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紙の本
「蕎麦屋」をまるごと楽しもう
2007/01/22 17:41
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:レム - この投稿者のレビュー一覧を見る
たかが蕎麦、されど蕎麦である。
この本は、蕎麦専門のいわゆる「おいしいお店のガイドブック」でありながら、巻頭には、砂場、更科、藪等々の由来や蕎麦に関する解説が書かれており、「蕎麦学」の知識も充実している。
ところで、かなり以前に読んだのだが、柴田練三郎の眠狂四郎シリーズは、剣豪ものでありながら江戸情緒あふれる作品なのだが、その中で蕎麦屋の場面がいくつかあった。ある物語で、江戸に出てきた田舎者が勇気を出して蕎麦屋に入り、熱燗をちびりとやりながらぼそぼそと蕎麦をすすっていたところ、江戸っ子が見かねて「熱燗は盛をすすってからだっ」と口出しするシーンがあったのを覚えている。そのとき、蕎麦の食べ方にも作法があるのだと知らされた。
かつて「蕎麦屋」は、いわば日本古来のショットバーであったが、現代の蕎麦屋は、もっと色々な小料理をゆっくり楽しめる場だ。この本で紹介されている店ごとに特徴のある料理からは、さり気なく蕎麦にまつわる風情までもが伝わってくる。なぜか蕎麦打ちをする方には哲学的な人も多いと聞くが、掲載されている店主の顔写真はどれも飾らない。一見の価値あるたたずまいもあり、蕎麦屋をまるごと楽しめる一冊だ。
巻末に217件の全国名店ガイドも付いている。こういう本を探していた。☆4つ
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