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救いはきっとある。
2004/03/20 00:12
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投稿者:バンドウメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
元夫婦の文通でストーリーが展開される不思議な構成。それぞれの主観と客観、冷静さと感情の高ぶり、過去・現在とが交差して緩急がついている。2人の微妙な関係がもどかしいのだが、傷心と喪失の過去からゆるやかに立ち直るそれぞれの姿が静かに心を打つのだ。
「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれない」。この言葉が2人の文通を長続きさせた。死に行く自分を見つめているもうひとりの自分の存在を知り、人生観が変わった夫。障害をもつ子を授かり、現在の夫に不倫をされ、すべてを過去の離婚につなげていく妻。お互いのわだかまり、苦しみを吐露することで受容は始まる。そして、すべてが理解されたとき、前進が始まるのだ。
過去は振り返ってはいけない。そんな言葉をよく耳にする。しかし、受け入れがたい現実から目をそむけ、逃げつづけるだけでは解決は望めない。勇気を出して認識する。理解する。どんなにつらくても立ち向かっていかなければ、止まったまま。ことに恋愛に関することはそうだ。時間は解決してくれない。解決するのは自分自身であることをそっとこの本は教えてくれた。
手紙
2001/03/29 00:45
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投稿者:T.D - この投稿者のレビュー一覧を見る
人はどんな時に手紙を書くだろう。面と向かってでも、電話を通してでも、言葉にできない事がある場合。相手に会えない場合。話すという事は、一方的な行為ではない。相手が黙ったままであったにしても、相手のある行為である。手紙は、一方的なものになり易い。また、手紙を書くことで、書くことに集中し、普段考えつかないような事を思いついたり、思いがけないほど、相手をいたわったり、傷つけるような言葉が書けてしまったりする。
人と人との出会い。住んでいる場所が近い、学校が一緒、職場が一緒、友人が共通、好きな店が同じ、通勤手段、時間が一緒、年齢が近い、いろいろの縁で、人が出会う。もしかしたら、人生を繰り返してまで出会いたいと思うほどに。良い出会いが必ず良い結果を生むわけではない。また、良い結果ではなかったからといって、出会い自体が良くなかったということでもない。
取り返しのつかない別れをした事に、冷静になってから気がつく場合もあるが、人生の時間は戻らない。後悔の中で、別れてしまった人に、面と向かってはいえなかった事を手紙で書ける関係にはまだ救いがあるのかもしれない。逆に、手紙で語れるという事は何かが終わってしまっているという事かもしれない。
自分が一番好きな人に一番好かれて一生一緒に暮らせたら、それはとても幸福で幸運な事だろう。そして、その状態がずっと続いたら。では、一番好きというわけではない人と暮らすことはどう言う意味を持つのだろう。片方にとっては相手が一番で、一方は一番ではなかったら、それは二人にとって、ともに幸福な事なのか。やり直しのきかない、後戻りのできない人生の中で、そんなことを考えたことのない人はいるだろうか。
人生の悲しみ、歓び、いろいろのことを考えさせられる、切ない小説。年に何回か読みたくなって、読み返してしまう小説です。後悔しない人生なんて難しいし、どうすれば後悔しないかなんて、過ぎてからしかわからない場合が多いのですが、若いうちに読んで、人生の全体像ではないけれど、感触を感じてみては。
紅葉の季節に相応しい本
2021/10/22 09:27
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投稿者:m - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと読もうと思いながら後回しになっていましたが、たまたま本屋に入った時に表紙が目に入り、購入しました。
書簡体のものは初めてでしたが、美しい文章と光景が目に浮かぶような描写で一気に読んでしまいました。
舞台が紅葉期の蔵王なのと、内容がしっとりしているので今の季節に読むにはもってこいだと思います。
一般の人はあまりしないのではと思う高級旅館での逢瀬や、今時こんな手紙を書く人など居ないだろうという時代感のズレは感じますが、もう一度読み返そうかなと思うくらいには良かったです。
美しい題名
2019/11/07 20:31
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラインやメールではこんな本にはなりませんね、当たり前ですが。美しい題名に惹かれましたが、手紙というものについても深く考えさせられました。
あの時を思い出して
2002/07/09 15:56
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投稿者:りゅうこむつみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いちばん最初に読んだ宮本作品はこれだった。何故これだったのかは覚えていないがたぶん最初に手に取ったのだと思う。
手紙。
それは私が当時とても大切にしていたものだった。
私には好きな人がいて、その人が書いた手紙(別の人にあてて書いたものだったのだが、その人には届かないものという設定で小説を書いていたのだ)が心に残っていて、なんだか余計にココロに残った。
二人の手紙だけで進んでいくという小説は初めて読んだ。
どうして二人はこんなに自分のことを丁寧に伝えられるのだろう? どうしてこんなに長く書けるのだろう? 私もこの何分の一かでいいから筆力があれば「あのひと」に思いを伝えられたかもしれないのに。
何年も経って思い出すのはそういうこと。
今読んでも、思い出は私を締め付けるのだ。
お互いの手紙だけで…とても美しい手紙の内容に涙しました
2002/06/29 10:58
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投稿者:アン - この投稿者のレビュー一覧を見る
離婚した夫婦が10年ぶりに再会したことによって手紙をお互い出し合う。そんな手紙のやり取りが書かれている。ただそれだけの事といってあなどってはいけない。とてもお互いに対する気持ちなどが美しく書かれていてかなり内容は濃いと思います。今はメールで…というのが普通ですが、手紙もいいのではないでしょうか? そんなことを感じさせられる小説です。
ストーリーよりもしっとりした味わいを楽しむ作品
2000/07/25 13:47
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投稿者:あつぼん - この投稿者のレビュー一覧を見る
離婚した夫婦が偶然再開したことから始まる
手紙のやりとりで全てが構成されている書簡体の作品。
この人の作品の常でいろいろあっても淡々と綴られる。
最初はこんな手紙のやりとりのできる元夫婦なんているか、
と思って読み始めたが、
落ち着いた展開(回想して記述する、それも小出しで)に
次第に引き込まれる。
比較的あっさりした作品で、読み終わって強い心の動きを感じる話ではないが、
ストーリーを追うよりも(展開は当然気になるが)、
しっとりした味わいを楽しみたい。