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老化の仕組みを理解すれば、今を健康に生きるヒントが見えてくる
2011/11/13 12:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
親しみやすそうな書名だが、最初の方はミトコンドリアや細胞分裂などの話題が中心だから、高校や大学の生物の講義を受けているような感じだ。途中から人間の寿命の話になって、俄然面白くなる。
生物は生きているあいだ、細胞分裂を起こす。一般に「代謝」といわれる過程を維持して、個体の生命を確保するわけだ。この分裂の回数の限界は生物によって決まっている。ヒトは約50回である。これは専門的な呼び方でヘイフリック限界という。50回分裂を繰り返すと、その細胞は死んでしまう。そこから導きだされるヒトの最大寿命は120年となる。フランスのジャンヌ・カルマンさんの122歳がそれだ。
ちなみにヘイフリック限界は、マウスで10回、ウサギで20回、ウマで30回、ガラパゴスゾウガメで100回超。これに応じて、最大寿命はマウス3年、ウサギ10年、ウマ50年、ガラパゴスゾウガメ200年となる。
なぜ限界があるかと言えば、細胞分裂のたびに染色体の末端が、少しずつ切れてしまうからだ。DNAが完全には複製されないで、その末端が徐々に失われていってしまうのだ。この末端のことをテロメアと呼ぶ。50回の分裂の果てに、テロメアはすべて消失する。そうなると細胞はみずから死んでしまう。有名な「アポトーシス」という現象だ。
アポトーシスは、がん化しそうな細胞を自死させる。またウイルス感染してしまった細胞も自死させる。こうして健康が保たれている。
「人間を含む高等動物は、細胞の中に死のプログラムを組み込むことによって、生を可能にした存在であることは確かである」(p.106) アポトーシスは逆説的なシステムなのである。
アポトーシスが機能しなくなると、細胞分裂が止まらないがん細胞が増殖していくことになる。がん細胞は短くなったテロメアをもとの長さに戻してしまうのだ。こうしてがん細胞自身は不死となる。
日本人の平均寿命は、もちろん120歳には届かない。女性で86歳程度である。事故死をのぞけば、感染症やガンなどの病気、老化によって、早い目に寿命を迎える。
著者は、老化を防ぐ方法を考察する。DNAの損傷や突然変異を抑えれば、寿命を延ばすことができる。細胞をがん化させる遺伝子の働きを抑制すること。活性酸素を取り除くこと。カロリー制限をすることなどである。
今年100歳を迎えた日野原医師は分刻みのスケジュールをこなしながら元気いっぱいである。にも関わらず、日野原氏はカロリー制限をしていることはよく知られている。元気でいるためには、おいしいものをたくさん食べるのが良さそうに思えるが、実は日野原氏の摂取カロリーはかなり少ない。
栄養バランスの気をつけながらカロリー制限をおこなって、老化を遅らせるのが、一般の人にとって、もっとも安価な寿命を延ばす方法となる。
ここからもっと進んで、さらに寿命を延ばす方法も紹介されているが、もうSFの世界のことになる。著者自身も「人体システムの改造計画」といった様相になると述べつつ紹介する。
最終章にきて著者は、1500年後の地球で、寿命伸張技術が極限にまで進んだ世界を想像してみせる。もっとも長生きする人で358歳。300歳を超える人が世界で30億人。世界人口は200億人。200歳を過ぎてから大学に再入学して新しい学問や技術を学び新しい職にチャレンジする人が出てくると。
ほとんどの病気が克服されていて、年とっても元気であるため、病苦に悩んだり人生に絶望することがなくなる。めったなことでは死ななくなるのだ。
このあたり、本職のSF作家に、本書を読んでもらって、本格的なSF作品にしてもらうとよさそうだ。
最終章までくると、書名に偽りなしということが分かる。
科学の進歩によって、ずいぶんいろいろなことが分かるようになったものだ。日本人の平均寿命はすでにかなり長いが、もっと長くなり、なおかつ病気も減る可能性がある。
お年寄りだらけになったら老害もひどくなって、社会システムを構築し直さないといけなくなるが、ともあれ元気に年老いて、ある日苦しまないでぽっくり逝くというのは、社会保障費を抑えることにもなるので、生命科学の今後の一層の進歩に期待したい。
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