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紙の本
これぞ王道、これぞ究極
2001/05/29 05:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:春都 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近では西澤保彦などの登場により、さほど珍しくなくなった「特殊な舞台・環境設定」ものと言えようが、ただミステリのパズル的要素で遊ぶだけで終わらないのが、この作品のすごいところ。
「死と生」という最も大きなテーマに真っ向から挑み、ミステリというある意味「児戯」が許された世界でしか問うことのできない「比喩でなく、言葉通りの死者から見た死生観」をも含めて考察している。葬儀屋(関係者)だけに、人それぞれ死に対する自分なりの想いが多々あるのだ。
しかし、だからといってミステリの形態を借りた「死学書」だと思ったら大間違いで、この作品はまごうかたなき極上の「本格ミステリ」なのである。
物語中にくりかえし語られる様々な死生観。これらが考察のための考察、衒学趣味で終わることなく真相に密接に絡んでくる。
本来のミステリであれば生者の思考形態だけ類推すればいいのだが、「生ける屍」が関わってくる殺人では、死者がどう感じどう行動するのかまで読まなければいけない。つまり従来の思考では解を導きだすことのできない動機=ホワイダニットなのである。
また、屍とはいえ生きているわけで、見た目には他の生者と変わらない。つまりここにもまたひとつ「誰が死んでいるのか」という馬鹿げた謎が読者の前に現れてくる。とんでもないフーダニットを用意したものだ。
作品をつらぬく一番の謎は「死者の甦る世界で殺人を犯す意味はあるのか?」であろう。人はなぜ殺人をするのか、それは被害者の息の根を止めることで安心感や優越感などを得るためであり、その前提(死)が崩れたときには全く意味をなさない。逆に自らに危険さえ及ぶだろう。
しかし山口雅也はこの大いなるパラドックス(矛盾)に着地点を与え(しかも2つの方向から)、論理によって見事なまでに腑に落ちる解決を用意するのである。もちろん伏線は充分すぎるほど張られている。
最後に僕も、文庫解説での法月倫太郎氏にならい、この作品に以下の賛辞を送りたい。
「これぞミステリの王道だ!」
紙の本
山口雅也の最高傑作!!
2001/03/04 15:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:太田コロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
極上の推理小説は二者に分類されると思う。前者は見事な推理トリックを見せつけ読者を驚嘆させるもの。後者は小説として見事で、推理トリックもすばらしいがそれ以上に読ませ、読者を感動させるものである。推理トリックが出尽くしてしまった感のある、今日では古典的名作に及ぶようなトリックで読者を魅了させるようなの作品は皆無になりつつある。この作品はいうまでもなく後者に属す名品である。
この書では、死者の探偵、死者の被害者、死者の容疑者が登場し滑稽とも思えるドタバタ劇が演じられる。死者がよみがえるという事実により殺人という行為が意味をなさなくなるという構図は、ミステリーそのものに問題を提起し、推理という枠組みをひっくり返すことに成功している。
そして、随所にちりばめられた「死」への言及と考察が死というものは何であるのか改めて読者に問うという形式を持っている。再読に値する観点から見てば、この作品は素晴らしく、推理だけとってみても非常に面白い作品である。
紙の本
登場人物がきらい
2014/07/10 13:15
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投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
あくまでも個人的感想です。死を生業とする葬儀屋で起こる殺人事件と、生ける屍の少年探偵。発想はユニークで、死と生を考えさせられる内容は面白いのですが、ミステリー小説としてはドタバタ調で、のめり込めませんでした。ゾンビ探偵ありきで設定されたパンク少年、相棒になる少女にもキュートさはなく、登場人物に面白み、良さがありません。このミステリーが本当にすごいの??あくまでも個人的感想です・・・。本当は星2つ
紙の本
謎解きだけでは小説ではない!
2001/08/26 11:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すずき - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在のミステリーブームで、本格を初めとする作品が量産されていますが、読んだ感想がすごいトリックだったというのでは、小説としてお粗末だ。しかし、本書はミステリーの前に小説であると断言できる。
誰もがさける事のできない死のテーマが作品を貫いていて不気味。死に悩む人たちの思惑がそれぞれ入り乱れて事件は複雑化していく。
私は子供の時からいつも、死が恐かった。今でも私もいつか死ぬ事があるんだと実感する時、不安で不安で眠れなくなる。人やペットが死ぬのを見るもの恐い。
何故たかが心臓が止まっただけで人は物を考えられなくなってしまうのだろう。本書を読んでも答は得られなかったが、何かが分かったような気になった。よけいに考える事が増えただけかもしれないけれど、落ち込んだ時など本棚から取り出しては何度も読んでいると、何となく心が落ち着く気がする。