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ニーチェは初読。新訳かつ、原文では自明であろうが訳すと何を指しているかわかりにくくなる箇所は本文中で補足されているので読みやすい。用語や人物の注は巻末にまとめて。もう少し解説が欲しいところもあったが、1冊の文庫にまとめるのであればこれくらいが限度か。
序盤はニーチェの姿勢をわかっていなかった為、本音なのか皮肉で言っているのか掴めないまま読み進めたが、アフォリズムという断章を積み重ねる形式で記述されているが故、個々の内容の意を汲むのはそれ程難しくはなかった。ただ後書きにあるように断章間を紡いで真意を読み取ることまでできたかは甚だ怪しい。
上辺のみの理解で感想を語ることになるが、選民的貴族主義的な傾向はその後訪れる20世紀を知る者からすれば危うく感じる。それでも畜群道徳(本文中ではこの訳としては出てこない)に関するくだりは、21世紀の今も余りに低次な同調圧力として残存していることを思いださせて身にしみる。キリスト教批判、デカルト、カントらの哲学をも独断論的と評したことは当時どれほどの衝撃だったのだろう
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ニーチェ以前の哲学を批判し、あるべき哲学者像を呈示した書。哲学の理論とはその創始者の自己認識であり、道徳的な意図を持って成長したものだと言う。道徳には主人の道徳と奴隷の道徳との2種ある。以前の哲学者が依った道徳は後者であった。真理への意志とは力の意志なのだから前者に依って哲学すべし、というのがニーチェの主張である。後者の道徳の欺瞞性は我々も無意識的にでも勘付いているはずだ。例えば例えば「いい人、なんだけどね・・・。」などと評する時だ。その台詞にはニーチェが指摘した善と愚の接近がある。なお、本書は寄り道が多い。稲妻に撃たれるようなものもあれば、女性やユダヤ人に対する読むに耐えないものまで。そんな訳でか、道徳についての詳細は『道徳の系譜』に譲られる。
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「ツァラトゥストラ」よりは、その意味するところが明瞭だった。哲学批判や、生の本質が平等ではないなど、鋭い指摘があった。訳は読みやすかった。女性については、なぜここまで保守的なのだろうか。
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ニーチェ 「 善悪の彼岸 」
近代哲学を批判し、ニーチェが目指す 新しい哲学 について論じた本。題意は、善悪の超えた思想(=新しい哲学)、善悪の及ばない領域 と捉えた。
見えてなかった世界、あえて見ようとしなかった世界を ニーチェから 見せつけられた感じ
アフォリズム形式で 短い文体なので キーワードは拾いやすい
*善悪なるものはない、ただ解釈だけがある
*ニヒリズムを徹底して ニヒリズムを克服する
*新しい価値の根拠が必要。新しい価値の根拠=力への意志
ニーチェの目指す新しい哲学
*独断論(民族、文法、大衆の先入観の呪縛)からの解放
*真理を暴き出すのでなく 真理を誘惑する哲学
*キリスト教道徳から解放させる哲学
*ものの見方のうちに潜む先入観を暴きながら 遠近法の自覚へ誘う哲学
「近代哲学は 独断論に終始し、真理に近づくことはできない」
独断論
*民族的迷信=魂の不滅(ソクラテス、プラトン)→哲学がギリシャ起源であるかぎり、民族的なものの見方から逃れられない
*文法を信じる=世界の秩序を信じる=神の存在を信じる→文法を捨てることを 新しき哲学者に求める
*哲学が大衆の先入観、私的要素により決定される
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ツァラトゥストラを分かりやすく書き直したというだけあって曙光よりだいぶ理解できた。と思う。すごくまじめに読んだら面白かった!ニーチェ先生が私たちのレベルまで降りてきてくださっているという感じ。
まず支配者の道徳と奴隷の道徳があって、奴隷=一般人はキリスト教程度で満足していればよいけど、支配者、新しき哲学者は奴隷も何もかも利用して高次の課題にあたり、新たな道徳価値を創造する。そういう人々が必要なんだ、ということ。
精神は自分の周りを同化し、征服し、わがものにすることで成長しようとする、これが生の本能、力への意思。キリスト教的道徳のもので、この本能は悪として否定され、支配者になるべき人を傷つけてきた。無条件に真理に高い価値を認め、認識できるものと断定していた今までの哲学は間違いだった。
新しき哲学者は、下賤な人間に学びながらも、孤独で、独立不羈でなくてはならない。苦悩の中で自由な精神を高め、力への意思を行使する。人間の「どこへ?」と、「何のために?」を定めるために。
これは祖先からこの仕事に取り組み、訓育されていて高貴で強い精神の者のみ許される。
すがすがしいほどの選民思想!あと女性蔑視的発言!真理は女性だから仕方ないのか!私は間違いなく奴隷なのだがここまで徹底してるともう全然嫌な感じしない。感嘆があるのみ。
人間にはランクがあるということは全く間違いではないと思うが、ここまで臆面もなく主張できるのはすごい。
「そこに驢馬が登場した 美しく、いとも逞しき驢馬が」のところと、突然「自殺を考えることは、きわめて優れた慰めの手段である」と言い出してメンヘラになるところは笑った。
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永劫回帰、超人、ルサンチマンなどの概念を生み出したことでも知られるニーチェだが、
なぜニーチェが、どうゆう理由で、それらの概念、価値を創り出したのか? それを良しとしたのか?
この本ではそれらのワードはまだ出てきてはいないが、その結論に至るまでの思考の変遷をニーチェと共に追体験することが可能な本だ。
結論が正しいかどうかの議論とは別に、
その結論に至るまでの道筋に対峙していくことができる。時代を超えて。
それが古典の醍醐味である。
善悪の彼岸というタイトルのこの著書は、
過去から作り上げられてきた良し悪しという価値基準をぶち壊しにかかるニーチェの精神の奮闘を共に味わうだけでなく、参加することができる。
それほどに読者に何かを叩きつけてくる激しさをもった書。
まったくもって新しい。
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「ニーチェの考える新しき哲学とは、真理を暴きだすのではなく誘惑する哲学、キリスト教の道徳のくびきの魔力を明らかにして、そこから解放される道を示す哲学、すべてのものの見方のうちに潜む先入観を暴きだしながら、遠近法(パースペクティブ)の自覚へと誘う哲学である。」
先人の思考を次々と突き破っていく本。批判して、「この思想のここがおかしい!」と言ってどんどん次へ進んでいく。つまりニーチェは何が言いたいんだ?と私は思ってしまい、解説を見ると上文があった。この本も列記とした哲学書なのだと知った。
まだ一篇しか読んでないが、読み進めるのが大変かつ実践的な内容ではないので積読にする。