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仇討ちから天下の騒乱へ、外様大名対旗本の対立を描く力作
2006/06/25 21:00
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊賀上野を訪れると、大抵の観光客は伊賀上野城の西にある鍵屋の辻へ行く。今は石の碑が建てられているに過ぎないが、400年前の江戸時代には天下の仇討ちが行われた場所として名高い。そういう私もここを訪れたことがあるが、そのときには鍵屋の辻での仇討ちと言われても何のことだか分からなかった。
発端は江戸で旗本の身内に生じた刃傷沙汰であった。加害者が逃亡したところ、たまたま通りがかった備前池田藩の行列に助けを願い出た。仇討ちの元凶は、池田家がそれを匿ったことが発端となった。ところが、数十年後に奇しくもその息子が同じような事件を起こしたが、加害者を匿ったことを恨みに持つ旗本がその息子の逃亡を援助するという、恨みがもつれ合った格好になった。
池田家には伊達家や蜂須賀家などの外様大名、一方には旗本のグループが付き、外様大名対旗本の代理戦争のような様相を呈してきた。単なる仇討ちが将軍家の家臣団内部の対立となってしまった。時の将軍は丁度二代秀忠から三代家光へ交代したときであった。家康時代からの重臣で、筆頭家老格だったのが土井利勝である。時の幕閣は事態の収拾に苦慮したが、天下騒乱となっては徳川体制の維持が困難となるために、大きな課題となったわけである。
本書のテーマは仇討ちである。肝腎の仇討ちの主役は斬られた池田家の武士の兄と、姉の亭主であった荒木又右衛門である。荒木又右衛門は幕府の剣術指南で諜報役であった柳生宗矩、十兵衛の弟子だったが、見込まれて仇討ちに参画することになった。
このように、本書の主人公は二人いる。荒木又右衛門と土井利勝である。天下騒乱の主人公は土井で、仇討ちは荒木という役割分担である。
将軍の臣として、諸大名がおり、大名ほどの石高がない家臣は旗本、御家人である。旗本も御家人も古くからの徳川家の家臣であるが、大名、とくに外様大名は関が原以降に将軍に帰順した者である。
ここに外様大名対旗本の対立の構図が見えてくる。これが本書の対象読者を増やしていると考えられる。単なる仇討ちモノでは読者も限られたものになる。私もそれだけでは読んでみる気にはならなかったろう。ところが、天下の政道を揺るがす争いになる可能性があるというこの時代の特徴を捉えて、老中や幕閣を登場させたところで面白さが出てきた。
その他にも江戸幕府体制を維持していくに必要な目付の創設や、その長たる惣目付の柳生宗矩の登場など歴史的な解説もなされており、この時代に興味のなかった私も引き込まれるほどの収穫があった。
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