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英文学の講義を取っている。課題その2。
『嵐が丘』は子供向けにリライトされたものを読んだことがあって、キャサリンとヒースクリフの恋愛小説だとずっと思っていた。
のだが。
これ、恋愛小説?
二人の間にロマンティックな感情が介在するようにはとても思えないのだけど。いや、確かに強靭な絆は存在していて、二人は互いに互いの片割れという唯一無二の存在なのだが、その関係性が「あらかじめ与えられている」ように見える。いつから、なぜ、彼らがこれほど強く結びつくようになったのかが全く不明なのだ。恋愛小説の重要なファクタとして恋人たちの関係性の発展を描くという面があるはずなのに、そこんとこはまるっとすっぽ抜けている。常人の理解を超えてどこまでも惹かれ合うキャサリンとヒースクリフは、なんだか人間のように思えなかった。
さて、一旦気づいてしまうと、ほとんどすべての登場人物が人間とはかけ離れた動きをしているような気がしてきて困る。聞くところによると、『嵐が丘』は登場人物の誰にも感情移入できない名作として名高いらしい。それも頷ける。これでもかとばかりに強烈な喜びや憎しみが描かれるのに、その感情の発生メカニズムがほとんど見えてこないのが不気味でならない。奇妙な隔絶感をずっと感じていた。
下巻に入ると、第二世代が登場する。第一世代と同じ名前と気性を受け継いだ子どもたち。相変わらず行動原理がよく分からないままに愛し合い、憎み合う。与えられた人格が永遠に固定している。持ち主のいない激情の塊がただ飛び交う様を見せられているようで、だんだんと当てられてくる。疲労困憊しつつ終わりを見届けた。
私には最後まで、ヒースクリフのことが分からなかった。ただ何か大きな恐ろしいものが滅びるのを見た。
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さて。
ヒースクリフとかって、もう最悪の人物のはずなのに、嫌悪感しか感じないか、というと、そうでもない。なんか、彼が抱えている心の闇ってだれにでもありそう。それが抑制されたり飼いならされたりしないとこんな風に発現するのは当然だよな、と納得させられる。まあ、きっとそういう普遍的なところがすごいんだろうなあ。最近の社会なんて、現実にも結構いそうだし…。
あ、そういえばヒロイン母娘、途中からあるアニメの登場人物がちらちらして、やや当惑。赤いプラグスーツとか着てて、「あんたばかぁ?!」とかいいそうな…。
で、このお話の時代って、エリザベスとダーシーの恋物語に重なるんですよねえ。ということは、ナポレオン戦争の最中かぁ。昔の社会って一枚岩ではないんだなあ…。
ともあれ、正直、疲れました。
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私は『嵐が丘』というのは、イメージで恋愛ものだと思っていたけど、読んでみて要素はあるけど、とんでもない!復讐なのだ。
狭い世界で数人しか知らない中で暮らしている。そんな中での復讐劇。
最初の方で、家系図があり、なぜこの3人が一緒に暮らしているのか、とても疑問に思った。組み合わせがおかしいではないか?しかも、人間関係が最悪の状態なのだ。
いったい何があって、こんなことになっているのか?
その謎を家政婦ネリーの語る過去によってわかる構成になり、さらにその後が描かれている。
ヒースクリフはある出来事から憎しみや嫉妬を増幅させ、言葉の端々で、態度で、人をコントロールし、表に出し切っていく。みんなに感染する。
ブロンテ姉妹として取り上げられやすいので、比較されるのは嫌かもしれないが、姉のシャーロットの『ジェイン・エア』は何度も読みたくなると思えるけど、『嵐が丘』はもうごめん。どんどん読ませるので小説として面白かったのかもしれないけど、とてつもなく疲弊して爽快な気分にとてもなれないからだ。
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上巻が重かっただけに下巻はキャサリンの娘キャシーの天真爛漫さに救われた
前半 ヒースクリフの息子リントン ロンドン育ちのせいなのか、マジか?!ってくらい、虚弱すぎる キャシーの方が数倍たくましい ほんとうにヒースクリフの実子か? やっぱり荒野で育った子達はたくましいw
中盤 リントンのキャラが、もう、ひ弱とかいうレベルじゃない 段々とギャグに思えてくる キャシーはこの小皇帝のどこがいいんだ リントンのキャシーへの独占欲の強さは父親譲りのようだ
ネリーが仕えてるお嬢様に対しての口の利き方が乱暴すぎる 田舎のメイドだからなのか ずっと違和感があった
なぜ、父親がヒースクリフを下男として育てなかったかずっと疑問だったが、実はよそで産ませた子だったとの解釈あり なのでキャシー達と兄弟のように育てたという説を読んで納得できた
ハッピーエンドだと聞いていたから、なんとか頑張って読んだ でなければ、とっくに挫折してたと思う
普段ロマ本に浸かっているせいか重厚な純文学に圧倒された
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人間の心の底のマグマが描かれてはいる。ただやはり解説の内容から忖度しても、それは母国語で読んでこそ伝わってくるマグマであり迫力なのかもしれない。
非常にこなれた訳で読み易くはあるが、まどろっこしく無駄なセンテンスも多くあると感じてしまうのは、私だけだろうか…?傑作と呼ばれる小説ほど、長編であっても無駄なセンテンスが一切無く、繰り返し読めば読むほどに「この箇所はこういう意味、役割を担っていたのだなぁ…」といった発見があるものだ。
そして何より、初回に読み終わった時の衝撃といったら、計り知れないものがある。
そうした衝撃は、あまり感じなかった。
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途中で二代目のキャシーやリントンの振る舞いに辟易してしまい、読み続けるのがしんどくなったが……
それぞれに自分の境遇に対する不満や、それに伴う自己正当化があるのだろう。それをもとに展開される発言は、読み手に媚びずに登場人物たちを存在させる。(自分勝手で意地汚くて、結構ストレスにはなるけれど…) 人が人らしいのは、見られているという意識が感じられないからではないか。
はっとするほど印象的な、活き活きとした場面がある。多くはヒースクリフの熱のこもった多弁さが披露される時だ。この作品には、手放しで尊敬できたり好きになったりする好人物というのは存在しないが、すべての人物の運命を貫くヒースクリフが、やはり一番存在感がある。
結末にヒースクリフの血は残らない。幸福は彼を必要としなかった。同情の余地はないものの、さみしい。
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やっと読み終えた〜!
2時間くらいで読めるだろうと思ったのに、読み進めるのが辛くて時間が掛かってしまった。読了して、なんだか精神が削られたような気分です。
ただの恋愛物語、復讐物語ではなく、色々と考えさせられるものがありました。
キャシーとヘアトンの愛情が、幸せが、永遠に続きますように。
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ヒースクリフがイザベラを含めたリントン家での平和をかき乱し始める所からの下巻。
ストーリーの大筋はヒースクリフのキャサリン(母)との恋愛と破局、その復讐の物語だが、聞き手となるロックウッドか家政婦ネリーから聞く形式となっており、このネリーがいかにも偏見を持った語り口なのでその内容を鵜呑みにできずに読むという状況を作っているところが読者の想像力を要求しており面白い。故に読み手の考え次第では評価は大いに分かれそうです。
終盤でロックウッドが聞き手から物語に参加する可能性が示されたときは少しときめいたが、残念ながら空白の数カ月は意外な方向に展開して、しかも主人公とも言うべきヒースクリフの死が予告され困惑する。読み終えて考えるに1番座りのよいところに落ち着いた印象もあるが、亡霊に取り憑かれて絶食して死するヒースクリフの末路は強靭な肉体と精神を宿す者のはずなのに納得がいかない。
とはいえ何か余韻の残る読み応えのある作品と感じるのは巧みな描写、繊細な感情表現、時代を感じる設定などを味わえたことです。1847年作品とのことで、その当時を体感できる感覚は古い小説の味わいですね。
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実は去年もうとっくに読み終わっていた1冊。上巻はKindleUnlimitedで読了。新潮文庫の鴻巣友季子さんの訳も清新で好きだったけれど、こちらも読みやすい訳でした。
下巻はこの作品を理解する、本当の大事なところ。第1世代のキャサリン・アーンショウとヒースクリフの恋愛から、ヒースクリフの復讐→彼ら彼女らの子供世代の成人と、それ以降の大団円へと話が進んでゆきます。同じ名前を引き継いだ子供世代のキャサリンとヒースクリフと、第一世代との区別というか、人間関係を整理しながら読むと、俄然話はわかりやすくなり、面白さを増すでしょう。どんなに深い恩讐も、人間はそう長く抱え続けられず、どこかで忘却したり、許したり、変容していくものなのかもしれません。狂気の淵に沈んで、砕け散ったガラスのような第一世代のキャサリンも、独り残され、生きてきたヒースクリフの濃く巨大な影も、全てが過ぎ、嵐がさらっていったように、後には灰色から、いっそ白に印象を変えた空と、吹き渡る風と、ヒースの丘だけが、静かに残ります。激しく狂気と荒々しさに彩られたこの作品の結末は、私にとっては意外に静かで、長い時間をともに生きたな、という感覚が残るものでした。
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愛か憎悪か。より深淵な感情が物語を衝き動かす。英国北部の広大な二大豪邸に道徳と教養を奪われた無法者が放たれる。禍いは明らかだ。自然美溢れる丘陵地帯を舞台に荒れ狂う魂が躍動する。獰猛な恋慕に終焉は無く、未だに奥底で燻り続けている。
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怒号や非難の応酬が飛び交う物語はまるで任侠映画だが主人公達は義理も人情もなくひたすら自己憐憫や恨みをぶちまける。突き抜けた自由さがこの小説の魅力の一つかもしれない。出生故とは言え異常に経済観念の発達したせこい復讐が長々と続き、アッシャー家の崩壊のような終わり方になるのかと思っていたところ、頑丈な彼が唐突に亡くなったと知らされるいよいよ終わりの部分で物語の雰囲気が切り替わった。次の世代では、負の感情が集約されたリントンが夭逝、つらい経験を経た、欠点もあるが優しい性格の2人が、復讐の呪いを振り切る結末は、それまでの話が暗かった分、大いに爽やかで心温まる読後感で、推理小説の意外な犯人がわかったようなカタルシス。
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たまたま機会があってこの本を読み始めた
名作とのこと
よくわからないまま読み終えた
誰が主人公なのだろう
何故そこまで
何故死を迎えた
読み方が不足しているのだろうか
外国文学はなかなかしっくりいかないことが多く、幼い頃は多数読んでいたが最近はずっと縁遠かった
また暫く読まないかもしれない
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ヒースクリフの復讐は次の世代をも巻き込んでいく。ネリーの語る回想は、冒頭で青年が見た光景まで進むが……。
恋愛を扱っているのに恋愛小説っぽくなく、むしろ不気味なサスペンスを感じる下巻。しかしヒースクリフとキャサリンの愛にはすさまじいものがあり、そこだけは素直に感動した。キャサリンの方は上巻で本音を語るシーンがあったのでわかるが、ヒースクリフを突き動かしているのは何だろう?単に愛情からくる復讐心、だけでは説明がつかない気がする。徐々に子どもたち3人の話に移っていくなか、彼の圧倒的な存在感はさらに増していく。そしてラストは……。
訳者の解説で補助が得られたものの、初見では深い理解には届かなかったかもしれない。ヒースクリフの復讐が達成されていく過程に目を奪われがちになる……と書かれてあるとおり、筋書きを追うのに夢中で、この小説の底にある強烈なエネルギーについては漠然と感じるだけで終わった。他訳にもいつか挑戦したい。
作中で都合よく人が死にすぎじゃね?と思ったが、エミリー・ブロンテの年譜を見て納得。本人も30歳の若さで亡くなっているし。没後何十年もたって評価されるとかつらすぎる。しかし今後も読み継がれる力を持つ名作だろう。
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ヒースクリフと二代目キャサリンがどうなったのか
が気になってサクサク読めた。
物語を色に例えるならダークグレーかな。
重苦しくて辛かった。
なにしろベートーベンが生きてた古い時代に書かれた物語だから読みにくそうなイメージだったが、翻訳がとても自然で読みやすくて有り難かった。
訳者は真剣にこの作品と向き合った結果、相当疲れたらしく、自分もただ読んだだけで…疲れた。
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狭い世界の中で、少ない登場人物たちがぎゅうぎゅうにせめぎ合っている。大自然にかこまれていながら不自然な環境。代々狭い人間関係で遺伝的な病もありそう…など無駄な想像か。誰が主人公とも言えず、誰も客観性を持ちあわせない、個と個の闘争。愛情にせよ復讐にせよ、何十年と熱意を持ち続けるのはものすごいエネルギー。読む側も覚悟がいる。