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2011/04/18- 食べる、寝るの感覚さえも喪失した美大生の生活を文章化した話題作。生まれて間もない赤ちゃんがどの様に「生きる力」を獲得していくかが如実に伝わってくる。2011/04/30
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交通事故で、それまでの記憶をすべて失った人物の体験記。自分の名前も住所も親の顔も何もかもを忘れた人物が、新しく生きなおす様子を抑えた筆致で描いている。医学的な内容はなく、コラム的に母親が書いた文章が挿入されているだけで、基本的に著者が見たとおり・感じたままの世界が書かれている。
自分の身に起きた不幸を怒り狂うわけでもなく、絶望に打ちひしがれるわけでもなく、ここに描かれている主人公=著者は実に淡々と、牧歌的ともいえる静かな態度で新しい世界と折り合いを付けていこうとしている。本当は言葉にできないほどつらい思いをしたのだろうと想像するが、信じられないほどの受容力で現実を受け止めている。
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記憶喪失ってどんな状態なんだろう、と単なる興味だけで読み始めたが、ぐいぐい引き込まれた。見えているものがわからない、食べるということがわからない、母親さえわからないという状態からひとつひとつ学び、成長していく筆者。突然過去の記憶の一部が精彩によみがえったり、また後戻りしたり。
間に差し込まれている母親の手記によって、当時の状況がより明らかになる。
支えた家族、周囲の人々の反応がリアル。筆者は同じ状況の人たちより幸運だったのかもしれないが、あえて大学に戻し、ひとりで通学させるという決断はすごいと思った。
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記憶喪失なんてドラマや小説の中の出来事かと思っていた。
実際にそんな事になったらどういう気持ちになるんだろう。ぼんやりと想像するだけだった。
この本は実際の記憶を失った「ぼく」と、それに寄り添うようなお母様の手記が並行して書かれている。
お母様の手記に比べて、一見すると幼稚である作者の表現力が、それ故の輝きと美しさでこちらをハッとさせる。
決して「めでたしめでたし」で〆られるような日々ではなかったろうし、語られない深い葛藤や苦しみの数は多いはずだ。例え今作者が笑い話として語ろうとも。
消えてしまった日々を取り戻そうとする作者の伸びた指先が掴んだのは新しい日々でしかない。
読後感が切ない。
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ふつう我々が「記憶」の構成要素として分類しているものは、時間軸的、物語的な「エピソード記憶」と、固有名詞などの「データ記憶」であろうと思う。筆者は芸大生時代にバイクで交通事故に遭い、記憶を喪失する。しかしそれは前述のエピソード、データはもちろんのこと、睡眠や食事のやりかたからお金の使い方、果ては人間とは何なのかという「概念」までいっさい喪失してしまう。これはおおかたその個人にとって社会そのものを失ってしまうことに他ならない。本書はその筆者がどのようにして世界を再認識し、構成していったかを手記によって知ることができる。医学的な見地からの解説はない。ときとして言葉足らず、説明不足な部分もある。しかしそれがかえってあるがままに、一青年の感覚をビビッドに描き出している。
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ある日突然、これまでの記憶がなくなる。
自分にとっても、周りの人にとっても、衝撃だし、恐怖だと思う。
自分が誰なのか、ここがどこなのか、というのは一般的によく知られている「記憶喪失症状」だと思うんだけど、
ご飯の食べ方、味覚、トイレの方法など、生きていく上で生理的なところまで記憶から抜け落ちた著者が、
新しい人生として、自分の生活をリスタートしていく姿が、人間って強いものだな、と思わされた。
そして、まわりに愛されて生きてきた著者だからこそ、記憶喪失後にも周囲に人が集まっているのだろうかと。
自分が経験し得ないという意味で、その感覚は不思議であり、人の強さを感じられる一冊だった。
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19歳の時に記憶喪失になった青年が再生していく物語。記憶を取り戻すのではなく、新たな記憶を積み重ねることで人生を獲得してゆく。
人間は思い出とともに行きてゆくものなのだとつくづく思う。著者の「楽しかったことや、辛かったこと。笑ったことや、泣いたこと。それらすべてを含めて、新しい過去が愛おしい。」という言葉に込められている。
人生とは思い出の集積なんだよね。
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記憶喪失でここまで記憶をなくすものかとびっくりした。
産まれたばかりの赤ちゃんが言葉をしゃべれるのならきっとこういう世界感なんだろぅなぁ〜
母親の無償の愛のすばらしさ
父親の海より広い心
こどもにぜひ読んでほしい一冊です。
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すべてをリセットしてやり直したい・・と思うことがある。でもそれはとても傲慢な考えだったと、この本は教えてくれた。
人は毎日の記憶の積み重ねで、生きていけるのだと。
おかさんの語りも、見守る家族の思いを切実に伝えてくれた。
人は何を支えに生きているのか、何のためにいきているのか、改めて考えた。
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記憶喪失になった人が見る世界は、先入観がない無垢で詩的な世界だった!という話。「そういえば子供の時こんな発想したわー」ってなりました。(特にあとがきの俵万智のトコ)
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普段なにげなくしていることがいかに大変か。いろいろなことの積み重ねか。そういったことを再認させられます。
坪倉さんはたくましいと思った。本人だけでなく家族のたくましさというかアグレッシブさもすばらしいと思った。
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物事の概念というものが壊れてしまったら・・・。
すべてが未知のものになってしまう。
事故で記憶をなくした著者が記す記録。
「ここはどこ?わたしはだれ?」というレベルではない。
「この口に広がる感じは好きだ」「これは甘いっていうのか」と味の表現まで忘れている。
一人生活していけるようになるまでは想像もつかない大変さがもっとたくさんあったのでしょう。それでも親は見守っていてくれた。親の愛とは奇跡も容易に起こしてしまうのですね。
私も親からこんなにも愛情をそそがれていたのだと気付かされました。
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無垢な状態は、はかなくも力強いんだって知った。この人だからかもしれないけど、丸いのに尖ってた。
p31〝…あまいものを、のみこむ。ああ、なんておいしんだ。〟
p56〝記憶を失くすということは、単に過去を忘れて今を生きるということではないのです。過去を失った人間は、こんなにもろいものかと、優介を見てつくづくと思いました。〟
p83〝…この足をつつみ込むような感じのよさは、何なのだ。ぞうりみたいにぬげそうになることもない。これだとすごく速く走れる。すごいじゃないか、スニーカー。〟
p95〝でも結局、生きていくとはそういうことだと割り切ったのです辛くても自立させなければならない、記憶がなくても馬鹿にされても、それを受け入れてくれる人が、わずかでもいればいいではないか、と思いました。〟
p165〝…もうあとには戻れない。すべて、自分で決めたこと。〟
p178〝次にしゃもじを取り出して、いよいよ青いごはんだ。炊飯器の前に立ち、ゆっくりとふたを開いた。そしたら、入道雲みたいなゆげが「ぶわっ」と出てきた。その奥に青いごはんが見える。大きな入道雲の間から見える海のようだ。しゃもじですくってみると、地球にスコップを入れるような感じがしてどきどきした。〟
p214〝…これはぼくのためのファイルだ。それまで読んだどのファイルにもなかった手応えを感じながら、近くの電話まで走った。〟
p217〝…しびれた足で飛び跳ねるほど、嬉しかった。〟
p223〝…「練習のための練習はいらない」と大きな声で言った。「失敗することばかり気にせずに、どのようにしたら人に伝わる着物になるかを考えろ」と続けた。〟
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ある意味幸せかもしれない。
小さな時に身につけたものを再取得するわけで、ロジカルに取得できるのは面白いかも。
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”カラフル”を読んだ後だったので、イメージが重なったりしました。
後半の染色の話も興味深かったです。
普通の人が見えない世界を感じてほしいな、とか、
改めて感じてほしいな、と思ったのですが、
まさどんには、ちょっと単調だったようです。