『アヘン王国潜入記』
2019/11/08 23:07
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界最大のアヘン供給源となっている地域に著者が潜入し、実際に著者自身がアヘンを吸って、共に生活をし、アヘンの栽培などもしたルポルタージュ。非常に読み応えがある。私はこの本をきっかけに高野秀行という人物と出会い、以後何冊も著書を買っているが、一冊として外れがない。入門書としてもお勧めできる一冊。
貴重なフィールドワーク。「肩の凝らない民族誌」とでも呼びたくなる好著
2017/02/26 18:00
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国雲南省からミャンマーにかけて居住するワ族。そのワ族は20世紀前半まで首狩りの習慣を持ち、しかもゴールデントライアングルと呼ばれるアヘン生産の中心的役割を担ってきた。その地に潜入し、実際に村人達とケシの種まきから収穫までを一緒に過ごし、村人目線で現地の生活を描き出した、正に貴重なフィールドワークそのものである。学術的な調査・論文は別にして、一般市民が普段接することの少ない少数民族の生活実態をここまで描ききってくれた著作はないものと思う。著者はまた、現地生活の困難さからアヘン中毒という「貴重な」体験まで報告してくれる。
驚きだったのは、一般的に「反政府ゲリラ」といえばどうしようもない暴れん坊という印象をもつが、ワ族の人々は礼儀正しく謙虚で、原日本人像とも重なるような態度を示す人が多いという点。「西南シルクロード」に登場するカチン族とも共通する感覚を受けた。照葉樹林文化との関係があってもおかしくない地域に生きる人々の生態をもっと知りたいと思う。
なお軍事政権時代とは言え、現地少数民族から見た時の、ミャンマー政府の無能ぶりも存分に描かれている。現在にも共通する病根がこの国には残存している可能性が濃厚である。
閉ざされてる社会に開かれる
2021/08/29 12:25
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投稿者:Jiji - この投稿者のレビュー一覧を見る
体感的な視点と俯瞰的な視点を融合させた文は天才的。そんな他人事には興味持てないと切り捨て無視の日本出版業は閉ざされているワの村を彷彿とさせるし、世界を牛耳る巨悪の根元を考えるネタが詰まっている本だけど、指摘弾糾なんて野暮に終わらず、笑いに落とし込む著者のモラル感、バランス感覚の高さに好感。文明はないけれど文化がある は名句。
最高におもしろい冒険記
2020/06/11 08:42
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
高野さんの作品はどれもすばらしくて、本当に楽しいものばかり。でも、よくよく考えると高野さんしかできない危ない冒険ばかり。あー、おもしろかった!
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早大探検部出身の著者が、数少ない秘境として政治的に入れないゴールデントライアングルの80%のアヘンを産出するというビルマ(またはミャンマー)のワ州に滞在し、村人といっしょにケシ畑を耕した7ヶ月間の記録。この人のルポの面白いところは、高所からの視線ではなく、一緒に過ごした人々の顔が見えること。アヘンを作る人々のごく普通の表情が垣間見えるルポはなかなかない(ついでに「非合法入国です」「アヘン中毒になりました」とはっきり言うルポも……)。ここから数年後にワ軍と対立するビルマに入国する『ミャンマーの柳生一族』もとても面白い。あわせて読むのをオススメします。
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なんとなく興味があって読んでみました。
中国との国境にあるアヘン栽培地域ゴールデントライアングル。その一つであるワ州で著者自身のアヘン栽培を体験レポート。
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タイ・ラオス・ミャンマー(ビルマ)の国境近く、ゴールデン・トライアングルと呼ばれる麻薬地帯、ワ州という地域に七ヶ月間滞在し村人とともにケシを植え草取りをし収穫をしアヘンを吸って直に体験したことを元にした旅行記(と言い切っていいかちょっと微妙ですが)。
タイトルとかアヘン中毒になったとか、作者来歴(早稲田大学探検部OB)だけ見ると突飛とか無謀とかセンセーショナルとかのイメージですが、読んでみると地道で真正直で泥臭く暖かい内容でした。面白かったです。
ワ州に入るまでの経緯が書いてある章にありましたが、大上段に構えたいわゆる世界情勢的な考察ではなくてそこに暮らす人たちが何を思って毎日過ごしているのかという、生活レベルでのことが知りたかったという高野さんの言葉の通り、べき論とか良い悪いとか日本と比べてどうとかいう切り口で勝手なことが語られるということは一切なく、ありのままの当事者の世界観価値観生活観をつかみたいそれに近づきたい、というような、そういう感じでした。毎日あちこちと違う家族のケシ畑の手伝いをするのはいろんな人と仲良くなりたいというのだけでなく、自分は素人だから迷惑がかかるだろうからそれをひとところに集中させては悪いぞ、という気配りもあったりして、行動は大胆で突飛だけれど、考えていることは真っ当でごく当たり前のことだし、すごく正直に(アヘン中毒になっちゃったことも含め)そのまま書かれている(と感じられる)ので、高野秀行さんというこの作者に対して、好感を持ちました。
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旅行記が好きだが、潜入記なんてそれを上回るワクワク感があるじゃありませんか。そしてその期待を裏切らない内容でした。文章もツボにはまり、色んな箇所で吹き出しました。
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高野さんの王国潜入記。
というか、これは近代国家とは?って本になっていると
自分は思います。
文明って、何だろう?と自分に問いかけたくなる。
そんなテーマを自然に読む人に思い出させる良作です。
あ、気軽な辺境の生活も書いてるので、そんなに
おも〜い作品でもありませんよ。お勧めです。
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私は旅の本が大好きだが、これは単なる旅の本ではなかった。社会学的、文化人類学的考察がふんだんにおりこまれていて、とても面白い。ミャンマーに興味のある人はもちろん、社会学や人類学などに興味のある人にも大変興味のある内容だと思う。きちんと調べ込まれてまとめられているので、この本をきっかけに関連書を読みたくなる。
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ビルマの中に在りながらビルマでない反政府ゲリラ・ワ軍の統括地、ワ州。そこで暮らす人々はビルマ語を解さず、ビルマを知らない。文化的にはむしろ中国圏だけど国境が領地を分かつ。その宙に浮いたような土地の主産業がアヘンである。著者はお国の事情をいろんな角度から紹介しながらとある村で約半年をかけてアヘンの種まきから収穫までを体験する。
題材的にジャーナリスティックな側面が強くシリアスな記述も多いけどなによりまず冒険家としての著者の姿勢に読まされる。登場人物すべて生きた人間として描かれ、またそいうスタンスだからこそ現地でアヘン中毒にもなる。こういうエンターテイメントを読むようなルポというのはそう滅多にないのではないか。
周辺地域の事情に精通している著者だからこその意外な発見というのに読みながら引きつけられる。誰もやったことのない無茶に挑むことがすでにおもしろいことだけど、幅広い知識に裏打ちされていてなおかつ自身に律する信条があって初めて信頼に足る作家になるのだなということをあらためて感じた。
現在ワ州のケシ畑は一掃され日本のODAでソバ畑になっているらしい。ムイレ村の人々のその後が気になる。
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《ゴールデントライアングル-黄金の三角地帯》と呼ばれる東南アジアの麻薬地帯。そこでは普通の農業の感覚でケシの実(アヘン・ヘロイン等麻薬の原材料)が栽培されている。外界から完全に遮断されたミャンマーはワ州に滞在した著者7ヶ月のレポート。学術的にも大変評価されている。とはいっても、そこは高野氏。”アヘン、モルヒネ計画”で、オーなるほど!と膝を打たせ”自らアヘン中毒に落ちぶれる”で、なんじゃそりゃ!とツッコませてくれる。現地に溶け込んだレポートは著者ならでは。
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UMAを追っかけてどんな秘境にも行ったり、
アヘンを育てに秘境に行ったり、、、、
日本にはこんな凄い人がいます。
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高野秀行という作家を知った一冊。
大学のゼミ研究資料を漁ってたときに釣れた。
ミイラ取りがミイラになっちゃうとこ、それをおもしろく書いちゃうとこ。
この人の魅力は辺境で無茶したり、さばけた語り口調だけじゃなく、
いちばんはフラットな熱過ぎない愛のある目線、だと思うんです。
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心苦しいせつなさが最後に残った。
政治的押し付けがなく、著者でなければ書けなかったろう語り口は、だからといって疎かになっておらず、不思議な魅力がある。