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愛撫 静物 庄野潤三初期作品集 みんなのレビュー

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一般書

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みんなのレビュー2件

みんなの評価4.2

評価内訳

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紙の本

著者名を目にしてからウン十年、初めて手にしたお話は予想以上に面白いものでした。これなら他を読み直す価値は充分・・・

2007/10/19 18:35

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

装幀とはどういうものかを易しく伝えようとした番組の記録『みんなの「生きる」をデザインしよう』を読んだすぐ後に手にしたのが、小学生なら絶対に手を出さないだろう『愛撫』というタイトルの本で、そのどちらもが菊地信義のデザインになる、というのも面白いものです。ま、講談社文芸文庫はどのカバーも優しい色合いと手触りがよくて、本文の紙質も好きですが、値段が高いので小学生が手にするとも思えませんが・・・

さて、庄野潤三です。大江健三郎も、遠藤周作も吉行淳之介もとりあえず代表作くらいは読んできたのに、なぜか庄野だけは読まずに来てしまいました。書店や図書館の書架でも、いつも気にはしています。その多くが白く清楚な、かなり頁数がありそうな本を手にしては、結局、カバーだけ楽しんで棚に戻す、そうして20年以上が経ってしまいました。そして初めて手にするのがこの本です。

正直、タイトルに腰が引けました。私の中の庄野作品のイメージとは全く異なります。私にとっての庄野作品は、あくまで私小説の王道を行く、日常の濃やかな情景を描くというものだったはずなのですが、間違っていたのは私なのでしょうか。さっそくカバー後の案内に目を通してみました。

妻の小さな過去の秘密を執拗に問い質す夫と、夫の影の如き
存在になってしまった自分を心許なく思う妻。結婚三年目の
若い夫婦の心理の翳りを瑞々しく鮮烈に描いた「愛撫」。
幼い子供達との牧歌的な生活のディテールを繊細な手付きで
切り取りつつ、人生の光陰を一幅の絵に定着させた「静物」。
実質的な文壇へのデビュー作「愛撫」から、出世作「静物」
まで、庄野文学の静かなる成熟の道程を明かす秀作七篇。

とあります。そして読後の印象は、予想外のものでした。収録作品を簡単に紹介します。

・愛撫 (新文学 昭和24年):妻の小さな過去の秘密、女学校時代のSのことを執拗に問い質す出版社勤務の作家でもある夫と、夫の影の如き存在になってしまった自分を心許なく思う妻。結婚3年目の若い妻は学生時代に好意をもっていた先生のもとでヴァイオリンのレッスンを再開して・・・

・恋文 (文藝 昭和28年):小学校四年生の僕が恋したのは、友達の山本君の家に下宿している女子専門学校の生徒で、山本君の家庭教師・栗林さん。彼女への思いが嵩じた僕は・・・

・噴水 (近代文学 昭和29年):結婚五年目の私が恋していたのは、同じ職場の年下の女性。妻を顧みなくなった夫に、心痛の妻は堪え切れなくなって或る夜、自ら命を絶とうとする・・・
    以上三作、『愛撫』所収(昭和28年 新潮社刊)

・十月の葉 (文芸雑誌 昭和24年):戦前からの学校友達であった私と武波晋との友情ともなんともいえない微妙な関係は、戦後抑留から帰った彼を迎えることもなく、それでいて噂だけは・・・

・臙脂 (文学界 昭和29年):33歳の妻と32歳の夫。バアのマダムである妻が占いで告げられたのは「あなたのご主人には三月ほど前から好きな人が出来ている・・・
    以上二作、『プールサイド小景』所収(昭和30年 みすず書房刊)

・机 (群像 昭和31年):仕事がなければ、なんとなく社員が机から離れない、そんな社風の会社では、しかし、仕事で席を外しがちな人間ほど疎んじられる。そんな社風のなかで机にも事務用品にも執着をみせないIは・・・
    以上一作、『バングローバーの旅』所収(昭和32年 現代文芸社刊)

・静物 (群像 昭和35年):幼い子供達にお話をかたり聞かせる父親。子供にせがまれ釣堀に出かけ、あるいは頂きものの胡桃の話を聞き、いなくなった蓑虫を探す、そんな一家の牧歌的な生活・・・
    以上一作、『静物』所収(昭和35年 講談社刊)

です。愛撫、恋文、噴水、十月の葉、臙脂、の五作品は男女間の陰のある関係を描きます。その陰の雰囲気は決して現代の若者のものではありません。湿り気のあるネットリとした空気、木の薫り、モノトーン、まさに作品が書かれた昭和20~30年代におけるそれが読み手の心に忍び込みます。

机、静物、の二作は時代は感じますがどこか、ユーモラスです。無論、手放しというものではなくて翳りはありますが、ちょっと奇妙。私が抱く庄野のイメージに最も近いのがこの二作ですが、面白さではやはり恋愛もの、特に表題作「愛撫」が一番でしょう。乱歩あたりが喜びそうな倒錯した夫の心理は、ジワジワと心に忍び込みます。

冒頭を簡単に読み飛ばしてしまい、あとで主人公の年齢を確かめて愕然としたのが「恋文」。意外性、はそそっかしい読者だけが感じるものでしょうが、生意気な子供というのはいつの世にもいるものです。意外に楽しめたのは、最後の「静物」。劇的なところは一つもない話なのですが、ある時代の家庭の雰囲気が好きです。

ということで、私にとっては大江、遠藤、吉行などに比べはるかに楽しい読書でした。機会があれば他の作品も読みたい、そういう作家です。

本文以下、下記の構成です。
    
解説 高橋英夫
年譜 助川徳是
著書目録 

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2012/01/18 18:41

投稿元:ブクログ

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