電子書籍
悪くはないけど
2019/01/28 00:45
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
御手洗潔シリーズの22冊目である『溺れる人魚』(2006、文庫は2011年発行)、は表題作の他『人魚兵器』、『耳の光る児』、『海と毒薬』を収録した短編集です。この中で「本格ミステリー」と言えるのは表題作のみですが、その語り口は典型的なパターンからは外れており、最初は何が謎なのか謎で、本来の事件、すなわちミュンヘン五輪で4つの金メダルを獲得した稀代の女性スウィマーがリスボンの自宅でピストル自殺を遂げ、そのほぼ同時刻、2キロ離れた自宅で彼女を無理に外科手術したリスボン大学名誉教授リカルド・コスタが射殺され、2つの命を奪ったのは同じピストルから発射された銃弾だと判明した、というミステリーに到達するまでに女性スウィマーの病状や精神外科手術の恐怖、術後の彼女の廃人ぶりなどにかなりのページ数が費やされるので、これが実は「本格ミステリー」であることに気づくのに時間がかかります。作者の自作解説を読むと、「ロボトミー殺人事件」の当事者で、チングレクトミー手術を施された桜庭章司に着想を得て、精神外科手術の問題点を作品を通して世に問うことに主眼が置かれているようです。
『人魚兵器』と『耳の光る児』は、『名車交遊録』の上下二冊の完全版を作るにあたって、原書房から刊行の条件として書き下した短編だそうです。『人魚兵器』ではこのため、ハインリッヒがスウェーデンのマルメ市からオーレスンド大橋を通ってデンマークのコペンハーゲン市に向けてポルシェの356をかっ飛ばしていきます。作者の自作解説によると、ポルシェには強制収容所のガス室を連想させるような特有の毒気があるのだそうで、その連想から話はベルリンのテンペルホフ空港の下に広がる巨大地下施設で行われたナチスによる生体実験・キメラ(人魚)製造実験に繋がっていきます。
『耳の光る児』は、紫外線を当てると耳が緑色に光る子供がクリミアやタタルスタンやウズベキスタンなどの4か所に1人ずつ生まれたというミステリーを解く話で、その過程で母親たちの背後にかつての大モンゴル帝国の栄光が浮かび上がってきます。
最後の『海と毒薬』は石岡和己が御手洗潔に宛てた手紙で、『異邦の騎士』事件で受けたトラウマを20年の時を経て克服できたことを当時行き着けていた喫茶店などを巡ることで確認できた旨の報告と、この『異邦の騎士』に救われたという読者の女性からの手紙の紹介が主な内容です。
それぞれに味わいがありますが、「御手洗潔シリーズ」と言っていいのかもう分らない感じがしないでもないです。御手洗の魅力の一つであったエキセントリックな傍若無人さは見る影もないですね。
紙の本
人魚をモチーフとした短編集
2016/08/17 15:20
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投稿者:りこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編3作品が収録されています。
短編なのでお話自体は複雑でもなく、あっさり読めます。
しかし…御手洗さんが海外に行き海外が舞台になって、正直いって読みにくくなったように感じます…生活習慣や考え方など、自分とはかけ離れてるので、お話がすんなり飲み込めません。
御手洗さんも歳をとり、初期のようなトリッキーさや傍若無人ぶりも無くなり、ただの頭の良い人になってしまった気がします。
もうシリーズものを読んでるように感じられません。
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『溺れる人魚』
ミュンヘン・オリンピック水泳で4つの金メダルを獲得したアディーノ・シルヴァ。オリンピック後コーチ・ブルーノ・ヴァレと結婚した彼女の転落。性的な興奮を抑えられないアディーノ。麻薬、暴力など問題行動も増え、ロボトミー手術に踏み切るブルーノ。彼女に間違った診断を下しのうのうと生きるコスタ教授。彼のテレビ出演ご自殺したアディーノ。同時刻同じ拳銃で射殺されたコスタ教授。ハインリッヒがたどりついた事件の真相。
『人魚兵器』
御手洗潔シリーズ
ヤン・ユックが持ち込んだ人魚のミイラと言われる置物の正体を解析した御手洗。その過程で聞いたクリミア半島にすむ老人の持つ焼けた人魚の写真の謎の真相に挑む。
『耳の光る児』
御手洗潔シリーズ
ロシア各所で発見された耳の光る子供。紫外線を当てると光る謎の耳。母親には無い共通点。「インぺリット」に隠された秘密。
『海と毒薬』
御手洗潔シリーズ
石岡君から御手洗への手紙。石岡君が出会った女性からの手紙。男に騙され転落した女性の人生。
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2011/2/15 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2023/8/31〜9/2
12年ものの積読本で2年ぶりの島田作品。
「溺れる人魚」、「人魚兵器」、「耳の光る児」、「海と毒薬」の4篇。一番ミステリっぽいのは表題作か。耳の光る児はかなり強引。まあ、島田さんらしいと言えばらしいが。
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聖アントニオの奇跡!泳ぐことさえできなくなった元天才水泳選手が自殺しその「原因」を作った医師が殺害された。しかし不可解なことに、離れた場所であったにもかかわらず、同じ時間に同じ拳銃が使われたというのだ―。
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御手洗ものの短編が4つ。
つまらなくはないけど…のめり込むほどの面白さは無いかな。
というのも、私が島田荘司をストーリーテラーだと思っているから、事項の説明が多いと物足りなく感じてしまうんだろう。
これ、もし一つ一つが中長編だったら個人的にお気に入り作品になっていたかも。
最後の短編だけはミステリーというか普通の読み物。「異邦の騎士」好きにはちょっと嬉しいかも。
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御手洗シリーズなんだけど、御手洗はあんまりでないという。。。。
四つの短編なんだけど、三篇は歴史もの?
ロボトミー、生体実験、遺伝子組み換え、モンゴル。。。。
まだまだ知らないことが多いな。
もっと勉強したい。
仕事に時間取られ過ぎだよ。
四編目の「海と毒薬」も横浜の歴史ものではあるけど、
どちらかというと石岡君ものっていった方がしっくりくる。
御手洗は魅力的なんだけど、やはり石岡君の方が好きなんだよな。
御手洗と石岡君との出会いを描いた「異邦の騎士」がキーなんだけど、
よくよく考えると、自分がミステリの方が文学よりも可能性がありそう
って思ったのも「異邦の騎士」だった気がする。
短編もいいけど、はやく御手洗、石岡コンビの長編が読みたいな。
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思えば、私が島田荘司作品と出会って早くも25年が過ぎた。「占星術殺人事件」を読んだ時の衝撃や、「異邦の騎士」を読んだ時の感動は未だ忘れることが出来ない。
本作にも、「異邦の騎士」外伝のような「海と毒薬」という作品があるが、作者も読者も過去の作品を宝物のように大切にする島田氏の世界観は、とても貴重な存在と思う。
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短編集。(最後の一遍を除き)ヨーロッパの各都市を舞台にしている。通して語られるテーマは「人魚」。
特に、タイトルになっている「溺れる人魚」が面白い。
ロボトミー手術について関心があったので、この本を買ったわけだが、この「溺れる人魚」では有名なスイマーがロボトミー手術を経て、廃人のようになってしまい、ある日自殺をするのだが、「同時」に手術を施した医者が殺されているというミステリ仕立てになっている。ミステリではあるが、ロボトミー手術についても詳しく記述してあり、非常に興味深い。
作者によるあとがき・解説によると、実際にロボトミー手術に関連して有名な事件が日本であったらしく、それがモデルになっているよう。
特徴としては、「御手洗潔」シリーズといえば、もちろん御手洗さんと石岡さんが登場しなければいけないわけだが、この本では、彼らは直接登場せず、3篇を通して主人公である記者が主体となって事件にあたっている。しかし、御手洗の影をちらちらとみせるのがうまいところ。御手洗さんが直接登場しない「御手洗潔」シリーズの一つと考えてよさそうだ。
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文章の大部分がうんちくに割かれている。その点で、好き嫌いが別れる。御手洗の登場シーンも少ない。
それなりに面白いとは思うけど、心に残るほどのインパクトは無かった。
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ミュンヘンオリンピックの美人スイマーの転落と、精神外科のロボトミーとのミステリー作品。
本当に起こったことかのように錯覚しました。
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溺れる人魚、人魚兵器、耳の光る児、海と毒薬
の4編。
異国の3都市と横浜の話。
最初の3編は、なんだか知識を学ぶことの多い話だった。
海と毒薬が好きです。