紙の本
怪談が苦手な人のためのホラー風作品。
2017/05/19 23:14
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は怪談がすこぶる苦手である。
どれくらい駄目かというと、TVドラマはもってのほか、小説なんかの
不気味な扉絵も直視不能、有名怪談の名前だけでも口にすると
気になってしょうがなく、いったん頭にキーワードが浮かぶと、
鏡を覗き込まないのは当然のこと、お風呂で頭を洗う時に
目をつぶるのが嫌になるほどである。
子どもの頃は、よく洗髪をパスしたものである。
一人で寝るのはもちろん論外。
いい年になっても改善される見込みはない。
そんな小学校低学年なみの私でも、なぜだか怖い話は
気になり、そして無性に見てみたくなる時がある。
誰かこの謎を解明して欲しいものである。
それはさておき、そんな私にも読める作家さんが恒川
光太郎さんだ。怖い話を克服した気になれるので、
同じ境遇の人がいたらお薦めである。
草祭に次いで二冊目の読了である。
本の背表紙が、黒地に白抜き文字、表紙には誇らしげに
角川ホラー文庫の表記。少し暗めの装画は、私レベルでは
ほぼ許容限界である。
著者の評判を知らなかったら、開くことはないと思う。
雷の季節の終わりには、穏(オン)という架空の隠れ里を
舞台にした物語だ。農家の軒先、貧しい家と豊かな家、
古風な装束。
昔がたりから抜け出てきたような里は、草祭でも見せてくれた
恒川ワールドそのものである。
古くからの因習に縛られ、人々はひっそりと暮らしている。
穏には季節が五つある。
春夏秋冬、そして冬から春につながる神の季節である雷季。
この季節は二週間ほど続き、無数の雷が降る。
人々はほとんどが家から出ず、じっとやり過ごす。
すると雷季に古い世界が浄化され、雷が去ったあとの春が、
一年の始まりとなる。
もうひとつ、雷季には、鬼が歩き回るという言い伝えがある。
悪い子をさらっていくのである。そして穏の里からは、
雷季に本当に姿を消す人が、ぽつりぽつりといるのである。
雷季の伝説、穏という隠れ里の不思議、下界である私たちの
世界との接点などが、丁寧に描かれていく。
ホラー文庫となっているだけあり、殺人シーンもあるし、幽霊や
幻獣なども登場する。しかし、不思議と読む進めることが
できるのである。怖い描写はあっても、残忍性をあおるような
表現がないことが、最大のポイントであろう。
リアルな怖さはなく、郷愁に誘われる不可思議な物語なのである。
前半、中盤と非常に丁寧に作られているだけに、終盤の駆け足の
展開が実に惜しい。みなさんの書評と同じ評価である。
出版社からの枚数制限が厳しかったのだろうか。
だからといって、読む価値がないということではなく、高評価から少し
割り引くという程度ではある。
ホラー風作品を読めたという満足が、私には最大の魅力である。
スプラッタみたいなものが好きな人は、刺激不足かもしれないけれど。
紙の本
ホラーファンタジーにやや残虐さが
2023/05/02 08:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ作者の「夜市」や「夜行の冬」で際立っているリリカルで繊細な雰囲気がこの作品全体にも漂っている。ただ他の作品と比べるとむき出しの暴力や殺人が描かれていて、私として今ひとつしっくりこない。やはりこの作者は、長編よりは中.短編で余韻を持って話をまとめたほうが落ち着きが良いのではないかと感じた。
電子書籍
怨念が動かす並行世界へようこそ
2019/08/12 03:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ようこそ、無数の分岐と異界をつなぐ”道”が作り出す世界へ。
ここでは生者も死者も見えるものも見えないものも同列に存在しています。
道を進むも戻るも、全てあなたの選択次第です。
選択によっては不死の肉体すら得られるかも知れず、対極は鬼かも知れず。
全てはあなたの選択の結果、しかしそれがどうしても受け入れられず逆恨みして鬼になってしまったら…。
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「夜市」で角川ホラーの短編賞を受賞した方の長編小説。穏と呼ばれるいろいろな因習が絡む集落で暮らす少年の物語。かと思いきや複数の人が絡み、事態は静かに着々と進んでいく。独特の雰囲気をもつストーリーと世界観に、ぐいっと引き込まれました。ホラーがニガテな人にもオススメ。
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何故かこの人の文章は心地いい。知らない世界なのにまるで旧知のようにイメージできる不思議。ぐいぐい読めます。恩田陸なんかが好きな人はきっと好きな作家さんなのでは。
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風わいわいと主人公が好きです。
さびしくて怖くて醜くて気持ち悪いものと
美しくて清々しいもの、やさしいものが相容れてはいないのに
一体然としてます。どちらが欠けてもこの読感は出ないと思う。
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著者の描く世界が好き。
単行本でも読んだけど、文庫版の装丁の綺麗さから購入。
残酷なのに透明、やっぱり好み。
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ホラー風味のファンタジー。帯やカバー返しに書かれていた「独特の世界観」や「文体」はすばらしかった。引き込まれるものがある。なんだか、周囲の空気が息づくような。徐々に世界観が明かされていくのも素敵。
けど、やっぱり構成がどうにも良くない気がする。っていうか、微妙。
だから、基本的に主人公の一人称で物語を紡いでいくのに、そこでは手が届かないところだけ他人視点の三人称で補足するのはやめようって。それをやるならせめて視点切り替えによる効果を盛り込めばいいのに。
主人公にラスボス倒させるのに、そのラスボスは主人公に対してほとんど因縁ないじゃん。主人公の周囲には因縁がてんこ盛りだったけど。主人公とラスボス、周囲の人たちをつなぐ時間軸のギミックは面白いし、「おお」と思ったけれど結局のところ主人公とラスボスの関係性をこじつけたみたい。せっかく面白いギミック組んでるのにもったいない。救いもカタルシスも、あるのは主人公じゃなくて、その周囲だけで主人公が置いてけぼり。かといって、「その理不尽さがホラーなのである」というつくりでもない。世界観とその描写が素敵なだけに、こう、もやもやする。せめて、賢也と茜のW主人公にして、アシンメトリーがもたらす雰囲気は人称切り替えや世界のレイヤーの切り替えにしておけばよかったのになーとは、個人的に思う。
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前作よりもおどろおどろしい雰囲気。
長編だけあってストーリーも厚いかな。
うーん、おもしろいけど、個人的には前作の『風の古道』くらいほのぼのしてたほうが好き。
2作に共通して、ちょっとのどかで切ない感じが好きですね。
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文章が、美しい。
一瞬で異世界へと取り込まれる。
幻想的だけどそこはかとなく郷愁を感じる不思議な感覚はとても心地よい。
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幻想的で長い夢を見ていたような不思議な雰囲気だと感じました。
とても読みやすいし、気がついたら物語に惹きこまれてる。
この人の作品は大好きです。
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前半は穏で暮らす賢也を中心とした物語。
この世界とは違う次元にある「隠」の不思議や風習が
美しい文章で描かれていく。
ある事件をきっかけに隠を出て行く賢也。
そしてそれを助ける風わいわい。
後半は舞台がかわり急展開で物語が進んでいく。
前半とはまったく違うテンポで、
謎だったことが次々と解明されていく。
ホラーだけどそれだけでない展開。
最後はそうだったのか・・・と納得。
あっという間に
この人の独特の世界に引き込まれてしまった。
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この世界の話じゃない。けれど、有り得ないと言い切る事も出来ない。いや、あるかもしれない。
時間を前後しながら進んでいく中盤からは、前半の人物らが 絡まりながらも主人公に関わっていることが徐々に見えてきて、面白さ倍増。
前半の不可思議な世界での事をしっかり読んでおかないと 中盤からは『?』になるかも(笑)
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素晴らしい世界観。穏という異次元世界と現世(下界)を舞台に、主人公の賢也、姉のような茜、トバムネキ、そして風わいわい(風霊鳥)が織りなす話。最近話題の1Q86と似た展開形式。途中で点が線となった瞬間にさめ肌が立つほどの衝撃を受けたほど、完成された文脈。素晴らしいの一言。ただ、最後があまりにあっけなさすぎる。もう少しドロドロした、しかも強烈な印象の残る終わり方にして欲しかったなあ。
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恒川氏の作品は、第12回「ホラー大賞」を取った「夜市」がある
「夜市」が面白かったもんで、コチラの作品も手に取ってみた。
が…買ったは良いが、ズ~っと本棚の中に積まれておった(笑)
人んちの読書レビューを読んで
「この本…なんでだか知っておるの~」なんぞとボーっと考えた。
そりゃそうだ。買っただけで満足し、すっかり忘れておった作品だ(ハハハハ)
しかも「カミナリ」を「雪」と読み間違え「暑いから雪の本でも読むべ~」思ってしもうた
「グーグルアース」なんぞを見ると、ある部分だけポッカリと何も記載されていない場所がある。
上から見られちゃ困る場所なんだろうけど、見えないとなると…見たくなるのが人情である
そんな半透明地帯に「穏(オン)」がある。
日本の山奥で、結界めいた空気に守られた秘密地帯である
「穏」の中では明治初期頃の普通の生活が営まれている。
田舎の農村らしく少し変わった因習が根付いているが、それとて頭を悩ませる程ではない
ただ年に一度、えらく盛大に雷が鳴る季節が来ると、村人が何人か消えるらしい。
村の片隅で姉と二人で暮らす「賢也」は、雷の季節に姉を失う。
姉が消えてしまったその日に、賢也には「風わいわい」という憑き物がつく
雷の季節に姉を失ってしまった事、賢也には何の後ろ盾も無い事
それに加えて妙な憑き物が憑いてしまった事がバレれば、村人たちから阻害されてしまう
幼心にそう考えた賢也は、「風わいわい」のことをひたすら隠す。
村のはずれには「墓のまち」があり、墓場の入り口には「墓守」が居る。
墓守は悪しきモノが村へ入るのを防いでいると言う。
と同時に、村の住人が勝手に村の外へ出るのも防いでいるようだ
賢也は時々眠れない夜など、この墓守と話をしに行く
大人でも怖がって近寄らないような場所なのだが
賢也には「風わいわい」が憑いているせいか怖くないのだ
この頃になると、賢也は「風わいわい」と会話が出来るようになっていたが
不思議とコチラも怖くは無かった。
そんな賢也がある事件に巻き込まれて、村から出なければならない状況となる。
さて、「風わいわい」とは何なのだろうか?
なぜ、この村は外の世界から隔離されているのだろうか?
賢也の姉は? 雷が鳴る村で人が消えるのは何故か?
っと言うような内容なのだが、角川のホラー文庫から出ているわりには、怖くない(笑)
しかし、日本全国暑いの~~~~(ハハハハハハハ)
こんなに夏って暑かったかい?
昨日も昼過ぎに車で銀行へ行ったんだが、車が古いせいか、暑さが厳しいせいか
エアコンが全然効かんかった(アハハハハハ)
こんな暑い日が続くと、雷でも鳴って雨がド~~っと降らないかな~とか思ってしまう。
子供の頃も、大人になっても、雷が鳴るとチョットだけ心が躍る。
怖さのドキドキと、何かが起こりそうなワクワクと(笑)
これから雷の鳴る季節を迎えることとなるが、雷ばかりを見上��ておると…
アナタの後ろに迫る、黒い影に気が付かないかもしれん。。(アハハハハハハ)
気が付いたら違う世界に迷い込んでいた、な~んてことにならんように
雷が鳴ったら、チロっと後ろを振り返ることをオススメするだ~~(ハハハハハハ)