「わかる」ということは脳でどのようなことが起こっているのかを考察した良書です。
2016/07/28 10:50
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私たちは、毎日のように物事を考え、考察し、その解決に向けた行動を起こしています。その際、「わかった!」と感じることが何度もあるのですが、その時、私たちの脳では一体どのような反応が起こっているのでしょうか。本書は、脳の機能障害の臨床医である筆者がわかりやすく書き起こした学習と脳との関係についての入門書と言えるでしょう。多くの方々に広く読んでいただきたい良書です。
「わかる」という心の動きについて、認知科学の側面から論じた本です。
2008/07/18 15:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:緑龍館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳の機能障害の専門家であり、臨床医でもある著者が、「わかる」という心の動きについて、認知科学の側面から論じた本。高校生くらいが対象でしょうか。とても平易に書かれていますが、あつかっている内容はかなり面白いです。
「分かる」とは感情の動きであって、この原因となる心の動きが「考える」ということ。しかもこの心の動きにとって重要なのは、客観的事実ではなく「心像」(主観的現象)である、という著者の論には大きく共感できます。また、この「分かる」「考える」といった現象は、進化論的観点から見ると、(「分かった」とは、行為に移せる、という点で)知覚-運動過程の中間に挿入されたチェック機構であるとも考えることができる。この心理表象は一見知覚に近い現象に見えるけれども、実は知覚 - 運動変換を省略したものだから、運動要因が含まれている。つまり、いつでも運動に繋がる仕組みになっている。だから、心理表象とは身体的運動が省略された運動と考えられ、運動の進化した状態とみることができる、という論は、興味深いものがあります。
抜き書き
● 意味とは、とりもなおさず、わからないものをわかるようにする働きです。・・・・・ 心は多様な心像から、意味というより高い秩序(別の水準の心像)を形成するために絶えず活動しているのです。ですから、意味が分からないと、分かりたいと思うのは心の根本的な傾向です。生きるということ自体が情報収集なのです。それが意識化された水準にまで高められたのが心理現象です。意識は情報収集のための装置です。情報収集とは、結局のところ秩序を生み出すための働きです。
● ある高名な日本画家が絵の極意は対象をひたすら見ることだ、と述べていました。・・・・・ ひたすら見ることで対象がだんだん「見えてくる」というのです。よく見えれば、よく描ける、と言っています。これを少し言い換えますと、しっかりした心像が形成できれば(表象できれば)、それはそのまま運動に変換出来るということです。人間の心はそういう仕掛けになっているのです。・・・・・ 表現は心にあるイメージをなぞることです。イメージが無ければなぞりようがありません。
● 知能とは、常に変化し続ける状況に合わせ、その時にもっとも適切な行動を選び取る能力だといえます。
この著者の本は、ぼくの読んだ限りでははずれがありません。本屋さんで目に留まったら買ってくることにしています。
→緑龍館 Book of Days
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今「あーそうそう、これも参考にした!」と思い出した程度なので、あんまり直接的に資料として使えたわけじゃないけれど、全体的な持ち上げというかモチベーション再確認に役立った1冊。読みやすく、資料とか関係なく面白かった。所々にある挿絵(クラフト・エヴィングだった気がうっすらとする)もなんかよかったな。かわいくて。
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本を読むときはいつも赤ペンを持っているのだが、今までで一番真っ赤になった本。
わかるということについてすごくわかりやすかった。
また読み直したい一冊。
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20/10/28 70
わかる、の原点は後にも先にもまず、言葉の正確な意味理解です。
生命の本質はエントロピーを減少させることにあると考えることができます。
生きると言うこと自体が情報収集なのです。それが意識化された水準にまで高められたのが心理現象です。
情報収集とは結局のところ、秩序を生み出すための働きです。
知識の網の目を作るにはそれだけの勉強が必要です。近道はありません。
人間は生物です。生物の特徴は生きることです。それも自分で生き抜くことです。知識も同じで、よくわかるためには自分でわかる必要があります。自分でわからないところを見つけ、自分で分かるようにならなければなりません。自発性という色がつかないと、わかっているように見えても、借り物にすぎません。実地の役には立たないことが多いのです。
わかったことは、図にできます。
わかっているのかいないのかが分からないときには、言葉にしてみたり、図にしてみたりすればよいのです。
わかっていないところがハッキリすれは、それはとりもなおさず、分かるための第一歩となります。
わかるとはただ細部がわかることではありません。わかることの大きな意味もわかる必要があるのです。
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脳科学という部分を見ずに購入したけど、書いている事が難しい。
はじめの方は難しく読み勧めるのがつらかったけど
徐々になんとなくだが、理屈は分かってきた。
もっと平易に書かれていると思っていたので面食らった
部分もあり少し取っ付きが悪かった。
ただ、本当に「わかる」についての認識を順序だてて
理解するにはいいんだろうと思う。
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この本に関連するコラムはこちらから。
http://sonoma.ne.jp/2009/09/08/wakarutoha/
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記憶の種類
意識に呼び出しにくい記憶(心象化しにくい記憶)
手続き記憶(手やからだが覚えている記憶)
手順の記憶 ex. 文法
意識に呼び出しやすい記憶(心象化出来る記憶)
陳述性記憶
出来事の記憶
意味の記憶
①ことがらの記憶
ex.出、来、事で出来事を表す 繰り返して覚えていく
②関係の記憶
空間的関係としてのイメージ化 ex. 叔父と伯父
③変化の概念
ex. イナイイナイバー いるという概念があって成立する
モノの変化や動きは千変万化だが、我々はその全てを概念化する訳ではない。共通認識を持つ変化や動きだけを抜き出して、心象化し、その部分にだけ名前をつけている
ex. 走ると歩くの違いは、定義からではなく、自分の経験に照らしてごく自然に歩くと走るの心象を作り上げ、その心象に名をつける。定義は後からくる
我々が経験することは最初はすべて出来事として記憶される。そのうち、似たような経験が繰り返されると、重なり合う部分が出て来る。それだけでは、はっきりしたイメージにはならないけど、それに名前をつけることで、ほかのイメージと区別されるようになる。これが、意味の記憶。だから、名前のついているものはたいてい意味の記憶
出来事の記憶→類似部分の繰り返し→意味の記憶の形成
出来事の記憶→同じ出来事の繰り返し→手順の記憶
分かり方
分類する 「分ける」と分かる
説明する「筋が通る」と分かる
見当をつける 「全体像が見える」と分かる
空間関係がわかる「空間関係」で分かる
からくりがわかる 「仕組み」で分かる
規則にあえば分かる
わかるためには「わからない何か」がなくてはならない。「わからない何か」が自分の中に立ち現れるからこそ「わかろう」とする心の働きも生まれる
「まとまる」ことで分かる
「ルールを発見する」ことで分かる
「置き換える」ことで分かる
エントロピー(熱力学の概念)
エネルギーが均等になろうとする傾向=エントロピーが増大する
エネルギーは必ず放散する方向、減少する方向へ向かう
エントロピーの増大を防ぐために、生命の装置がある
生命の本質は、エントロピーを減少させることにある(物理学者エルヴィン・シュレーディンガー)エントロピー減少の法則
エントロピーの減少=秩序の増大→情報の発生
人間は意味がないと落ち着かない生物。意味とは、分からないものをわかるようにする働き。意味が分からないままでは我々の心は落ち着かない。それが生物としての自然な傾向。生きること自体が情報収集
わかる、というのは秩序を生む心の働き。秩序が生まれると、心は分かった、という信号を出す。つまり、わかったという感情。その信号が出ると、心に快感、落ち着きが生まれる
わかるためには、大量の意味記憶が必要
作業記憶 複数の心像をしばらく同時に把持する能力 ex. 円ドル換算 図、文字を使う
わかったことは行為に移せる
わかったことは応用できる ex. シェーバー掃除に電気掃除機
分かり方の2つのパターン
答えが自分の中に用意できるタイプのわかり
答えが自分の外(自然とか社会とか)にしか存在しないタイプのわかり
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もっと突っ込んだ内容を期待したので、、、、星二つ。好奇心をエントロピーの観点で語っているあたりが説得力に欠け、思いつきの域を出ていないように感じられました。
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[ 内容 ]
われわれは、どんなときに「あ、わかった」「わけがわからない」「腑に落ちた!」などと感じるのだろうか。
また「わかった」途端に快感が生じたりする。
そのとき、脳ではなにが起こっているのか―脳の高次機能障害の臨床医である著者が、自身の経験(心像・知識・記憶)を総動員して、ヒトの認識のメカニズムを、きわめて平明に解き明かす刺激的な試み。
[ 目次 ]
第1章 「わかる」ための素材
第2章 「わかる」ための手がかり―記号
第3章 「わかる」ための土台―記憶
第4章 「わかる」にもいろいろある
第5章 どんな時に「わかった」と思うのか
第6章 「わかる」ためにはなにが必要か
終章 より大きく深く「わかる」ために
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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わかるとは、言葉の記憶から始まります。そして言葉の記憶とは名前の記憶ではなく、その名前の意味の記憶です。
まだ共産主義国家ソ連がしっかりしていたころ、独裁者スターリンの娘がアメリカに亡命した。人間にはいい人と悪い人がいるだけだと語っていたのが大変印象的でした。この彼女の人間理解は広く共感を呼びました。ソ連では当時、主義的に正しい人と正しくない人が区別されていた。
わかる、というのは秩序を生む心の働きです。秩序が生まれると、心はわかった、という信号を出す。つまりわかったという感情です。その信号が出ると、心に開館、落ち着きが生まれます。
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「言葉の正確な理解が前提。
自分で考える、置き換える、図にする」
心の働きは、感情と思考
事実と心像
わかるー分かつー区別
わかるためには、自分の中にも相手と同じ心像を喚起する
言葉の正確な理解
記憶がなければわからない
筋が通るとわかる
全体を見る、視空間的知力
直感的にわかる
わかる、とは自分のものにすること、自分の言葉で表す
思考という心の営みはみかけの世界の背後にあるルールを発見する
わからないことに気付く
自発性。
分かったことは図にできる
全体を見てみよう、よーく見てみよう
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まさに、「わかる」ということが分かった。
最初は「わかる」ということがあえて説明されていて、だから?って思ったけど、
読んでいくうちに、なんのために「わかる」必要があるのか、
に話がつながってきていて実はメッセージ性の強い本だった。
前から私は理解が浅いと思っていたけど、その通りで、
もっと考えるくせをつけたいと思った。
◆印象に残ったことば
・エントロピー増大とは、エネルギーを発散して無秩序になること。
生きるということ自体が情報収集であり、エネルギーを蓄えようとしていること。
すなわち、「わかった」というのは秩序を生み出すことであり、エントロピーの減少と言える。
⇒おもしろいw
・わかるとはただ細部が分かることではない。
わかることの大きな意味(全体)もわかる必要がある。
⇒確かに。今まで暗記暗記、点数点数でやってきたけど、
全体像が見えてないかも。ただ練習して出来るようになるだけでなく、
それが何に活きるのか。何が見えるのか。
・「わかる」とは、
1知識を身につけること。
2仮説を立てて考えること。
⇒知識の網をはりめぐらすこと。
そしてわからないことに気づき、自分でわかるようにすること。
・生きるということは、自分の足で立ち、自分の足で歩くこと。
⇒自分が使えるしっかりとした知識の網を持つこと。
それがあってはじめて大きい意味、深い意味を発見することが出来る。
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「わかる」というわかっているようでわかっていないことを、さまざまな視点から解説。
「わかる」ためには、網の目のような知識が必要。経験を言語化し蓄積することによって新しい出来事に対峙した時にどこまでわからないのかわかることができる。
何らかの分類基準で目の前の現象を分類出来れば、現象が整理出来るだけでなく、心も整理される。心が整理されると、すっきりとする。「わかった」と感じることができる。
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分かるということについて、体系的に分かりやすく書かれています。当たり前といえば当たり前のことですが、それをこの本のように言葉で整理することはなかなか難しい。