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【132冊目】ゲロ吐くんじゃないかと思うぐらい面白かった。イスラム思想や、"IS"の前身・成り立ちに関する事実関係を知りたいならば、池内恵先生の「イスラーム国の衝撃」が良いと思う。他方、中東を含む現代国際政治環境、そしてスンニ派v.シーア派の宗派間対立という視点からは本書も負けないと思う。また、"IS"の戦略面についても池内先生の本とは少し違う視点もあるように思う。"IS"が近代国家システムへの挑戦であるという解釈については両者に共通しています。なお、池内先生の本の参考文献リストには本書が載っていることも申し添えておく方が公平でしょう。
既存の主権国家及びそれが作り出す環境がいかに"IS"を創造したのかという本書の視点は、国際政治学で言うところのrealismに分類されるものであると思います。各国政府への批判をするのであれば、こうした視点の取り方も十分納得の行くものです。そして、だからこそ、「まずはこの地域における新たなパワーの誕生を認識」しなければならないという一文は奇異に思えます。「パワー」と言ってしまうと、realist的な理論の一貫性がなくなってしまうよ。不満といえばそれぐらいか。
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シリア→ロシア
イラク→アメリカ
その狭間で勢力を拡大するイスラム国。
内部からの証言があるわけではないが、トップのバグダディと組織成立の軌跡を解かりやすく追っている。
一定の秩序を作れていることと、欧米に受け入れられなさそうであることはフセインを彷彿とさせるけれど、さらに不安定だろうな。
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残虐なテロリスト集団のイメージが濃いISだけれど、彼らなりの理想を持っており、極めて戦略的に国家建設をしているとのこと。まるで悪党が一国一城の主人となり、法を作り、民を収めた南北朝から戦国時代みたいだけれど、まったく別のスケール。国連常任理事国間の政治的な亀裂をうまく突いて、シリアに安全拠点を置き、ネットを使って巧みにプロパガンダを広め、多くのスンニ派の若者を世界中から惹きつけている。これが本当だとしたら、いつしかアラブから北アフリカにかけての広大な国家として、正式に認めざるを得ない時がくるかも。
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今まで私たちが知っていたテロリスト集団とISISとの大きな違いが、手法ではなく、目指すものにある、ということが分かったことで、全く理解不能の殺戮集団ととらえて足踏みしていた状態から、一歩抜け出すことができたと思う。そして、残虐な行為が、彼ら固有のものではなく、これまでもあちこちで起きていて、ただ私が見過ごしていたことなのだということも気づき、恥じている。
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イスラム国が、どのような背景の元に発生したか(米ソ二極→利害多極化)、トリガーは何だったのか(米→イラク収容所の維持不可能、リリース)、資金源の変遷、統治の方法、宗教宗派の利用、戦士の募集(恐怖、暴力、ITを駆使)が非常に具体的でわかりやすく記載されている。ニュースだけではわからない事満載。
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良くも悪くもパンフレット。
短いのでしょうがないし、具体的な事象や前提となる歴史知識に触れ始めたら膨大なので、このアプローチは正解かも。
他の本を読んだら、ざっと読み返す。
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中東で勢力を拡大しているイスラム国(IS)の単なるテロ組織とは一線を画した組織的な機能性について知ることが出来る一冊。
ただ、宗教観の強くない者として、思想のためにあれ程の残虐行為に手を染める者たちの正義感については、まだ理解が出来ていない。
もう一度じっくり読みたい本である。
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この問題の一冊目として読みました。
突然現れたように見える彼らが、どうやって力を蓄えたか、そして、力を与えた者たちの構図がよくわかる一冊です。
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長年差別や屈辱に耐えてきたスンニ派の視点から見れば、イスラム国は希望である、ということについて、世の中でいかに欧米中心の見方が広まっているかを痛感する。国家を樹立する意気込みは、日本人からすると非常に驚くが、ユダヤ人がイスラエル建国を達成したように、イスラム主義者がカリフ国家を建国するのもあり得ないことではないだろう。いずれ、イスラム国の代表が、ほかの国々の代表と肩を並べて集合写真を撮る日が来るのだろうか。今は想像もできないが、資本主義、社会主義ともに生きずまりつつある中、新たな秩序を求めてイスラム国が急成長するのかもしれない。著者はイスラム国を丁寧に分析しつつも、イスラム国台頭の処方箋を特に示していないので☆は4つ。
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イスラム国の第一義的な目的は、スンニ派のムスリムにとって、ユダヤ人にとってのイスラエルとなることである。しっかりした財政基盤を持ち、決算書も作成し、都市のインフラを整備し、市場を建設、住民の心を掴む政策を実施している。
マンガでは、悪の組織=部下を冷酷に使い捨てるのが普通のところ、組織存続のためにはそれではダメだと教えてくれたヨミ。目的が何であれ、研究成果や事例やベンチマークに事欠かない、今の時代。
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ITを毛嫌いしていたタリバンと異なり、イスラム国はソーシャルメディアを活用して、リアルタイムにいろいろな情報発信を行っている。サイバー技術は中立であり、武装組織が宣伝する暴力的なメッセージを改変もしないし、誇張もしない。イスラム国のプロパガンダはプロの手でITを駆使して後世されている。高等宇教育を受けた欧米出身者が関与していることは間違いないとの指摘もある 。
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[立ち昇る「異世界」]2014年の春から夏にかけてのイラクの諸都市への進撃で、国際社会が抱える問題の筆頭に一気に躍り出た「イスラム国」。過去のテロ組織との比較や資金管理の手法などを手がかりに、この集団の来し方と行く末を考察した作品です。著者は、北欧諸国政府において対テロリズムのコンサルタントを務めた経験を持つロレッタ・ナポレオーニ。訳者は、経済系の書籍翻訳も数多くなされている村井章子。原題は、『The Islamist Phoenex: The Islamic State and the Redrawing of the Middle East』。
ただでさえ分かりづらい中東の地図の上に突如現れた感のあるこの集団に早くから目をつけていた著者だけあり、幅広い角度から「イスラム国」の特徴が明らかにされています。特に「イスラム国」がどのように資金面や統治面で自立を果たしていったのかという説明は、この組織とその問題を他の集団と区別する際に大いに参考になるのではないかと思います。
また、欧米諸国にとっては、その存在のための所与の条件となる近代国家国民システムを脅かす(もしくはそのシステムの間隙や限界を突いた)という意味で、「イスラム国」が今までとは異なる次元の問題を提示していると感じました。本レビューの執筆時もいまだに「イスラム国」をめぐる情勢はあらゆるところで展開を続けていますが、その流れを先取りするようなことも書いてありますので、中東情勢やイスラームに関する諸問題に関心がある方にはぜひオススメです。
〜宗教に彩られた過去が時間を超越し、現代的な体制という新しい衣裳をまとって立ち現れる現象は繰り返されるようである。〜
本当に難しく深刻な問題だと再確認☆5つ
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イスラム国が、暴力性残虐性を備えた集団であるということを十分に認識しつつも、その存在の、敢えて言うなら魅力に引きずり込まれれずには居られなくなる。筆者自身がそうなのだろう。
テロという行為が悪として論じられている地平は民主主義の枠内で物事を決しようとしている。フランス革命以来の、目的である自由主義に民主主義が仕える政治体制こそ最善であると考える枠組みの裡にしかない。
そこを突破する新たな思想の萌芽をイスラム国に見出せるところが、魅力を感じてしまう源なのだろう。
民主主義を超える新たな思想の可能性が提示された時、世界はどうなっていくのだろうか。それにどう対峙していくのどろうか。
イスラム国から目がはなせないと感じさせられる一冊となった。
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”タリバンの世界はコーランの教義と預言者の書物だけに基づいていたが、「イスラム国」を育んだのはグローバリゼーションと最新のテクノロジーである”と説く著者。この本を読むと欧米の政府が自身に都合の良い解釈をしようとしていることに気付く。
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巻末の池上彰の解説にもあるように、イスラム国=過激テロ国家という思い込みを修正しなければならないと改めて認識させられた。
かつてはアメリカを代表とする資本主義とソ連東欧諸国の社会主義が対極をなしていたが社会主義が退潮してから久しい。新自由主義なる強者、ひと握りの成功者の論理が罷り通る世の中でアンチ新自由主義として日本人の若者までがイスラム国に一筋の光明を求めたとしても無理からぬことなのかもしれない。そもそもイスラム国の産みの親となったのは皮肉なことに9.11テロの首謀者にでっち上げされたザルカウィという人物だったことも興味深い。欧米諸国は自身の侵略戦争を正当化するために捏造したストーリーが作り出したモンスターに復讐されているのだから。