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人生ってこんなものかもしれない、小さな出来事の繰り返し積み重ね、そこから幸福も生まれ悲劇も生まれる、そしてどことなく可笑しい
2010/08/11 13:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:rindajones - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の作品は、伊良部シリーズの「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」「町長選挙」、そして「マドンナ」を読んだ。全くのフィクションでありながら、奇抜な中にもリアリティのあるストーリーが秀逸、笑いも多い。
本作品はこれまで読んだ作品とは違って、笑いは多くはなく、シリアスで社会派の「群像劇」の大作であると思う。「群像劇」という、互いに関係がない複数の登場人物が次第に出会っていき交錯する様を描くもの。本作品はそれが三名という少ない人数にも面白さのポイントがあるようだ。
彼ら三人は、別段特殊な能力や性格の持ち主ではなく、この社会に少なからず存在する人たち。50歳前の従業員二人の鉄工所の社長、大手都銀の若い窓口OL、パチンコとカツアゲで生計を立てている二十歳のオトコ、この三人である。普通に考えても、交流することはあり得ない三人。
この三人が徐々に「最悪」へ向かう事態に直面しながら、そのピークで出会うのである。
本書は600ページ余りある、著者の今までの作品の中ではかなり長編ではあるが、出張の往復で一気に読んでしまわせるストーリーというか、三人の描写は上手い。次第に大きくなる三人の苦悩や逆境には少なからず同情しながらも、興味深く読んでしまう。「最悪」の事態へと、人と人とのちょっとした関係性のもつれが積み重なっていく様は、ワクワクしながら読める。
結末はスカッとするハッピーエンドではないかもしれないが、心に沁みる納得できるもの。現実もそんなもんだし、その意味でも本書はリアリティという面でも極めて高い。
本作品は映画化されたとのことだが、あまり観たいとは思わない。大抵、面白い小説の映画化は期待外れになるもの。それは、小説の世界観を知った者に、それを超える映像や音を提供するのは大抵不可能だから。
だから、僕は本を読むのかもしれない。僕だけの小説の世界を描写しながら。
落ちていく3人
2017/10/20 09:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ご近所トラブルから銀行員まで、三者三葉の鬱屈とした思いが伝わってきました。日常から一気に転げ落ちていく様子に引き込まれていきます。
奥田ワールド
2005/04/06 16:44
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とし - この投稿者のレビュー一覧を見る
4人の視点から描かれたそれぞれの「最悪」
交わるようで交わらなかった彼らがふとした事で「最悪」を共有する事に。
4人それぞれを細かく描写しているにも関わらず、決してごちゃごちゃにならないストーリー展開はさすが!
しかし、最後のまとめは急すぎる感が否めない。
もう少しページが増えてでも、しかりとした終わり方であれば良かった。
日常に潜む、リアルな「最悪」
2005/03/04 09:18
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
近隣との騒音問題で悩む、工場経営者川谷。知り合いにたぶらかされてヤクザに監禁され、500万円作らないと殺すと脅される和也。上司のセクハラと人間関係に追い詰められる銀行員、みどり。そして夜の街で和也に出会ってしまった事から、ヤクザに監禁されて強姦されてしまうみどりの妹めぐみ。
どれも確かに最悪の状況。そして、どれも「ありそうだ」と思わされる。これは非常に大事な事で、誰にでもある日常が、思いも寄らない所から決壊していく事で、物語にリアリティを持たせ読む側をのめり込ませる。登場人物それぞれの物語がランダムに進み、物語後半に入って登場人物それぞれの背景を持って集まり、新しい物語が紡ぎだされていく。というのは別に珍しい手法では無いが、この手の構成にした場合、リアリティに欠けすぎたり、あまりに偶然が重なったりして、読む方に「えー?」と思わせてしまう事がしばしばある。がこの「最悪」では、それぞれの「最悪」には充分リアリティがあるし、登場人物が集まった瞬間、それぞれの「最悪」が極まる、という展開も非常に面白い。ちょっと終盤まとめに入りすぎたかな?的な感じと、やはり少々各所に、「なんで?」的な感は拭えない部分もあったが、さすが直木賞作家! 素晴らしいエンタテイメントに仕上がっていた。