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著者に沁みこんでいった宮沢賢治。ああ、この感覚はわかる気がします。
2011/09/27 16:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮沢賢治の作品は広く読まれている一方、謎解きに一生を捧げる研究者もいるほどの難解さもあります。著者も賢治の作品に触発されて作品を描き始め、賢治のなぞにどっぷりと捉えられてしまった一人。ちょっと前の出版ですが、こんな賢治の経験もあると読んでみて面白かったので紹介します。どんな風になにかに触発され、それを自分のエネルギーとしていくのか、の例として読んでも本書はとても面白いと思います。
山形生まれの作者が、賢治作品にはじめて共感をした中学の授業。賢治の雪景色を表現する言葉に自分も同じものを感じたと思った瞬間。著者に賢治がしみこんでいくその過程が書かれているのが前半部分です。著者の場合、同じような言葉のなまりを持ち、同じような自然を感じて育ったものだからこその共感なのかもしれません。しかし出会った作品に引き込まれていくとき、誰もが似たような感覚を味わうのではないでしょうか。
著者は猫をキャラクター化した作品を多く描いています。そのきっかけも賢治の描いた「猫の事務所」の「かま猫」だったと、本書で知りました。映画化もされた「銀河鉄道の夜」も登場人物は猫。漫画化にあたって著者が精読したからこそ見えてくるこの作品の不思議さは、最初に書いたとおり多数の研究者を生み出した部分でもあります。著者が「映像化する」ということで熟考せざるを得なかった「三角標」や「天気輪」など、気づかずにさらりと読み進んでしまった部分がなんと沢山あるのか、と驚かされました。作品を生み出すために賢治作品と格闘する著者の姿は、映画を観ていなくても十分「読ませる」内容です。
読み飛ばしても面白く読めてしまうのが賢治の作品の良さでもあります。子供時代「感想文」に「感動した」と書いたことはないでしょうか。そのとき「なんだか不思議」「気味悪い」とわからないままだった部分も、もしかしたらもう一度読み直したら違う感動をくれるかもしれません。
このエッセーを読んで、著者と同じように賢治を理解することはそんなに重要ではないのでしょう。こんな解釈もある、だけでもいいと思います。誰にでもあった、子ども時代には感じたかもしれない気持ち。「こうした素晴らしさを、なぜお前たちは平気でなくすのだ!」と、宮沢賢治は僕らに向かって何度も何度も静かな声で叫んでいる、と著者は書いています。著者はただ、「賢治のような捉え方」を大事にしたい、してほしいといいたかったのではないでしょうか。
著者はときおりイーハトーブからの通信を聞いてきたと書いています。あとがきの署名にも「イーハトーブ波受信者」とあるほど。「永久ノ未完成 コレ完成デアル P109」「心ノ中ニアル君ダケノ瞳、閉ジテハイケナイヨ。 P112」などなど。では通信はどんなときに来るのでしょうか。「それは捨てられない欲望たちを、睡り沈めたあの瞬間P116」。ああ、この感覚はわかる気がします。わたしにはせき止められたエネルギー、眠り沈めることに使ったエネルギーが新しい道を作り出して流れ始めるときの感覚と思われました。なんだか賢治自身も、同じようなときにどこからか通信が受けていたのかもしれないと考えたくなります。
こんな賢治の読み方もある。著者を通って賢治がしみこんできたようです。
『銀河鉄道の夜』の複雑さを愛する人に
2001/12/09 09:20
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物がすべて猫で描かれているアニメの『銀河鉄道の夜』を観てからというもの、ジョバンニやカンパネルラのイメージを人間の顔で思い浮かべることができなくなってしまった私なのだが、それくらい強烈で鮮明な作品世界を創造しえたますむら氏にもずっと興味を抱いていた。
専門家からは「猫嫌い」と決めつけられている賢治像を疑い、星がまったく見えない銀河鉄道からの風景を怪しみ、「三角標」「天気輪」について真剣に考察するますむら氏の姿勢は、作品と読者との橋渡しなど少しも考えず「アニメ化は賢治への冒涜」と偉そうに反対するだけが能だった専門家たちの思い上がりを一掃するに値する。『銀河鉄道の夜』の中の一場面で「ハレルヤ」と歌われていると思いこんでいた歌詞が実は「ハルレヤ」だったとわかっただけでも読んでよかった。賢治ファンならぜひ一読を!
賢治世界に遊ぶ
2001/03/04 01:49
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
「アタゴオル」のシリーズで知られるマンガ家のますむら・ひろし氏は熱狂的な賢治ファンであり、一連の宮澤作品の漫画化、アニメ映画『銀河鉄道の夜』のキャラクター設定の担当など、賢治関係の仕事も多い。本書は、そのますむら・ひろし氏の宮澤賢治体験を綴った本である。
前半、みずからの子ども時代を振り返りながらさまざまな賢治体験を追憶し、そして漫画化やアニメ化に当たってのさまざまな出来事、賢治研究家たちとのやりとりなどを語っている。あの映画や漫画の背景にはこんなことがあったのかと、ビデオを取り出してあらためて映画『銀河鉄道の夜』を観てしまったわたしである。
後半は、『銀河鉄道の夜』を深く掘り下げている。小説を読んでいる時には気にせずに通ってしまうところも、漫画化をするためにはおろそかにすることができない。するといろいろと謎の世界設定、謎の物体が出てくるのである。あの世界、「幻想第四次」の空には何があるのか? 「天気輪の柱」とは何か? 「三角標」とは何か? 映像化しようとする過程で遭遇したさまざまな謎を推理し探求するプロセスは大変興味深い。
宮澤賢治に関する本は数多く、中にはつまらないものもあるが、この本は大変面白かった。『銀河鉄道の夜』をより深く楽しむためのガイドブックともなっている。『銀河鉄道の夜』に感動した人は要チェックだ。
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