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『水滸伝』にはじまり延々と続いてきたこの物語の核心、北方謙三が描きたかったものが“理想的国家とは何か”にあったらしいとようやく見えてきた感じがする。
2016/12/06 23:44
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
はからずも「自由市場」という交易国家的存在を核に基盤を広げつつある梁山泊は、帝を頂点とする支配構造の旧態国家からはその存亡を危うくする存在となっていく。『水滸伝』にはじまり延々と続いてきたこの物語の核心、北方謙三が描きたかったものが“理想的国家とは何か”にあったらしいとようやく見えてきた感じがする。『水滸伝』では国家への抵抗が主眼点であったが、『楊令伝』では“宋”という国家は中盤で滅亡してしまう。ここにきて、“楊令”がずっと悩んできたのが、宋という国家を倒したのちの“国家”のあり方であったことに気付く。随分と遅かったなあ。涙。
大きな流れの中でいずれも各々の思惑を秘めつつも、張俊・岳飛が南宋に取り込まれたことによって、南宋は明らかに国家としての実力をつける。一方、罠に嵌り「斉」の将軍として取り込まれたかにみえた梁山泊の「李英」は、復讐のため「斉」の帝と扈成を殺害しようとするが失敗して自害してしまう。これによって、扈成は失脚し、金の傀儡政権としての「斉」の基盤は極めて不安定なものとなってしまう。少数民族である女真族の国である「金」は内政だけでも大変であり、中原の傀儡政権「斉」を統治する力もなく、結局、南宋がどこまで旧宋の領土を回復するかが注目される状況である。こうなると当然、「自由市場」という交易国家的存在の核である梁山泊の存在は邪魔者であり、必然的に梁山泊は孤立を深めていく。一方、急速に勢力を拡大した”金”は帝の交代や内部抗争などで不安定なまま微妙な動きを続けているが、亡くなった先帝は、梁山泊=「自由市場」の危険性を見抜き、金禁軍総帥・兀朮(ウジュ)に「3年以内に楊令を殺せ」という”勅命”を遺言として残す。¬
さて、基盤を確立して更には北への拡大を狙う南宋は、梁山泊の南の拠点である洞庭山=太湖の水軍への攻撃(本当の狙いは洞庭山に集積されている交易品)を開始するが失敗。かえって南宋の意図を見抜いた梁山泊側は、洞庭山=太湖に集積されていた交易品を一気に流通に乗せ、更に商人たちも積極的にそれに加わることで「自由市場」が南宋一帯に急速に拡大していく。無視しえなくなった南宋は全軍で梁山泊攻めに動き、ついに梁山泊との全面対決となる。勝敗は、予想通り張俊軍から崩れ始めて梁山泊の勝利に終わるが、希望の星である岳飛も相変わらず敗退する。この岳飛は非凡な才能を秘めた優れた軍人という設定になっているのだが、これまでのところかの名将・蕭珪材を一騎打ちで倒した以外は何しろ出ると負けで良いところなしなのだが、敗北を重ねる中で人間的な成長を遂げているという設定であり、この後に続く『岳飛伝』の主役に躍り出る準備段階である。
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いよいよ物語も佳境って感じで、各国がこぞって大きく動き出した。その趨勢ももちろん気になるけど、それよりもやっぱり目がいってしまうのは、漢たちの死に様。今回もたくさん死んでしまったけど、インパクトのあるラストシーンが多かった印象。リリツ、タイソー、カクセーの最期はインパクト大だったし、特にリリツの行為には、鳥肌立っちゃいました。
あと一巻。どんな大団円が待ち構えているんでしょうか。
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経済を核とした国家を建設しようとする梁山泊と旧来の体制を指向する国家の南宋との戦い。
その中で水滸伝以来の人々が次々と退場していく。
楊令の目指す国家観が経済成功とともに、梁山泊に人々や南宋、金の人々にあらためて国家とは何かを考えさせる。
楊令伝はどんな完結になるのか?超近代的な国家はできるのか?
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また泣いてしまった。
今回は常に戦場の真ん中にいた男の話です。
いよいよ、楊令の狙いが理解されはじめます。クライマックスに向けて、いったいどうなるんだろう?
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楊令伝も終盤に差し掛かり、生き残った過去の英傑たちも徐々に物語から退場し始め、昔からのファンとしては寂しい限りですが、国のあり方については、また盛り上がり始め、目が離せなくなってきました^^
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岳飛伝が刊行されて、楊令伝が残り1巻になり、ここで幻王を討てという言葉が出てくるのは、寂しい気もする
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国の形が姿をあらわすがその行く末は誰もわかりようがない。それは止められない奔流となって英傑達を翻弄する。しかしその中で水滸伝からの漢達が儚く死にゆく様はやはり寂しくもあります。次巻ラストにそれぞれの生き様をしっかり見届けます。
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相変わらず読みにくい。特に金国のキャラは何がなんだか。そもそもキャラが多すぎるのか、出てくるキャラの思考やセリフ回しがワンパターンなので、ほとんどのキャラに感情移入できない。斜め読みも致し方なし。
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絆は人間同士だけのものではない、人間と馬だって同じなんだ。
無敵のように思えていた史進に、老いが見え始めた頃だっただけに、
乱雲が咄嗟にとった行動には思わず涙しました。
そして李英のくだりも、これぞ漢だ!と思いました。
梁山泊から裏切者が出るはずがない。だって志があるもの。
それにしても、誰も彼もが死に向かっている気がするのは何故?
昔からの同士が次々と退場していくのは悲しすぎる。。。
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前の巻で、若さ故に裏切り者が出た、と書いた。申し訳ない。私の浅はかさだった。志で結びついた若者たちは、そう簡単に全てを裏切らない。李英は梁山泊の一員として立派な最期を遂げる。
最終巻近くになって、やっぱり、まさか、という感じで英雄たちが死んで行く。新しい時代を理解出来なかった古いタイプの革命家の戴宗は成る程という形で死んでいった。いい死に方だったと思う。
楊令は言う。
「なんのために戦をするか。それはもう、梁山泊を守るため、ということではなくなっている。新しく、現れてくるものを守る。新しいものを、ただの夢で終わらせない。そのために戦をする。俺は、そう思っている。新しく現れてくるものが、どんな姿をしているのか、俺はまだ言葉で言うだけだ。実際に現れてきたら、それは俺たちを押し潰すようなものなのかもしれん。しかし、俺はそれを見たい。梁山湖の湖寨に拠って、宋とのいつ終るともしれぬ闘いを始め、死んでいった梁山泊の先人たちは、みんなそこに光を見ていたのではないか。おぼろだが、「替天行道」の導く光を。志の導く光を」
全員が楊令を見つめている。楊令は低く「替天行道」を暗誦した。途中から眼を閉じた。湖寨にあった聚義庁の、燃える炎が見えた。背後の岩山で、ひとりで待っていた宋江の、静かな眼が見えた。心の中の、黒々としたものに光を当てよ、と言った宋江の声が聞こえた。(282p)
楊令の国は共和制になっただけではなかった。梁山泊を越えて燎原の火の様に「自由市場」が広がる。膨大な物資を動かして、その利鞘だけで運営する国。それは現代でさえもまだ実現していない、究極の資本主義社会である。楊令初め、この時代の登場人物たちがその正体を見極め、コントロール出来るはずがなかった。金や宋はこれを畏れ、梁山泊は守ろうとする。そうやって、最後の闘いの機は熟していこうとしていた。
国とは何か。革命とは何か。
大きな問が立ち上がろうとしていた。ここまで来てまだ混沌としている。果たしてどの様に決着が着くのか。あと一巻しか無いのである。
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自由市場及び物流で国を支配するっていうのがピンと来ないな…。ダラダラ続いてしまって物語の方向性がぼやけているような…。でも先が気になってあっさり読み終わる。
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「替天行道」の旗の下、宋という大国に立ち向かい、ついにはそれを滅ぼした梁山泊。新たな頭領となった楊令が目指したものは何だったのか...。作者はそれを「経済」が「国」を超える、というまさに現代の資本主義であり、グローバリズムであるものの原型だと設定した。その試みは成功したのだろうか?ともあれいよいよ梁山泊の最後の戦いが始まった。
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残すところ、あと1冊。
なのにどうやってまとめるんだろ?ここまでスケールの大きい話だともう、まとめに入っていなきゃ間に合わないのでは・・・
と勝手に心配してしまうくらい。
李媛・李英に関しては
ああ、やっぱり。な結末なので言うことはないけれど
堂猛・郭盛は悲しい。好きだっただけに。
乱雲なんて、もう。
史進の肩、抱いてやりたいくらいだ。頼まれたら胸も貸す。
それにしても、どうして
秦容が好きになれないのだろう・・・秦明将軍は大好きだったのに。
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「上等だ。梁山泊軍は、伊達じゃねえんだ。どこの軍とやり合ったって、勝てる。そして天下を取れる」
「意味があるのかなあ、それが」
「なんだと?」
「いや、私の任務は、病人を診たり、怪我を治したりすることですから。いつも、相手はひとりだけです。天下を見渡している余裕など、ありませんよ」
「志が、あるだろう」
「自分の場所で、懸命に闘う。志を考えれば、私がやるべきことは、それです」
「安道全や薛永はな、最後まで梁山湖の湖寨に留まった。命を懸けて、志を貫いたのよ」
「医師や薬師の場合、生き延びた方が、その後の役に立つ、と思います」
「おまえ」
「無論、安道全殿も薛永殿も、立派に志を貫かれたと思いますが」
「ぶちのめしてやろうか、小僧」
二十歩の距離で、急所に当てれば、確実に相手を殺すことができる。
修練は、積んできた。こういう飛刀を李英が遣うことを、誰も知らない。
李英は、板から小刀を抜いた。板はもう、穴だらけである。時には、突き通ってしまうこともあるのだ。三日で、一枚は使う。使いものにならなくなったら、焚火に放りこめばいい。
頭を下げた。上げながら、三本打った。狙った通りのところだ。また抜き、距離を取り、頭を下げた。
人が、故郷を思ったり、血を意識したりする年齢が、あるのだろうか、と楊令は思った。自分の故郷をどこと言えばいいのか、楊令にはよくわからない。
「難しいことを吐いて、なんになる。冗談は冗談でいいじゃねえか、冗談に踊らされているのも、また人間さ」
「なんのための、狼藉か訊こう」
「誇りのため。『替天行道』の誇りのため。俺は、誇りを傷つけられた。それは、雪がねばならん。身をもって雪ぐのが、男というものだ」
「笑止な。おまえは、串刺しになって死ぬのだぞ」
「もとより、生きようとは思っておらん。ただ、おまえに合う機会を、待っていただけだ」
「無駄であったな」
「身は、鉄の板で守れよう。鉄の板では守れぬものを、おまえはなにも持っていない」
「串刺しで、すぐ死なせるのは惜しい。命乞いをするほど、苦しみと恥辱を与えてやろうか」
「おまえのような男に、俺の志が穢せると思うのか」
そうだ、志に生きたのだ。不器用で、失敗ばかりした。小心で、周囲の目をいつも気にしていた。それでも、志に生きたのだ。それを見失ったことは、一度もない。
短かった。もっと闘いたい、という思いはある。しかし死は、古い友が訪ねてでも来るように、ある日そばに立っているのだ。
「見ておけ。これが、梁山泊の漢の、死にざまだ」
「俺は、雷光のようだ、としばしば思うことがある」
「へえ。俺は、自分が千里風だとは、まるで思いませんが」
「同志みんなと駆けているはずが、なぜか遥か先行し、一騎だけで駆けている」
四刻の疾駆のあと、のんびり歩くのが、雷光は気持よさそうだった。馬首を並べた秦容が、楊令の顔を見ている。
「たまには、並んで駆けてくれる者がいる。それが、今日わかった」
「はあ」
それが、見定められたわけで��なかった。ただ、感じた。感じることが、戦場では武器になる。鈍れば、斬れなくなった剣を振るっているようなものだ。
「よく、頭領がつとまったもんだな、楊令殿。あの若さで担ぎあげられて」
「ひとりきりだった。いまふり返ると、そう思う。同志がともにいる。いつもそう思おうとしてきたが」
「同志はいたさ。死んでいった、梁山泊の同志がな」
「そうだな」
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金国の先代王の勅命にグッとくるものがあった。兄はいつも国のことを思い、幻王と同盟関係にあったことを語った上での、幻王を討て。王でありながら国のためにできることの少なさが悲しい。岳飛が盡忠報国と替天行道は重なる部分が多いといいながらも、楊令と岳飛は戦う運命にあるというのももどかしい。これが水滸伝なら魯達が岳飛に働きかけ引き込んじゃっていただろうと思うのになあ。なにせ、あと1冊。あとがきの“俺に国を作らせろ”はしびれた。