後の一篇は「さよなら さよなら さよなら」。
冒頭は「どれほど大切でも、ぼくたちの身のまわりにあるものは、いつか消えてしまう。」
最後の一篇の最後の文章を読み、涙があふれました。
川端康成の『掌の小説』を読んで、『てのひらの迷路』が誕生しました。
この本を読んで、石田衣良さんは作家になるために生まれてきたのだと、確信しました。素敵な本をありがとう。
こんな短編、読んだことがない!
2008/02/08 18:22
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず目次を見て驚いた。なんという作品数。
石田さんが月連載で2年間書き続けた、24もの作品が掲載されている。
1つの作品が、わずか7ページ足らずなのである。
だけど全てが見事に物語として完結・・・いや作品として、昇華している。
いやもうなんだか、芸術の域さえ感じてしまうのは、
決して言い過ぎではないと思う。
そして一つ一つの作品の冒頭に、石田さんの作品への思いを、
新聞のコラム風に書かれていたのも非常に興味深かった。
まず「旅する本」で打ちのめされた。
読み終わった時、不覚にも涙がぱらぱらと落ちた。
たった7ページ足らずの短編である。
なのにものの見事に、本の魅力素晴らしさ楽しさ、
さらには愛らしさまで、表現してるように思う。
本を擬人化し、まるで歴史を旅してきたような語り口が、
物語に色々な角度で大変な深みを加えている。
本が好き、という人は必読である。
「銀紙の星」も素晴らしい。
引きこもりをテーマに「人間が閉じていく様と回帰」、
のような物が表現されている。人間が段々と歪み世を疎い、
そしてまた段々と帰ってくる様が描かれるのだが、
これまたアーティスティックでさえあった。
「書棚と旅する男」もいいなぁ。あのラストの寂寥感はなんだろう。
名作映画のノスタルジックに似た感傷が、胸に残った。
じんわりと染み込んで来る一作。
「片脚」や「左手」は石田エロティシズムの真骨頂。
リアルに描かれた倒錯の世界は、素の情欲と本能を浮き彫りにして、
でもだから、自分も誰も人間なんだって、そんな事を感じられる。
そして本作品を象徴してるのが、ラストの3作じゃなかろうか。
ここまでアラカルト的にバラバラだった短編達が、すっと収斂されていく。
「短編小説のレシピ」では何と作者が短編小説を生み出すまでの、
思考錯誤をそのまま作品にしている。
どんな事からテーマを思いつき肉付けし、物語として作り上げていくのか。
そしてそれを「最期と、最期の一つ前の嘘」として、
実際にその後掲載しているのだ。これまた非常に興味深いではないか。
そして最後の、「さよなら さよなら さよなら」。
作者自ら経験したみっつの「さよなら」を書き上げて、作品を纏めた。
さらに最後の最後に、もう一つのさよなら。
まるで「九」回手を叩いた後にもう一回手を叩いて、「丸」く収めるように。
読者を最初の一遍に回帰させ、
見事に作品と石田さんの2年とを、纏めていた。
作品のカテゴリがファンタジーにSF,ホラーetc.と。
多岐に及んでいるのも、読み手を全く飽きさせない。
傑作というより珠玉。素晴らしいというより美しい。そんな作品の数々。
こんな短編、読んだことがない。きっとあなたも然りだろう。
だからぜひその、てのひらに。
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「臆面もない」の一言を捧げたいと思う、私小説風超短編集。これでもかと言いたげに、軽々と多才ぶりをひけらかしやがる石田に、クソーこんなんでやられへんぞと言いつつ、きっちりとしてやられてしまうけなげな私。作家って楽しいんやな、いい仕事やなって思っちゃうよ。もちろんどんな仕事もそれだけじゃないですけどね(笑)これ読んで、ホンマに作者は楽天家なんだなあと思った。この軽さ洒脱さが、マコトのあの性格につながるんだよな。やっぱり石田は天才だと思います。
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ショート・ショート。
実は初めての石田衣良。
掌編集というのに魅かれて読んだけど、やっぱりこの形好き。
話もホラーっぽいのからメルヘンちっくなものまで各種。
長編も読んでみようかな・・・
(1/12)
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ちょっと不思議な感じの短編集。いろんなジャンルが詰まってます。私小説だったり、ファンタジックだったり、ホラー(著者談。「ある意味で」ホラーって程度だけど)だったり・・・。ジャンルが様々なのですごく好きな話もあんまりかなって話もあります。でも全体的にはやっぱり面白い。タクシー運転手のセリフだけの話とか、小説ができるまでの過程とか、変わった形式の話もあって読み応えのある本。
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いい意味で肩の力が抜けた短編集です。
肩肘張らずに気軽に読めるので、読みやすかったです。
じんわりしたり。ぞくっとしたり。
嬉しくなったり。切なくなったり。
いろいろな感情をそのまま切り取ったような作品でした。
各短編の前に前書きみたいなのがあるのが新鮮でした。
ただ、じっくり本を読みたい時はこの本は選ばないほうがいいかも。
電車の中とかちょっと空いた時間にさらっと読むのにいいかな。
実話をもとにした話が多いので、すんなり入り込めました。
石田衣良の作品は長編もいいですけど、短編のほうが好みですね。
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ショートショート。読みやすい。中でも”ひとりぼっち”の世界がいい。「あなたはわたしと暮らしていても、いつもひとりだった」という彼女のセリフ。嫌いじゃないけど別れちゃう二人。一緒にいても一人きりみたいな、孤独な気持ちになっちゃう彼女。なんとなぁくわかる気がする。やっぱり人って誰かに頼られたいって思うんだろうな。つながってるっていう実感がほしいのかな。
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石田さんはさすがだな。こんなにうまくまとまってしかも密度高い、まるで職人かコーヒー屋の店主みたい。
何作目かの振られる男(作者がモデル)の話を読んで、私はこのように振られるに違いないと思った。まるで自分のことのようだ。
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雑誌のコラムとかを読んでずっと気になっていた石田衣良の小説。スラスラと読めるし1冊でたくさんの話が読めるのはお得感があるから短編小説って大好きなんです。
特にパーツデートをする話が印象的だった。私ならどこを送ってもらうだろうなー。
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ショートショート集。小さな24編の物語が収録されています。私小説の味わいのあるもの、ファンタジーチックなもの、ちょっとホラーっぽいもの…、とありとあらゆるおいしさの詰まった1冊だなあという印象です。それぞれの物語に、石田氏の解説がついてるのもおもしろい。個人的に好きなのは『旅する本』。素敵なお話です。サクッと気軽に読めちゃうのがいいところなんじゃないかなと思います。
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24篇のショートショートからなる本で、フィクションからエッセイに近いものまで
いろいろな作品が楽しめます。
個人的にお勧めします。特に、本が好きで、ほんのちょっと自分でも創作に携わりたいと思っているような人には。
著者が楽しみながら書いた、という雰囲気が漂っています。ところどころにある、各話の前説のようなものも読んでいて楽しい。
石田さんが書くと、恋愛がちょっと素敵なものに見えてきて、喜びたいような拗ねたいような気持ちになるのが不思議です。
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ショートショート。
24篇もあるので、好き嫌いは当然あるにしろ、全体的には良かった。
他の短編集でもそうだけど、ノンフィクションベースが好き。
無職の空、I氏の生活と意見、一人ぼっちの世界(若干泣きそうになってしまいました)。
でも、タクシー、みたいなふわっとした、盛り上がりのないまったりとした作品も好き。
この本では、各作品の前に講評を書いていて、それがまた読むポイントをすっきりさせたり、共感を呼んだりして、良い発想だなと思った。
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24のショートストーリーからなる短編集。
最近は、石田さんの本や短編集ばかり読んでる気もする。。。
<24のタイトル>
『ナンバーズ』『旅する本』『完璧な砂時計』『無職の空』『銀紙の星』
『ひとりぼっちの世界』『ウエイトレスの天才』『0.03?』『本棚と旅する男』『タクシー』『終わりのない散歩』『片脚』『左手』
『レイン、レイン、レイン』『ジェラシー』『オリンピックの人』『LOST IN 渋谷』『地の精』『イン・ザ・カラオケボックス』
『I氏の生活と意見』『コンプレックス』『短編小説のレシピ』
『最期と、最期のひとつまえの嘘』『さよなら さよなら さよなら』
ふと「無職の空」を見上げてみたいと思った自分は、
働きすぎで疲れてるのかもしれない。。。(笑
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著者の作品は初めて読んだのだけど、これはショートショートだった。
作家って色んなこと考えてるんやね。
この人って自分の事が好きみたい。
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短編集。
短編の内容そのものよりも、それを書いた著者の想いいれやコメント等が面白かった。
個人的には、長編の方が好きかな。