日本人の美点を知る本
2016/09/29 00:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mistta - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災を機に海外の日本礼賛報道が増えているように思える
のは、気のせいではないだろう。
だが、日本人が褒められていることは、今の日本人すべてに
当てはまるのではない。かつての日本人、でしゃばらない
控えめな物腰やわらかな態度を取る点。おもてなしの心。
本書を読むことで、本来の日本人の美しさを知り、それを
取り戻したいと思える。それが本書の教え。
禅のことが分かる
2014/06/07 23:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふとっちょパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
禅を基本に日本を考える。
投稿元:
レビューを見る
696
考えてみると、IT関連の仕事で世界に名をなした人たちは、不思議と禅に興味を持っているという共通項があるような気がします。iPhoneやipad、Macで世界を席巻しているアップル社の創業者の一人であった、故スティーブ・ジョブズが曹洞宗(禅宗)の乙川弘文師に深く師事していたことは、広く知られています。また、マイクロソフト社をつくったビル・ゲイツも、豪邸内に日本庭園をつくっていると聞いていますし、ビジネス用のソフトウエアを開発しているオラクルのCEO、ラリー・エリクソンは、京都の南禅寺の入口にある「何有荘」を買収しています。
また、ドイツの哲学者であるオイゲン・ヘリゲルはその著書『弓と禅』のなかで、西洋のアーチェリーと日本の弓道を比較し、弓道と禅との関係がいかに深いかを解き明かしています。西洋のアーチェリーは的を射てしまえばそれで終わりであるのに対して、日本の弓道は射たあともそこに心を置いて、心身ともにゆるめないものである、というのがその論旨です。これも、ピタリ禅の心に合致しますし、そこに日本人の美学もあるといえるでしょう。
しかし、「禅」をさらに昇華させ、芸術の分野にまで広げ、高みに引きあげたのは日本です。そういう意味で、日本独自の「禅」のスタイルが生まれたといえるのです。とくに、民衆の生活や価値観、美意識の形成にまで禅の影響が見られるのは日本だけです。
西洋の美に対する考え方は、基本的には「足し算」といっていいでしょう。そのときによって、技法であったり、素材であったり、加工であったりしますが、それらをどんどん足していく。たとえば陶器なら、技法を凝らしてかたちを整え、ふんだんに色の素材を使って柄を描き、さらに加工をほどこして作品をつくりあげる⋯⋯という手法をとるわけです。、日本は「引き算」。茶器などでも、いったんつくりあげたかたちから、そぎ落とし、そぎ落とし、「もう、これ以上そぎ落としたら茶器として成り立たない」というところまで「引いて」いくのです。
日本人本来の感性に禅が組み合わさったことで誕生した、日本独自の禅世界です。禅の「枯山水」は、自然の姿を借りながら、そこに禅の思想的な要素を注ぎ込のであり、非常に洗練された庭だといってよいでしょう。本書では、「禅の庭」という言い方で、枯山水も含めて話をします。
京都の庭の美しさは格別です。私が庭園デザイナーという仕事をするようになったきっかけも、子どもの頃、家族と訪れた京都で見た龍安寺、天龍寺、犬徳寺の塔頭である大仙院などの庭に衝撃を受けたことでした。「美しい、すごい!」。大袈裟ではなく頭をガツンと殴られたような気がしました。
七つの禅の美とは、「不均斉」「簡素」「枯高」「自然」「幽玄」「脱俗」「静寂」です。
禅には「不立文字、教外別伝」という言葉があります。ほんとうに大事な教えは、言葉や文字にすることはできない、心から心へ伝えるものである、という意味です。「禅の庭」もまたしかりです。