紙の本
谷崎潤一郎氏には珍しい軽妙な心理コメディの傑作集です!
2020/09/15 09:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『痴人の愛』、『春琴抄』、『細雪』など、情痴や時代風俗などのテーマを扱う通俗性と、文体や形式における芸術性を高いレベルで融和させた純文学の秀作によって世評高く、「文豪」や「大谷崎(おおたにざき)」と称された谷崎潤一郎氏の作品です。同書は、谷崎氏には珍しい、猫に嫉妬する妻と元妻、そして女より猫がかわいくてたまらない男がくりひろげる軽妙な心理コメディの傑作です。安井曾太郎氏の挿画を収録し、非常に楽しい読み物となっています。また、美女とペルシャ猫への愛を高らかにうたう未完の小品「ドリス」も収録されています。
紙の本
猫が飼いたくなる作品です
2016/02/18 13:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:crest - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の主人公は庄造でも二人の女でもなく間違いなく猫ですね。何気ない猫の動きが実のかわいらしく表現されていて一気に読んでしまいました。そして女房とは別れても猫とは離れられない庄造も、未練がましく猫を取りあげることで庄造との復縁を画策する女房など登場人物がやたら猫型人間なのもこの作品をまとまりのあるものにしていますと思います。
紙の本
おかしくてかなしい
2023/07/31 08:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にゃんぱり - この投稿者のレビュー一覧を見る
谷崎は,台所太平記から始めて2冊目です。
どろどろした谷崎を敬遠している方にはおすすめです。
一匹の飼い猫をめぐる別れた妻とその妻を追い出した今の妻と
夫の話。
本当は手放したくないのに飼い猫を元妻に渡してしまう男,夫を
取り戻すために猫を手に入れるがその猫に救われる元妻。
夫は手放した猫に執着しつづけます。
猫はなにもいわないのに,この作品をみごとにまわしています。
猫好きもそうでない方にもおすすめです。
電子書籍
半端ない猫愛
2021/07/04 14:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
飼い猫リリーのためにとれとれのアジや鰯を用意して、ひと口ずつ箸で食べさせる場面に笑わされます。芦屋の国道沿いに立つ荒物屋や、六甲山にある元妻の家も風情がありました。
投稿元:
レビューを見る
Cat, a Man and Two Women. He is a Japanese famous novelist. He is famous for "痴人の愛"、"春琴抄"and "細雪". (and "The Key","Makioka sisters"? at overseas.)
ドリス:作者が大好きな”女と猫”についての、広告をずらりとならべた未完の小説?美しさを求める女人の逆手をとった広告の数々は笑える。
投稿元:
レビューを見る
Y先生に借りた。
解説が本気の解説
谷崎って読んだことなかった
いかにも谷崎の作品ではないようだから、機会があったらとりあえず痴人の愛とか読んでみようかと思う
投稿元:
レビューを見る
おもしろすぎる。これが80年近くも前に書かれた小説とは信じられない。猫を妹かなにかに変えれば、そのままライトノヴェルとしてじゅうぶん通用するのではないだろうか。しかし、さすがに谷崎作品であるだけあって、ただエンターテインメント性に優れているのみならず、きちんと人間の深層心理も巧みに描き出している。とくに、リヽーを手放すのに難色を示しつづけ、ついにいなくなったあとも、その様子が気になって仕方がなくなり、前妻のもとまでわざわざ逢いに行く庄造という男は、最高に滑稽だし、いっぽうで、なにかに依存せずにはいられないというその性格は、かならずしも喜劇一辺倒ではない気もする。私自身はネコ好きではないが、この感情はむしろよく理解できるし、こういうどうしようもなさは、誰しもが多少なりとも持ち合わせているものだ。人間の心の闇といってしまっては大袈裟だが、そういう特殊ではない普遍的な感情を、あえて極端に戯画化して描いたのではないか。そんな気もする。とにかく、やはり大谷崎は凄いと思った。
投稿元:
レビューを見る
猫が家族な人、家族にしたいけどできない人…もうとにかく猫が好きな人!みんな読むべし!猫の描写がたまらん!猫とのやり取りがたまらん!これは猫が大好きで猫をよーく観察している、そして猫を愛でている人にしか書けない本だ。心当たりがあり過ぎるセリフにクスクスどころか、大笑い。いつの時代もどこの家も同じことしてるんだなぁ。個人的に飼い猫の名前がリリーなのが我が家のリリーと重ねて読めて更に面白かった。元は打算があったにせよ、最後に品子がリリーに傾倒していくのが、これぞ猫の持つ魔力のような魅力なんだよな…と。意外と知られてない作品のようで残念。書店にて「猫」に関する本の特集をしていた中から見つけた。こういった本屋さんの企画には大いに賛成!今までもそんな中で良作に出会えたことしばしば…。
投稿元:
レビューを見る
完全な犬派で猫に興味の「き」の字もない人間でも、この小説に書かれている猫の愛嬌が悶絶してしまうぐらい伝わってくる。自分に心の相棒がいる人間には心苦しいほど訴えて来る物語だと思う。
投稿元:
レビューを見る
30歳マザコン・ニートの男が、追い出した元妻に飼っていた猫を譲ったものの、元妻と結婚する前から飼っていた猫で思い出もいっぱいあるし、歳とった猫だし、虐待されていたりしないかと気をもんでウジウジし、その挙句、元妻の留守宅に入り込んで猫の様子を見ると猫は「あんた誰?」という反応。という猫文学。
投稿元:
レビューを見る
猫リリーと庄造と品子(前妻)と福子(後妻)。それに庄造の母おりんが絡むのだが、猫の動きの描写が実に素晴らしい。隷属を好まずしかし愛玩される猫の振る舞いの数々、愛猫家にはたまらない一冊であろう。甲斐性なしの庄造の愛情が人間の妻よりもはるかに猫にばっかり向いていることを、2人のおんなそれぞれが嫉妬したため、前婚も後婚もうまくいっていないのだが、それでもなお猫に振り回される庄造と、そして嫌っていたはずなのにいつの間にか猫を大好きになってしまった前妻と、相変わらず癇癪もちで夫に厳しくあたる後妻の、それぞれが織りなす関西弁がユーモラス。
登場人物に谷崎特有の色気は全くなく、専ら猫に色気が集中しているこの筆力。なおタイトルは登場人物の序列をあらわしているとのことだが、それなら猫>福子>品子>庄造かな。これから1時間ドラマつくるならこういう傑作をとりあげなくちゃ。なお未完のドリスも収録されてたがこれは駄作でした。
投稿元:
レビューを見る
谷崎作品で描かれる女性たちはみな美しい。谷崎自身が憧れる強さを持った女性たち。この作品に登場する先妻と後妻はどちらも大人の女性としてのしたたかさがある。また庄造の弱さが際立つのはその母の強さも感じられるからだろう。庄造を取り巻く3人の女に対して、リリーというメス猫も女として描かれているのではないか。読んでるうちに、『痴人の愛』のナオミを思わせる自由な女の虜になっている男と重なった。