紙の本
半端ない構成力が魅力です
2009/12/06 20:32
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家、五十嵐はかつて恋人を連続婦女暴行犯によって殺された。その犯人から、自分は冤罪であると訴える手紙が彼のもとにとどく。
物語は、文体と構成が重要だと思う。
でもって、構成力がすごいのはロバード・ゴダードであって、邦人出構成力で読ませる作家ってなかなかいないよね、と思っていた。
いました。
様々な主観が交差し、真相は二転三転し、そうやって混迷していった先に、全ては明らかになる。
全てのフラグは落ち着くところに着地する。
読み終わったあと、ああ、あれはああいう意味だったんだ、って思い返してふむふむと思う、ある意味読書の醍醐味を存分に与えてくれる。
にしてもこれだけの事件を乗り越えた主人公が、まるで普通に(?)生活している違和感が、むしろ折原一の毒のように感じて、怖くなった。
紙の本
一体何を信じたらいいのか。
2003/06/12 02:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:冬音 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全く折原一にはやられっぱなしだ。まるで騙し絵のようなストーリー。
最後に解る、一つの結論に達するまでに、作者に翻弄されるようにAから見たりBから見たり。果たして容疑者は本当に犯罪を犯したのか? だとすれば、一体どこまでが真実なのか?
どれだけ冷静に考えても、もっと冷静な作者の繰り出すストーリーに振り回されっぱなし。最後の1ページを読むまで、結果はわからない!
少しでも頭を抱えたら、あなたはもう叙述トリックの虜になっている!
紙の本
立場が違えば見方も変わる
2001/05/23 15:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上六次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去には冤罪事件が起こり、そのことをテーマとして書かれた小説もある。自白の任意性や代用監獄の問題といったことを扱っていたことが多いように思う。本書は冤罪についてやや違った側面から描きだされている。
ノンフィクション作家の五十嵐友也のところへ連続婦女暴行魔として裁判中の河原輝男から冤罪を主張する手紙を受け取る。五十嵐は自分の婚約者を連続婦女暴行魔に殺されている。河原は本当に犯人ではないのか。真犯人は別にいるのか。物語は錯綜していく。
本書は五十嵐や河原、連続殺人事件の被害者の家族、河原の冤罪を支援する会の人々、河原を取り調べた刑事、河原と獄中結婚する女など事件にかかわる様々な人たちの視点で描かれている。あたりまえのことながら立場が違えば同じ出来事に対する見方も変わってくる。ただ、このあたりまえのことを利用して伏線が次々と仕掛けられていく。
それに加えて登場人物たちが曲者ぞろいである。河原は濡れ衣をきせられたかわいそうな人でもなければ、支援する会も冤罪事件に憤りを感じている人たちとは単純には描かれていない。一方、刑事も正義の味方ではないし、被害者の会は無罪判決を受けた河原をしつこくつけまわすいやらしさを発揮する。
冤罪イコール善良な市民が警察権力によって罪に陥れられるという構図を捨てることにより、物語は先の読めないミステリーに仕上がっている。折原氏が得意とするトリックの世界を堪能できる一冊である。
紙の本
二時間ドラマ?
2002/04/09 01:57
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクションライターの五十嵐は、連続婦女暴行魔の取材過程で恋人を取材対象の暴行魔に殺される。一連の婦女暴行では立件されなかったが、五十嵐の恋人に対する暴行殺害の罪で服役中である。その河原から五十嵐は冤罪を主張する手紙を受け取る。本当に河原は冤罪なのか、真犯人は別にいるのか、物語は二転三転する。
本書のタイトル「冤罪者」に「STALKER」とルビがあるが、この意味は読後に分かるようになっている。
投稿元:
レビューを見る
一言、怖い・・ですね。
異常者の心理の描写が真に迫ってます。
初めての作家さんですが一気に引き込まれました。
投稿元:
レビューを見る
『冤罪者』→『失踪者』→『沈黙者』とお読みください!
どんなに見破ろうとしても折原氏の叙述トリックは見破れない!
投稿元:
レビューを見る
不快指数高いわ〜
婦女暴行って犯罪が不愉快この上ないのは当たり前だけど、出てくる人が(主人公さえも)みんな不快で、読んでるうちに誰も信じられなくなってくる。
だけど読み終わったときの納得度も高い。
曖昧に終わってしまう部分もあるけど、これぐらいならおもしろいし。
ま、知らない方が幸せなこともあるから・・・
投稿元:
レビューを見る
【2005.04.04.Mon】
12年前に起こった中央線沿線連続女性暴行殺人事件。其の最後の被害者となった水沢舞の件で起訴され、第一審で無期懲役判決を受けた河原輝男から冤罪訴える手紙。それを受け取ったかつての舞の婚約者であったノンフィクション作家五十嵐智也は12年前の事件の真相に迫ってゆく。事件に関わっていた全ての人が様々な形で自分の信念を貫こうと動き出す。どれが正しいのかはわからない。五十嵐のおかげで無罪放免となった河原もやはり怪しい。そんな疑惑や謎を抱えながらラストへと進んでゆく。事件の全貌は意外なところに隠されていた。ラストまで読み終えると文章の途中途中にヒントが隠されていたことに気づく。感嘆。叙述トリックの罠にはまるのはなんとも楽しい。やみつきになりそうだ。
投稿元:
レビューを見る
最後まで飽きさせないスピード感溢れる一冊。
その斬新な描き口に魅了されました。
登場人物を都度疑ってみるけど最後までわかりませんでした。
でもネタが分かると「ああ、なるほどね」って思わせるところが、さすが折原さんです。
投稿元:
レビューを見る
ノンフィクション作家・五十嵐友也のもとへ連続婦女暴行魔として拘置中の河原輝男から手紙が届いた。冤罪を主張し、助力を求める一方的な内容に眩暈を覚える。かつての恋人だった水沢舞を河原に殺された五十嵐にとってそれはただ不愉快な内容でしかなかった。
河原の言うとおりこれが冤罪ならば舞を殺した真犯人が居るのだろうか?
あ〜。粗筋すげー端折った(笑)めんどくさいのと覚えてないのがその理由。
相変わらず、折原マジックが入ってます。なかなか面白いどんでん返しがあるので結構楽しめたし、最後のちょっとした河原の独白がスパイス効いてます。
投稿元:
レビューを見る
最後の最後までドキドキもんです!!ただ、ラストが・・・竜頭蛇尾の感が否めない(;^ω^A それでもおもしろいのがさすが折原一さんというところか?(*^m^*)
投稿元:
レビューを見る
ノンフィクション・ライターとして働いている五十嵐友也は、自分の婚約者を昔、亡くした過去があった。不幸にも、当時騒がれていた連続婦女暴行殺人事件の被害者となってしまったのだ。しかしながら犯人は捕まり、10年たった今はもう、自分も新たな相手を見つけて結婚し、落ち着いた生活を送っている。五十嵐にとってはもう思い出したくも無い事件、それなのに・・・。仕事仲間に呼び出された五十嵐は、犯人・河原輝男が今になって無罪を訴え控訴、そしてなんと助けてほしいと書いた手紙を送ってきたことを知らされる。
おもしろかった!冤罪というタイトルから、社会派的な物語かと思いきや、それだけというわけでもなく。もちろん、河原が本当に犯人なのかは最後までつきまとってくる問題であるが、あちこちに仕掛けてある叙述トリックや細かな設定が、最後に見事にはまっていく感じが快感。どうしてこうなっていたのか、どうしてそんな行動になったのか。全てに説明がちゃんとついている。分厚い本だったのに、ものすごく短く思えた。
投稿元:
レビューを見る
ラストのラストまで、誰が犯人なのかがさっぱりでした笑
小谷ミカがまさか・・・
びっくりしましたね。本当に
折原さんにはお手上げです。
投稿元:
レビューを見る
折原作品の感想は大抵「騙されたっ!」。でも読みなれてきた最近になると、「このへんはきっとこうだな。でもってこっちの視点はまた別なんだよ絶対」と疑って深読みする傾向に。真相を読んで「やっぱりなあ」とほくそえむのだけれど、新鮮な驚きは得られない、そんな感じの今日この頃。
ところが。久々に折原作品で「騙されたっ!」と叫びましたよこれは。なんとなくは見当のつく部分がないではなかったけれど、絡み合う要素が多すぎて。それをきちんきちんと整理しているつもりで、実はどんどん深みにはまっていたんだなあ。完敗。
そういった部分を差し引いたサスペンスとしても逸品。本当に「冤罪」なのか、それとも真犯人なのか。それだけでも充分どきどき。これは見事っ!
投稿元:
レビューを見る
事件の冤罪かどうかを見極めるルポライターが主人公。
様々な人物や、時折挟み込まれるメールの文章、幕間など
徹底的に読者を翻弄する、氏らしい「叙述もの」
読むにつれて引き込まれ、サイアクであり驚きのエンドまで一気に読める良作。
決して社会派ではないような中身でありながら、結局は考えさせられるのも
なんか氏にだまされたような感じ。
このだまされた感が溜まらなくすばらしい。
氏の作品の中で、珍しく(失礼)傑作の部類。
かなりお勧めです。