縛る音、傷つける音、結ぶ音
2015/09/17 15:11
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
加賀智也は、子どもの頃、当時は売れないピアニストだった父の西崎賢吾から絶対音感を身につけるための厳しい訓練をさせられ、大人になった今でも440Hzの音が識別できる。しかし、その厳しい訓練の成果はそれだけだ。
ピアノを捨て、家を出て母の咲枝の旧姓を名乗り、それでも今もなお、シャコンヌの演奏家として伝説となった西崎賢吾の呪縛に、彼の死後も捕らわれている。
そんな彼が生業のよろず屋の仕事で小学生の尚平の世話をしていたところ、チンピラ風の若者の英治に因縁をつけられる。彼の聴いていた音楽と、尚平の吹いていた音のずれたリコーダーが不協和音を起こし、気持ちが悪かったらしい。その縁で、人妻に手を出して追われ、行き場をなくしていた英治を智也は居候させることになってしまった。
見かけとは違って真面目な英治を、常連の三線の師匠サワ子や、ガムランの生演奏があるインドネシア料理店オーナーのハムサも気に入り、順調に仕事をこなしていたところ、英治が女子高生の雨宮奏恵を拾ってきた。
超有名な有瀬音楽学校高等部主席入学だという雨宮奏恵は、最近、講師から演奏に心が込められていないと指摘され、スランプに陥っているという。ラベリング可能な絶対音感の持ち主である奏恵には、どんな音楽も音符の連なりでしかなく、これまで一度も音楽で感動したことがないらしい。そんな彼女に講師が参考資料として渡したのが、西崎賢吾の最後のシャコンヌ演奏の生音源だったのだ。
自分が西崎賢吾の息子であると言うことを隠したまま、彼女の依頼に応えるべく、様々な音楽を聴かせに連れ歩く智也だったが、その嘘も、西崎賢吾のマネージャーであった由果が智也を訪ねてきたことで、壊れてしまうのだった。
音楽を押しつけられたために音楽を、そしてそれをなした父親を嫌い、音楽とは別の道に進んだ青年と、同じように音楽を子どもの頃から親しみ神童と呼ばれた少女が突き当たった壁。そして、良すぎる耳を持つがゆえに社会をドロップアウトせざるを得なかった青年が出会い、音楽に巣くわれるまでを描いている。
奏恵のキャラ像がもっと確かなものとして確立していたら、もっと魅力的な作品になっていたかも知れない。女子が空回りというのは、鈍感系ラブコメでもなければ許されない気がする。
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本や映画、ドラマなどで感動することはたくさんあります。
だけど、どんなに心に沁みても、目が潤んでも、喉の奥がキュってなっても、涙が流れずに終わってしまう作品が多いです。
ですが、この本はクライマックス前には涙かポロポロと流れ出すほど、感動する物語でした。
1つの曲が、登場人物たちの固まってしまった心や止まってしまった時間をもう一度動かします。
感動の涙の訳が、人間模様なのか、音楽の描写なのか、互いの心が繋がっていく為なのかは分かりません。それ以外かもしれません。もしかしたら全部かもしれません。
色んな想いが生まれてくる、とても良い物語だと思います。
*
普段聴く音楽は、POPやロック、ジャズが多くて、
“クラシックは聞いてみたいけど取っ掛かりが…”というような感じでした。
この本を読んだあと、「シャコンヌ」と言う曲を聴いてみました。
小学校や中学校の音楽の授業ぶりに、しっかりとクラシックを聞いた気がします。
“クラシックっていいなぁ”って、今まで無かった感想がもてました。こんな思いが湧いたことに、とても驚きました。
この本は、物語の中で感動したり新しい世界を見たりするだけではなくて、本の枠を超えて、新しい感動に出会うチャンスをくれる作品だと思います。
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「音」をテーマに紡がれる物語。ミステリやサスペンスとかのハラハラドキドキはないけれど、最初から最後まで面白いと思った作品。たまに笑ってしまう場面もあったしw
同作者の他の作品も読んでみたいと思います^^
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偉大なピアニストだった亡き父を未だに憎む智也に遺されたのは、440HzのAというたったひとつの音を聴きとる絶対音感だった。今は音楽から離れ細々と便利屋を営んでいる彼の元へ、ある日突然野良犬のごとく転がり込んできた英治は、ワケアリの過去を持つ一文無し。そんな彼らの所に、音楽学校首席の女子高生・奏恵からとんでもない依頼が舞い込んだ。 「私を、音楽で感動させてください」 優れた絶対音感を持つ彼女から高飛車に告げられた不可思議な依頼に巻き込まれ、音楽に翻弄される彼らが奏でるそれぞれの“音”物語。
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あらすじに惹かれて買った一冊
途中までは、登場人物のやりとりが軽快だし、どのキャラがいいなくらいにしか思ってなくて、遂には一回読めば満足かもとまで思ってた
でも、ガムランの演奏を聴いたシーンからちょっと印象が変わった
ガムランにせ、沖縄民謡にせ、最後のシャコンヌにせ、音は一切聞こえてこないし、曲を知らないから聞こえてくるはずもないのに、文章だけで感じるものがあって、一気に惹き付けられてしまった
全体的にテンポもいいし、それぞれが音楽を通じて、価値観・世界観が変わったり、成長したりしてるのも結構好き ラストも思わずうるうるしたし
でも、最後の展開は、一部不満
無事に智也の誤解は解け、お父さんと少しは心が通ったみたいでよかったけど、誤解されるような行動をとった三人がね・・・
敢えて言わない言葉ってあると思う でも、彼らは言わないとダメなことを心に閉まっちゃってたからね・・・
智也が苦しんでるの知っててなお、だから質が悪い
ピアノは少ししかやったことないし、クラシックは管弦学部で少し触れただけだから、知識なんて全然ないけど、楽しめたと思う
明日にでも、シャコンヌを聴いてみようと思う
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途中までは面白かったのですが、
終盤の展開が「イイ話」すぎて肌に合いませんでした。
親子愛や感動モノが好きな方は楽しめるのかも。
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最初は、あまりだと思ったが最後は感動。
お父さんのインタビューが印象的。
最愛の妻と息子へ。
すこし、音楽について学べてよかった。特に、ベーゼンドルファー。
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音楽ネタ小説ということでタイトルだけで入手。またも中高生向けと思いきや・・・・そうではあったが面白かった。展開が読める、オーソドックスという意味では若干物足りないところもあったが、まずモチーフとなるバッハ・ブゾーニのシャコンヌという曲を知っていたことが大きかった。この曲でこの小説になるのかという思いとともに読み進んでいった。知ってただけに、いつもの感想になってしまうのだが、マニアックさが追加されればよりよかった。
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毒舌お嬢様が肌に合いませんでした。
ピアノ描写もほとんど出てこず、最後に現れたのはベタな展開。感動する方もいるのでしょうが私には薄っぺらに感じられ終盤白けてしまいました。期待していただけに、残念。
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半分以降流し読み
デビュー作の題名が気になっていたので読んでみたが
これはレーベル違いかな
折角年齢をバラけさせたキャラ達だったのにあまり意味もなく…
シャコンヌも聴いてみたが、良さが理解できないおいらにはそもそもジャンル違いだったのだろう
周りが無駄に隠すせいで無駄にすれ違う展開は苦手な
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久しぶりに家族の擦れ違い話を読みました。
淡々と読んで行って、オチはわかっていましたが、やっぱりこういう系は弱いです。
泣いてしまいました(笑)
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なんか、感動したーっ!
そもそも音楽系や成長モノが好きなのもあるけど、この作品はトップかもー
すべてきれいに進むし、物語としても素敵。何度も読みたくなる…永久保存版だ。
やっぱりきれいに気持ちよく終わるのが一番だねー
ベーゼンドルファー・インペリアル…カッコイイ!!!
シャコンヌ、今から聞きます!
とにかく、最高でした(*´ω`*)
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H25*03*10*Sun 読了
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根本にあるのは父と息子の親子物語でそれを取り巻く環境が面白かった。
--あらすじ--
サクラの音がきこえる あるピアニストが遺した、パルティータ第二番ニ短調シャコンヌ
偉大なピアニストだむた亡き父を未だに憎む智也には、440HzのAというたったひとつの音を聴きとる絶対音感がある。今は音楽から離れ細々と便利屋を営んでいる彼と、そこへ突然転がり込んできた居候の英治。そんな彼らのもとへ音楽学校首席の奏恵からとんでもない依頼が舞い込んだ。
「私を、音楽で感動させてくださいーー」
優れた絶対音感を持つ女子高生から高飛車で不思議な依頼に巻き込まれ、音楽に翻弄される彼らが奏でる、それぞれの''音''物語。
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奏恵の横暴さもなかなかに面白いし、
英治の優しさも素敵なところ。
個人的には智也と奏恵の掛け合いの場面が一番好きです。
でも とってもベッタベタな終わり方で少し落胆した。
こんな感じなんだろうな〜って思って読んでいたのが本当に当たっちゃってびっくらこいたー!
奏恵が感動した理由とか英治がなんでそんなことになったのか、
練習室が開かない理由とか。
気になる人は中古屋で買っていいくらいだと思う。
キャラクターは面白かったけども。
End.
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あとがきではそれほど音楽に詳しくないようなことを書いていたが、どうしてなかなか音楽が流れるシーンは緊張感や躍動感があってよかったです。
登場人物のキャラクターはメディアワークスらしい若者向けの設定なので、将来はもう少し落ち着きのある作品を書いて欲しい。
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物語を構成するために必要な要素を効率良く揃えすぎです。つまり、嘘くさい。浅い。薄っぺらい。
ベーゼンドルファー・インペリアルの話がしたかった(らしい)ですが、そういう話にはなっていません。このお話のテーマは、明らかに、親と子の思いのすれ違いで、だから、それが解消されてエンディングです。非常識なくらいに高慢なお嬢様が、なんとなくデレて来ますが、基本テーマに絡んでこない。彼女自身にも同じテーマが内在されているのに、描写されないで、主人公とのいちゃいちゃ(これは嫌味で言ってるので、ツンデレラブコメと誤解しないように)するだけを表面に出して、重要であると思われる部分は、背景においてサラッと流しちゃうし。もったいない。極めて遺憾であります。
なので、もちろん、手摺りがちょうどAの音で鳴った(440Hzっていうのもひっかかるんだよなぁ。ちょうど440であるべきなんて規範はないし、現に様々な演奏が違ってる)ことは、作者的には主人公の心情をシンボライズしたつもありかも知れないが、オレは、気温上昇にともなって振動数が変化しただけだよとか言っちゃうぞ。