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連載時には見えなかった思想が、まとめて読むと見えてくる
2004/04/09 19:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碧岡烏兎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
週刊朝日の連載から選ばれた作品を読んでみると、ナンシーの主張は思ったよりずっと一貫している。ナンシー関の一貫した主張とは、芸とは、実像ではなく虚像であるということ。
きっと昔から、芸能人の素顔を垣間見ることを世間は喜んだのだと思う。そしてそれは今でもそうである。「素顔」とか「本音」に対する絶対的な信仰はだんだん強固になってもいる。私は、つまらない実像を垣間見ることなど、特に芸能界においてはハナクソより意味がないと思う。つまらない実像よりも心躍る虚像を、と思ってみても、すでに虚像すら消失しているような気もするが。(「水前寺清子」)
「心躍る虚像」こそ、芸能。もうそんな虚像はない。従って、虚像をより美しくしようという切磋琢磨もない。あるのは、実像と実像がぶつかるバトルだけ。芸能人は、限られたキャラをひらすら奪い合う。視聴者は、そんなバトルを延々と見せられている。
芸能界も音楽界も次々と新しい人材が入ってくるのである。でもそのぶん、だれかが「界」を去るというわけでもなく、その累積人数は膨れ上がる一方だ。急にポンと現れたり、急にいなくなったり、あるいはじわりじわりとフレームから外れていくかのような消え方をしたりという「様子」を見ていると、何かイス取りゲームをしているようでもある。取りたいイスがどれであるかはいろいろだろうが、衆人環視のなか、尻を割り込ませたり、逆にはじき飛ばされたり、というバトル真っ最中にいる人たちは、そのイス取りの様子を見せることも「芸能(最近は音楽もだが)活動」のひとつということになっているのだから、日々是決戦に精を出すわけである。(「西城秀樹」)
テレビや音楽だけではない。映画、演劇、文芸、報道、広い意味での論壇までも、最近ではイス取りゲームに見える。
何かの事件が起きる。何が起きても、誰もが我先にとコメントする。そこではコメントの中身よりも、どうコメントするか、それが他人とどう違うか、それだけが大事。
論壇の世界も、「心躍る虚像」ではなく「つまらない実像」ばかり。誰もが論壇の中で何とか居場所を確保しようとイス取りバトルに狂奔している。そういえば、お笑い芸人が多人数のゲストと丁々発止に会話をこなす「百人組手的なトーク番組」は、弁のたつジャーナリストが政治家から左右の論客までに満遍なく発言の機会をあたえる討論番組によく似ている。
ナンシーは、「降りてくる」という表現を使う。ドラマや歌のように限定された仕事だけをする芸能人が安直なトーク番組にでることや、自分が主役の番組にしか出なかった芸人が、格下の芸人が司会する番組にゲスト出演すること。こういうことは、論壇にもあてはまる。
論文や小説しか書かなかった学者や作家が、週刊誌に書いたりテレビに出るようになる。いつの間にか、専門分野や得意とした分野以外のことにもコメントするようになる。しまいには政治芸能何でも語りだす。
「語り」は、虚像ではなく実像の世界の言葉。研究もなければ準備もいらない。ところが、語っているほうは本音を吐き出すだけだから気持ちがいい。だからますます思いつきを語るようになる。
そんな誰にも聞かれることも納得されることもなかった「語り」が行き着く終着の浜辺みたいなところがあったら恐ろしい。でも、そうゆう所はなくて、「語り」のゴミたちは語った本人に戻って蓄積するのである。だから、誰も聞いちゃいなくても、語らせてはいけないのである。語った本人にだけそれは事実として積み重なり、次はもっとすごいことを語るのだ。これが増長のメカニズムかもしれない。(「神田うの」)
「増長」と聞いて思い当たる人が、芸能人以外にもたくさんいる。
烏兎の庭
雰囲気だけは面白かったテレビ番組
2024/12/29 19:51
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビを見ていて、何かしっくりこない、何か面白くない、なぜなんだろう、その答えをナンシー関さんは用意してくれていた。そうなんですよ、そこなんですよ、だからつまらなかったんだ
惜しい
2019/05/22 16:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:デ*ナダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
亡くなられたのがとても残念な作家さんの1人。
ジャーナリスティックな切口は素晴らしい。
この人にしか書けないし、替えの効かない異才であったなと思います。
合掌