なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか? みんなのレビュー
- 中町綾子(日本大学芸術学部教授)
- 税込価格:814円(7pt)
- 出版社:KADOKAWA
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著者の日本語は平易至極。瞠目すべきほどの内容ではないが、楽しく読めた
2011/04/29 14:30
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はテレビドラマ表現の分析を専門とする日大芸術学部教授。
日本の刑事ドラマでは取り調べ中に被疑者にカツ丼が供されるシーンが頻繁に描かれた時代があるが、それはなぜなのか、という素朴な疑問から出発して、日本のテレビドラマの数々の定型表現方法の背後にある日本人の心象風景を浮かび上がらせようという一冊です。
著者によればそのカツ丼の起源は1955年公開の日本映画『警察日記』からだとか。まだ経済的に豊かではなかった時代に高カロリー食カツ丼が被疑者の弱った心を揺り動かす最高の贅沢品だったわけで、それは取り調べ相手に対する刑事の温情を明確に表現する小道具として重宝されたということのようです。
やがて時代は変わり、いまや取調室のカツ丼はギャグにしか聞こえず、日本のテレビはこのカツ丼が象徴する“情感”ではなく、論理や証拠分析といった“理屈”によって犯人を追及する時代になってきたと著者は言います。
このようにテレビの定型表現方法を一つ一つ取り上げながら、著者はその表現法の背後にある脚本家や演出家たちが読みとった時代精神のようなものを解き明かしていこうとします。
初出勤時に遅刻する熱血教師=不器用で一つのことに熱中すると他に気が回らなくなり、学校という体制の枠には収まりきらない爆発的エネルギーを持つ人物。
いじめっ子の親はPTA会長=親の権力を笠に着る生徒がやがてその親から精神的に成長するプロセスを描く上で格好の設定。
学園成長物語は仲間集めから始まる=桃太郎が猿・キジ・犬を集めて鬼退治に出る過程と同一で、個性の違う登場人物がリーダーのもと結集して一つの大きな目標を達成することを描く。
書かれていることもいちいちごもっとも。膨大な数の日本のテレビドラマを実際に視聴しているだけに説得力があります。
ただし読みやすさと裏腹に少し深みが足りない印象があります。確かに言われてみるとそうだよね、という思いは持ちましたが、なんとそうだったのか、という目をみはるほどのことが書かれているわけではなかったというのが率直な感想です。
また、日本のテレビが定型表現に流れて、視聴者を驚かせなくなってきているということも言えるでしょう。そのことへの切り込みが著者には足りないように思います。そこを明らかにすることが、今後の日本のテレビ表現をさらに一段上の高みに押し上げることにつながるのではないでしょうか。
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