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紙の本
よくわかる。でも、私はグランデを買わないけど。
2008/09/03 17:05
15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「価格と生活の経済学」という副題のとおり、生活に密着した身近な経済をとても分かりやすく説明してくれる本だった。たしかに昨年のベストセラーだけある。
「ペットボトルのお茶はコンビニとスーパーのどちらで買うべきか?」
「テレビやデジカメの価格がだんだん安くなるのはなぜか?」
「大ヒット映画のDVD価格がどんどん下るのはなぜか?」
「携帯電話の料金は、なぜ、やたらに複雑なのか」
「100円ショップの安さの秘密は何か?」
・・・
各章、どれを見ても価格の決められ方、のしくみを明快に説明してくれる。
後半には「経済格差が現実にはなかなか是正できないのはなぜか?」「子供の医療費の無料化は、本当に子育て支援になるか?」といった一段高い目線の話も入ってくるが、それでも少しも難しいとは感じない。著者の説明能力には感心するばかりである。
価格のしくみ、経済のしくみ、「なるほど、こういうふうに動かされているのか」が得心でき、よく考えて買いなさい、ということが伝わってくるとてもよい本だった。
え、これだけ誉めておいて星の数が少ない?そう、話題性や説明の分かりやすさ、面白さはいうことなし。ただ、最後の「つめ」の「べき」っていうところでひっかかった。
まあ、性格として「べき」とか「買え!」とか強制されると抵抗したくなる、というのはこちらの個人的問題なのだが、どうしても「これ以外もあるでしょう」といいたくなるのである。
例えば、たしかに経営者側からも消費者側からも「経済効率」を考えたら表題どおりになるのだろう。しかし、である。「効率」じゃなくて「絶対値」も実際の消費者の懐具合には大事。シングルサイズの量で充分満足している人が「お得だから」といってダブルサイズを買っても、残してしまったら高い料金払った分、絶対的な数値が上がった分だけ損ではないか。ちなみに私はシングルサイズでも多いと思うぐらいのタイプ。
これ、「つめ放題」だから、と普段より高い料金で沢山つめて買ったって腐らせたら元も子もない、というのと近い気がする。「お得」にもやはり罠があるようだ。もし、もしも、ですよ、シングルサイズは「これでは物足りない」と思う人が多い量に設定されているとかしたら・・・? そんなこともこの本を読んだ後では考える、ということではこの本はとても役に立ったといえるのだが。
よーく、読めば「無駄なものまで買わないこと」はちゃんとかいてありますよ、といわれるだろう。たしかにそうである。でも、「よーく読めば」なんて、それこそ本書中にでてくる「携帯の契約」みたいじゃないだろうか・・・。
こういう仕組みが働いているから、それをよく考えて、という著者の情報提供は大変ありがたかった分、「別の考えもあります」をもう少し言って欲しかったと、いうわけで★2つ減。
説明のよさ、分かりやすさでは五つ星です、しつこいようですが。
紙の本
経済学を知らない人にオススメです
2017/01/01 23:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:melon - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学の学部で習うような経済学について、身近な事例を利用して簡単に説明している本です。大学で経済学を学んだことのある人であれば、懐かしさを覚えるでしょう。またこんなに簡単なことであったのかと思われるかもしれません。逆に大学などで経済学をかじったことのない人にとっては、経済学に興味を持つきっかけになるかもしれません。
図が多用されていてわかりやすいでしょう。ただし、数字はあくまでも説明の便宜のために用意されたものであり、実際のデータに基づいているわけではありません。経済学が机上の空論といわれることもありますが、その理由がわかるのではないでしょうか(もちろん机上の空論と思われないために身近な事例を経済学を用いて説明しようとしているのですが)。
この本で一貫して主張されていることは、取引コストの重要性です。これは“いろいろなモノやサービスを取引するときに、取引されるモノやサービスの価値に対する支払い以外に生じるコスト”のことで、たとえば本書の事例を参考にすると、スーパーで85円で買えるお茶を観光地で150円で買うことについて、その観光地までお茶を運ぶことに対するコストなどを考慮するとその差額は妥当だといえることがこの取引コストという概念によって説明されるわけです。
携帯電話の料金についてはこの本の書かれた2007年頃から問題になっていたのですね(2017年現在においては状況が変わっていますが、相変わらず日本の携帯電話料金体系は問題があるものといえますね)。日本の携帯電話メーカーがダメになるわけですね。
焼肉とステーキについて、両方とも高品質な肉をおいしく食べたいとの欲求があるときに食するものであるが、前者は自前で焼くため料理人のコストがかからないが、うまく焼く自信のある人が得をし、そうでない人が損をするもの。一方の後者が料理人による上手な調理があるため、肉を焼く技術は消費者に求められず、必ず均一化されたおいしい肉を食することができるが、料理人のコストがかかるため高くなる傾向にあると考察されています。面白い視点であり、そのようなことを考えたことはありませんでした。実際同等程度の肉について焼肉とステーキってどっちが高くなるんですかね。イメージとしては確かにステーキの方が高そうですけど、肉質の問題なのではとの気もするんですよね。
子供の医療費無料化について、医者にかかるということは治療費としての金銭的な部分が減ったとしても、本来医者にかかるようなものでないものまで病院にいくことになるから、長時間待つことになる(時間という取引コストが増える)ため、子供を持つ親にとっても本当に良い政策であるとはいえない、むしろ不公平な悪い制度であると筆者は主張します。この考え方はまさしく取引コストというものを的確に表していると思います。日本の財政が悪化している中で医療費を削減する必要があるという方面からのアプローチでなく、基本的に恩恵を受けていると思われる人々にとっても実は損をする政策なのだというこの発想は、コロンブスの卵のように思われました。