紙の本
中村氏にしては…
2016/01/10 01:37
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
猟奇殺人事件の被告に面会したライターが、次第に事件の異様さにのめりこんでいく。といって、ミステリの枠にはめてよいものか。だとするとー異常性格者の描写が、もう一つ、しっくりこない。被告の姉を始め、登場人物のキャラクターが薄いからか。もう少しじっくり書き込むべきではなかったかと残念な気持ち。芥川賞を獲った「土の中の子供」や「掏摸」に比べると、劣る気がしてならない。
紙の本
驚愕と戦慄に満ちた作品。
2015/09/15 15:09
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
怖い「仕掛け」が施されている。女二人を殺した死刑囚に、ライターが話を聞いて…という話かと思いきや、後半にどんでん返しがある。その内容についてはふれないが、驚きのどんでん返しだ。しかしそれはミステリのように語られるのではなく、あくまで人間の内省という形で行われる。ライターの体験によって徐々に迫るところと、編集者の用意した「資料」と。その「資料」には彼の独白も含む。複雑すぎて、ぱっとはわからないような構造だけれど、それだけにわかった時は背筋がぞっとするようなインパクトがある。狂気がじわじわと浸食してくるような、それでいて純粋な愛情や憎しみ、悲しみといった人間の剥き出しの感情が迫ってくるような作品。
タイトルも、うまい。読み進めるうちにわかるが、この作品のベクトルがどこに向いているか、それをはっきり表しつつ、強烈な印象を与える題名だと思う。
一般的な犯罪小説ともミステリともちがう。そもそも眼目は殺人ではないのだと思う。殺人に至るプロセス、精神状況、狂気に染まった人々に意識は向けられている。そうしてライターは彼らのことを書こうとする、でも書ききれない。なぜなら彼は普通の精神の持ち主だから。
極めて印象的で、興味深い作品だった。
紙の本
文体、トリックともに優
2013/10/27 12:18
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投稿者:しゅうのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
純文学で名をあげた作者のミステリー小説
その密度の濃さは多少薄れてはいるものの、文章のなかにある薄暗さ、暗鬱さはそのまま
単純に推理小説としても仕掛けが上質です
もちろんトリックはここに書けませんが、おそらく読後に、冒頭を再読せずにはいられないでしょう
紙の本
『僕』は『きみ』と別れどうなったのか。そして『僕』とは誰なのか。
2016/12/09 15:30
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投稿者:mino - この投稿者のレビュー一覧を見る
「去年の冬、きみと別れ、僕は…」
読み終えて明らかになる真実。
『僕』は『きみ』と別れどうなったのか
そして『僕』とは誰なのか。
憂鬱で狂気に満ちた、中村さんらしい作品でした。おもしろかった。
実写化したらどんな作品になるだろう、さぞや憂鬱で陰気な映画になるだろうな…なんて考えていたら(褒めてます)終盤に物語の仕掛けを理解して驚かされました。
これは小説として存在していることに意味がある作品でした。映画化は難しいだろうな。
あらすじについて多くを語ることはできませんが、物語はある死刑囚と、ある記者の面会の場面から始まります。記者は死刑囚と事件について本を作成するため、取材の過程で加害者の姉に接触します。
人を駄目にすることで自らも駄目にしようとする彼女は、やがて記者を驚くべき真実へと導いて行きます…。
ヘビーな内容ではありますが、基本的に登場人物の独白で展開していくため読みやすいと思います。とてもよくできた作品です。ご堪能下さい。
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亡くなった恋人への復讐のため、化物と化した男の物語。女性2人が焼け死ぬという残虐な事件真相が被疑者や関係者への取材という形で明らかになる。しかし、最後に大どんでん返し。ページをめくり返すことになる。
善悪を超越した悪の存在といえば、『掏り』に登場する木崎を思い出す。彼は悪にすっかり毒されていたようなイメージだったか、今回は図らずもその世界に足を踏み入れなければならなくなった男の悲哀めいたものを感じた。
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狂気にからめとられる一読目。突き動かされるようにすぐに再読、そして二読目のページをめくり終えたとき、そこに全く別の物語が現れていたことに愕然とする。
うかうかと魅惑的な狂気に耽溺していると足元をすくわれる、そんな小説。
欲望から狂気へ、そしてそこから生み出された新しい何か。足を踏み込んではいけない世界、もっと見たい、その世界をもっと見たい、そう思うのはすでにその世界に染まっているからか。
作者が仕込んだ罠にまんまとはまる快感に身もだえした。
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内容紹介
『掏摸(スリ)』で話題沸騰の中村文則、
2013年唯一の書き下ろし小説!
「僕はあなたについての本を書くと決めたのです」
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。事件の全貌及び被告の素顔をあぶり出し、ノンフィクション作品として刊行することを出版社から依頼されたからだ。
被告の職業はカメラマン。その才能は海外からも高く評価されるほどのものだが、被写体への異常なまでの執着が乗り移ったかのような彼の写真は、見る物の心をざわつかせた。
彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けている。だが、何かがおかしい。調べを進めるほど、事件への違和感は強まる。そして、関係者たちの精神的な歪みが「僕」をのみ込んでいく。
彼は一体なぜ、女たちを殺したのか? それは本当に殺人だったのか?
何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、事件は混迷の度合いを深めていく。
事件の真相に分け入った時に見えてきたもの、それは――?
日本のみならず世界がその動向に注目する中村文則氏、渾身の書き下ろし小説!
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うむむ、誰が誰について語ってるのか混乱して、途中休憩してしまった。
再読したらわかるかもしれないけれど、体力に余裕のある時にしよう…
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中村氏の悪のその先が知りたくて、ついつい新刊購入。本作と並行して「凶悪」を読んでいたので、今自分は悪に染まっています。
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一言で言えば、「模倣」というテーマを、作品内でも、メタレベルでも追求した作品。
読み終わったあと、気持ち悪さにテンションが上がるほど。もう一度読み返したいと思いつつ、その勇気が出ないでいる。
ミステリは苦手なので、お好きな方から見ると破綻など気になる点はあるのかもしれないが、破綻も含めてこの作品が表現したかったことだと思ってしまうのは、いささか作者に傾倒しすぎているだろうか。
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読後の感想としては、少々寂しいような、不満足感、「無理」。
死刑囚雄大にむしろ同情してしまうのは、作者の策略にはまってしまったのだろうか。
雄大の素直な性格、不足しているものへの焦燥はなんとかわかるような気がした。
死刑囚の姉は、結局どんな人間だったのだろうか?語られきらない彼女にもっと深く入り込んだ欲しかった。
距離感を出したいということだったのだろうか?
登場人物それぞれが、今少し、描かれてもよかったのではないだろうか?
姉の元交際相手であった弁護士の心情であるとか、栗原百合子の心情(きわめてあっさりと描かれているけれど、本来彼女の存在はかなりこの小説において重要な位置にあると思うんだけれど。)は、もう少ししっかりと描きこまれていたらと思う。
吉本亜希子しかり、人形師鈴木しかり、鈴木のもとにいた女性しかり。
語り手のフリーライターしかり。
もしかしてそれさえも、作者の意図なんだろうか?
ところで、最後にある、イニシャルは誰のこと?
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初中村文則さん作品を読む。
なんだか期待値の高かっただけにイマイチ。
途中から一気に真相にきてオッッとは思ったけど。
そんなに好きではなかった。
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掏摸に続いて中村文則2冊目。
掏摸が、私にとってはちょっと雲をつかむ感じで・・・難しくて、
わかりそうでやっぱりわからない。でももっと他も読んでみたい。
そんなだったので、新聞の広告で見かけたこれを2冊目に選んでみた。
何冊も読んでる方のレビューを見ると「変わってしまった」的な感想が多かったけど、
私は、好きだった!掏摸で諦めなくてよかった!
バシバシ伏線を回収してくやられた感のあるミステリーじゃなくて、
逆に、どんどん迷い込んで、自分の頭の中で組み立てていったものが揺らいでしまう。
それが全然嫌じゃなかった。
そういうのが気持ち悪くなるときもあるのに、
わからなくなっていくのが心地いい感じだった。
でも怖い。でもそれも好きだった。
よし、また次も読んでみよう。
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王様のブランチでの紹介が素敵で思わずその日のうちに買ってその日のうちに読んでしまった。久しぶりのミステリーだったけど、文章がシンプルでとても読みやすい。あれ?どういうこと?ってそわそわするのがミステリーの面白さだなあと思った。
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以前テレビで紹介されてるのを見て、気になっていた作品。雰囲気は好き。内容としては、もうちょっと書き込んでくれても良かったかも。出だしが良かった分しりすぼみに感じてしまった。