紙の本
北の文化
2020/08/19 05:32
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の文化で北からの影響を考える。交流やら衝突やらを繰り返して近代を迎え開墾が始まり原風景が失われてしまった。
紙の本
私にとっては旅行ガイドにとどまらず、北海道史の教科書でした!
2015/11/05 18:33
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いきなり昔の今東光氏との函館訪問の思い出から漫談のような紀行が始まります。旅行記を読むというような気軽な入り方ができるのですが、その実、津軽と南部の微妙な関係、函館を中心に展開されるロシアとの関係史、同地のハリストス正教会とお茶の水のニコライ大聖堂の歴史と、息つく間もなく軽快なテンポでストーリーは展開していきます。読みながら、われわれ特に関東以西に住む日本人は“外国人・外国語”と言えば 通常は“アメリカ人・英語”を想像しますが、以前に函館で博物館を訪ねた際、この地ではそれが ある時期においては“ロシア人・ロシア語”であったのではないか、と考えたことを思い出しました。
本書の内容に戻りますが、函館近辺では過去 横暴であった和人へのアイヌの反乱、その後の幕末から明治初期にかけての松前や江差のエピソードと語られ、石狩から果ては月形の樺戸監獄へと進み、北海道開拓にあたった囚人たちの命懸けの労働史へと繋がっていきます。
読み進む毎に、読んだ内容を忘れていくのが余りにも惜しく、とうとうメモを取りながら読了する羽目になりました。この本も私に取っては「歴史の教科書」でした。読了とともに書店(古書店も含む)で、今東光『お吟さま』、船戸与一『蝦夷地別件』、吉村昭『間宮林蔵』と『赤い人』を買ってしまいました。実に充実した味読期間を過ごせました。
電子書籍
北端の地で何を感じたのか
2023/06/28 21:21
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の名作紀行連作である、
「街道物」の第十五作です。
四国を訪れた前作から一転して
著者の訪問するのは北海道の地です。
高田屋嘉兵衛、ニコライ神父、
榎本武揚、関寛斎といった人々について
著者の語りが続きます。
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北端の地で感じたのは
2022/05/25 02:46
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の紀行連作である、
所謂「街道物」の第十五作です。
四国を訪れた前作から一転して
訪問地は北海道です。
著者は、高田屋嘉兵衛、ニコライ神父、
榎本武揚、関寛斎といった人々について
語ってくれます。
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司馬遼太郎は良くも悪くも日本の政体を語る作家である。特に造詣が深いのは氏の「日本史は、史料の多さからいっても、また人情が通うという点からいっても室町期からほぼ見えやすくなってくる。」という言葉通り、室町から近代大正にかけてあって、日本の政体に明確な形で組み込まれるのが遅かった沖縄や北海道といった土地への造詣は、他のそれと比べていささか薄いのではないか。この書を読むまでそう思っていた。現に、同じシリーズの沖縄編は少なくとも私にとってはシリーズの他の書にくらべて、心躍ることが少なかった。
しかし、ごめんなさい。
司馬遼太郎先生。
私が浅はかでした。
あえて旅の行程を逆さにしてまで幕末から語り起こし、締めを明治開拓期に持ってくる筆力に脱帽。
非常に興味深く、一気に読ませていただきました。
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道南の函館、松前、江差から始まり札幌、旭川へと抜けるルートをとっている。日本の歴史を考える時、稲作とは切っても切り離せない関係になる。冷涼な気候のため、北海道はこの稲作による文化の画一化から逃れ、アイヌ文化という非稲作要素を残すことになった。
著者は、奥羽や北海道にいた和人が冬の寒さをしのぐための建築様式を持たず、本土の南方建築をそのまま移植して合せてきたことにふれ、中央と均一化したがる意識がオンドルのような寒冷地用の家屋を採用することを阻んできたのではないか、と触れている。
もちろん函館の価値を初めて見出した江戸期の商人、高田屋嘉兵衛も登場する。彼が主に活躍し、拿捕されて囚われの身となっていたロシア船の船長ゴローニンを解放したが、ゴローニンが記した「日本幽囚記」を読んで来日したのが、東京駿河台にニコライ堂を建てたのがロシア正教の大主教ニコライである。
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前にDVDで『北の零年』を見ていて、ストーリーはともかく移民たちの住居が本州のそれと変わらないので、
「そんなわけないやろぉ」と見てました。
特に、役柄は忘れましたが香川照之さんの屋敷は江戸の旗本のようでした。
この本に、開拓民達が戸板一枚の家に住んで結核と肺炎で溶けるようにして死んで行った、と言ったような事が書いてあって、なるほどと妙に納得してしまいました。
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同シリーズの十津川街道ともあわせて読みたい。どんな「辺境の」場所にも人は住んでいて、どうしてもっと住みよいところへ移住しないのだろうかという疑問がいちいち湧き起ってきた。でもそれは、決して非難めいた疑問ではなくて、肯定的な、それだからこそ、というような感覚で。
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明治前後の開拓に話の中心があり、それはそれで面白かったが、あまり触れられていないアイヌの歴史に興味がわいた。
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北海道を旅行する前に読みました。
歴史のマニアックなところがわかるので好きなシリーズ。これを読んでからいくと、旅先がもっと感慨深くなる。今回の旅とは関係ないが、関寛斎がきになる!
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函館近辺、札幌、新十津川、陸別への紀行文。
関連する人物は、高田屋嘉兵衛、榎本武揚や関寛斎。
また、開陽丸、屯田兵、十津川村の開拓者等の話が語られる。
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米によって日本が同質化を強いる社会になったのを考えながらの旅。あと、自分の軍隊経験を踏まえての明治の行刑や屯田兵制度への批判
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北海道を旅する司馬さん、前半は函館松前江差を巡ります。にしても松前の土地への評価が低いなぁ。松前は確かに広い低地は無いけど広い台地があるので耕作をするつもりでなければ住みやすいところに見えるのですが。この辺り司馬さんの脳が自然と農耕民族視点で評価しているのかなとも感じます。で、後半は札幌、石狩、新十津川、旭川と来て最後が陸別、って最後に遠くまで飛びますな。なんか北海道の大きさを舐めた移動距離です。
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以下抜粋~
・当時、二千万近い人口があったとして、このことごとくに綿製品を着せるとなると、大変だった。その働きを蝦夷地の鰊漁が果たしたことなると、活況は尋常なことではない。
・長州藩は藩経済は早くからコメへの純粋依存から抜け出し、産業国家をめざしつつあった。その上、下関が当時、日本的な規模での海運と国内貿易の一中心地であったから、この藩の藩士が他藩の者より数歩すすんだ経済感覚を共有したのはむりもなかった。この感覚が、国外世界を理解する上でプラスに作業し、結果としてはコメ経済のみの幕府を倒す勢力になった。ひるがえっていえば、商人みたいで。という子母沢さんの印象は、幕末・戊辰の倒幕勢力の本質の重要な部分をすくいあげているともいえる。
・大久保政権が西南戦争で使った戦費は巨額なものになり、かれらが欧化の先鋒的なモデルにしようとしていた北海道開拓の資金がすっからかんになってしまった。
このあと、北海道開拓の方針が、黒田・ケプロン的な童話から、一変するのである。
「囚人を使いましょう。かれらが死んだ方が政府がもうかるじゃありませんか」
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司馬遼太郎さんの街道をゆくシリーズ。故郷の北海道から読む。松前藩の取り組みや住居構造などから、大陸文化ではなく稲作文化が普及しづらい大地北海道でも中央との同一化の傾向から逸脱しづらかった開拓の経緯が綴られている事が、巻末で陸別の自然に還る開拓を志した関寛斎のエピソードで終わる事に象徴されている。自然と人の営みについて考えさせられる一冊。