下巻では新たな生の発見へとつながっていく傑作です!
2016/08/27 11:54
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻では、主人公カワバタが胃がんであることが明かされます。そして、手術の直後から数年前に死んだ息子が自分をどこかに導こうとするささやきが聞こえ出します。本書では、格差社会、家庭内暴力、売春など、現代社会ではびこる問題が出され、思索はどこまでも広がり、深まり、それが死の準備などではなく、新たな生への発見へとつながっていきます。ぜひ、続きは本書をお読みください。
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上下巻とも一気読み。
今まで読んできた白石作品に比べると、より哲学的でより政治的でより深い内容だった。
書籍からの引用部分も多く、正直読むのに時間がかかり、内容もかなり難しかった。
でも、複雑な人間関係の絡まり合いは、さすが!とうなりたくなった。
主人公カワバタという人間について、
神は・・人生とは・・この世の中とは・・・
という抽象的なものに考えを馳せる内容もがっつり書かれているが、
死んだユキヒコの声が聞こえてくるとか、シンギョウジ先生とのカウンセリングで気持ちが軽くなったりとか、
きわめて人間くさい部分が垣間見えるコントラストが面白い。
ショウダがそこで出てくるか!
北海道はリコのとこじゃないんか!
結局ユリエか!
という、ラストに次々と仰天な展開が待っていてびっくり。
登場人物の名前がすべてカタカナ表記なのも、難しくみせていたのかも。
カタカナというだけで、名前が覚えにくかった。
途中、「新村光治」「さよならUSA」の部分のみ、すべて漢字表記になっていた。「美緒」もここで最初で最後の漢字表記。
カタカナなだけで、すごく冷たく客観的な感じに思える。
カワバタが、至極沈着冷静に物事を判断する人間である、ということが感じられた。
カワバタとミオの関係がつかみづらかった。
ユキヒコくんの件、とてもじゃないがミオの行動が理解できない。
私がタイトルをつけるならば「この世の必然」だろうか。
白石作品では、私としてはまだまだ「私という運命について」が一番だなー。
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過去に縛られることなく、時間に基づいて計画するのではなく、瞬間瞬間流れる今という現実を全力で生き抜け。
これがメインメッセージだと感じた。
癌になって悟った自己意識と他者。雑誌や芸能界、政界、息子を失った男・女の悲しみ。価値観。不倫、DV、派遣労働とスーパーリッチの格差。先進国と途上国の格差、新党を作るという政治家の構想などなど。
アメリカにとっては苦い小説かもしれない。
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たくさんの引用部分があって、ない頭を大いに使いました。
大いに共感してみたり、いや、私は違うと思うなどと一々相槌打ちながら読みました。
にしても、理屈っぽいと言うか面倒くさい人だ。
それだけまっすぐな人なんでしょうけど。
私は疲れてしまうわ、きっと一緒にいたら。
もっと楽に生きられたらいいのに・・・
どうもショウダとのシーンは苦手で、飛ばして読みたいけどそうもいかず。
映画とかなら絶対指の間からチラ見しますね。
怖くて直視できないもの。
残酷すぎるわ~
北海道へ行ってやっと普通に人間らしく生きられるのかな。
ラストのユキヒコの声が聴こえた・・やっとホッとしました。
主人公に心から良かったねぇって言いたくなりました。
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下巻、一気に読み終わりました。現代の国内外の社会情勢や政治についてデータも引きながら書いていて、個人的には「小説なの?」と感じながらも興味深く読みました。(このあたりは、違和感がある人もいると思います…)
格差や貧困などさまざまな問題を抱える社会の中で、個人がどう生きていくのか、その姿を作者が探し出そうとしているのが伝わってきます。「この胸に深々と突き刺さる矢」がいったい何なのか、それは物語の終盤で明らかになりますが、それを「抜く」ことが人々の生を豊かにすると作者は主張しているようです。
この結末については賛否両論あるでしょう。(私も??と感じる部分はありました。)ただ、私たちの生きている社会の矛盾に目を向け、その社会にどのように関わり、どのように生きていけばよいか、そういったことを考えさせる面白い小説だったと思います。
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読むのに時間がかかった。
フィロソフィだな。
ソフィーの世界的な。
しかし、心に刺さるものがある。
色々考えさせられる。
そのうちもう一度読む。
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いろんなことが書きたかったのかなあ、という雑多な感じはあるものの、無理なく読ませるテクニックがすごいと思う。長いし、難しいこともたくさん書いてあるけど、特に経済にも政治にも強い興味のない私に、さして無理せず読めるのは、本当に驚き。結末に至るまで、満足して読めた。楽しいとか面白いとかではないけど、確かに興味深く、充実した読書時間だった。ま、読了に長く時間がかかったけど。12月30日読了。風邪が治らない。
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自分の頭で考えるということはどういうことか?
自分の言葉で語るということはどういうことか?
正義とは?愛とは?生きる意味とか?
過去とか未来に翻弄されず
必然と共に誇りを持って
今を生きる
そういやそういう映画を
さっきまで会ってたやつらと
中学生の頃に観に行ったっけ
この時期にこの本に出会えて良かったと思わせてくれる本
2011年中に読み終えたことにも満足
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上巻は時間を掛けて、下巻は一気に読んだ。若くして癌を患って再発の可能性がある中で生きる雑誌編集長の主人公。彼の「生きる」という行為に対する根源的な問いかけに心を揺さぶられる。必然の今を生きることこそが「矢を抜く」ことになるのか。まだ自分の中で消化しきれていない。再読したい。
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白石さんの作品の中で、ここまではっきりと作者の強い主張を感じた作品は他に思い当たらない。淡々とだけど、とてもとても力強い主張。
白石一文さんは世の中の「ん?」と思うことに対してちゃんと答えを出そうとしている作家だ、とあらためて感じた。
小学校や中学校の授業で、先生の教科書どおりの説明では何となく納得いかなくて、ずっと心の中に残っていた疑問。それが、大学生や社会人になったある日、突然目の前にポッと自分の求めていた答えが現れた時のような感覚。
言葉にすれば「あー、そうだったのか」なんだけど、そんな言葉の響き以上に自分の心の中がスッキリする感覚。
テレビやインターネットをながめてるだけではなかなか感じることができなかった、最近の自分が失いかけていた感覚を思い出させてくれた作品。
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引用が多い小説。話のリズムを考えると、この引用の多さはどうかと思うけど、引用が導き出している話全体の雰囲気嫌いでない。
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主人公の頭の回転のはやさにびっくりした。
あのくらい俺も冷静に裏を読みながら生きてけたらなぁ。
初めて知ったけど、登場人物がカタカナだらけやと、誰が誰かわからんくなる。
部下はどいつがどいつかわからんくなりかけてた。
なんとかついていけたと思ってるけど。
「神の思惟」とか宇宙から地球を見た人が語るとこは、俺も思ったことやから、宇宙に行かずとも気付いた俺はやっぱすげえなあと思った。
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「いまの日本で一番つらいのはビンボーなんかじゃない。希望がないことでも時代が不透明なことでもない。みんな自分の人生の先がすっかり見えてしまってることだよ。」
人類はみな平等なんかじゃない、ということを、ずっと主張している小説だった。
内容が濃く、下巻にも詰め込めるだけのものを詰め込んでいた割には、あっけらかんとした終わり方だった。
政治思想の強い小説だが、読みやすさに著者の力量を感じる。
最後までブレなかったし、おもしろかった。
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上巻を読めば、下巻を読まずにはいられない。そんな本だった。
これだけの内容を、ここまでわかりやすく書くということは結構すごいことなんじゃないかと思う。
終わり方は、白石さんらしいと思った。
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多くの文献が多数・長く引用され、主人公の思索に使うことで、主人公を描く。その思索が多少強引で矛盾もある点が、生きている人を感じさせ、主人公に引き込まれる。こんな本は初めて。
主人公の内省に多くが割かれながら、平行して政治家のスキャンダルを中心として展開されるストーリーも最後に新たな希望となって終結するのは心地よい。
巻末に主要引用文献として以下のものが記載されている。
「マザー・テレサ 愛を語る」ジョルジュ・ゴルレ、ジャン・バルビエ編著
「最高の議会人 グラッドストン」尾鍋輝彦著
「政府からの自由」ミルトン・フリードマン著
「ルポ 貧困大国アメリカ」堤未果著
「NHKスペシャル 映像の世紀 第9集」
「怒らないこと」アルボムッレ・スマナサーラ著
「貧困来襲」湯浅誠著
「宇宙からの帰還」立花隆著
「政権交代 この国を変える」岡田克也著
「累犯障害者 獄中の不条理」山本譲司著
「語る人」有国智光 朝日新聞2008年10月3日夕刊
「格差はつくられた」ポール・クルーグマン著
「強欲資本主義 ウォール街の自爆」神谷秀樹著