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博覧強記の大変態、南方熊楠。その伝説の数々は今更自分の語るところではない。英語、フランス語、ドイツ語はもとよりサンスクリット語に至るまで19の言語を巧みに操り、科学雑誌『ネイチャー』に掲載された論文、記事51編は、未だ世界で最多を誇る。柳田国男をして「日本人の可能性の極限」と言わしめた大天才。無類の酒好き、女好きにして、40歳まで童貞。ついには昭和天皇に進講する際、標本をキャラメルの空き箱に入れて献上したことは、あまりにも有名。なお、そんな南方熊楠に敬愛を表して、さる水木しげるは紫綬褒章受賞の際、その時と同じ燕尾服にシルクハットの出で立ちであったという。
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水木版南方熊楠の伝記。主として留学から帰国後の歩みを描いている。熊楠は猫好きだったとのことで、猫を熊楠の相棒として登場させている。熊楠には息子と娘がいたが、いずれも子をもうけなかったのでこの破天荒な天才の血は途絶えてしまった。日本はもちろん、もしかしたら世界にとっても大損失のような気がした。
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2014 6/19(くらい?)読了。
水木しげるロードに行ったりなんだりしているうちにかなり読みたくなっていた、南方熊楠の生涯を水木しげるが描いたマンガ。
ブクログ登録し忘れていた・・・。
日本人で一番、Natureに論文書いてるんじゃないかという熊楠・・・なんだけど、水木しげるの手によるからなのか史実なのか、とんでもなくパワフルでけっこう品がない(笑)
経歴を全然把握していなかったので勉強にもなった。
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キノコに詳しい粘菌学者、という漠然としたイメージしかなかった南方熊楠。この漫画を読んでいかに破天荒でいかに人を、世界を、そして見えざるものを愛していたかよく理解できた。
息子の熊弥との壮絶なシーンで思わず涙が…
水木先生による、水木先生にしか描けなかった熊楠像。この先どの伝記を読んでもきっと水木熊楠が浮かんでしまうだろうなぁ。
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我が郷里が生んだ偉人。水木しげる氏によってすばらしく妖怪色を含んだ怪しい偉人に仕上がっていて何度読んでも面白い。
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水木しげるからの視点で描かれる南方熊楠像。猫に語らせるのがまたいい。これと言ったらとことん突き詰めていく探究心、酒好き、豪快さ、子煩悩なところなどなど人間性も、垣間見れて、その偉業さに圧倒。粘菌のことなら一直線な姿、粘菌についての文献を読むのに言語までもマスターしちゃう。本当にすごい人だ。
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漱石の猫方式で南方熊楠の日常を描く傑作。
とにかくチンポと反吐まみれ。
研究成果云々ではなく熊楠自身の人間性により曼荼羅が体感できるよう描かれている。
誠実な描き方で、しっかりと伝わってくる。
バイタリティの固まりにバイタリティを上塗りしたような超人的超人。
こういう人に限って「人が好き」なのだ。
しかし長男の狂気は、なんとも辛く苦しい心情に、こちらの胸も潰れそうだ。
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猫にいちいちほっこりした、それにしても長生きな猫ね。熊楠っていまいちなにしたかよくわからなかったけど、これ読んでもやはりよくわからなかった。
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世界に誇る民族・博物学者南方熊楠についての本です。
すでに多くの伝記が書かれていますが、熊楠が言葉を越えた神秘の存在とコンタクトをとる世界観は、漫画という表現が一番ふさわしいのかもしれません。
実際に18ヵ国語に通じていたと言われる熊楠ですが、この作品ではプラス猫語を操り、パートナーのトラ猫とのコンビが絶妙です。
天才としての姿だけではなく、家族や自然を愛し苦悩する姿や、可笑し味に焦点をあてた作品です。
ペンネーム 六
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南方熊楠がどういう人物か大まかに知れればと、書店在庫が他の熊楠関係本と比べてあったということから購入。
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この漫画好きだなぁ・・・!豪快さと繊細さをあわせ持つ熊楠と、熊楠とともに生活していく哲学する猫、猫楠のコンビは最高に魅力的。でも熊楠にも水木さんにも詳しくないけど、熊楠を通した水木論が強い漫画だったりもするのか。
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★2017年5月28日読了『猫楠 南方熊楠の生涯』水木しげる著 評価B+
高校の友人M君がFBで勧めていたのを見て、私も早速アマゾンで取り寄せて読んでみた。
名前はよく聞くものの、一体どんな人なのだか知らないまま読んだ。中が漫画ということまで思い至らず買ったのだが、水木しげる氏のほとばしるような南楠氏への思いが密に書き込まれていて、文章に負けない本に仕上がっていると思う。
それにしても、何と破天荒な巨人が日本にはいて、それを許し包み込む環境が当時の日本にはあったのか!感動的ではある。
ぜひ、関連する本も早いうちに読んでみようと思っている。
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南方熊楠は、慶応3年、和歌山に生まれた博物学者である。
博物学者とひと言で言うが、その興味は広く、民俗学や生物学、人類学、生態学とさまざまなものに渡った。記憶力は驚異的で、よそで100冊の本を読んできて、家に帰ってから書き起こすほどであったという。語学力も抜きん出ており、18ヶ国語を操った。英学術誌、Natureへの論文掲載は51本あり、単著では最多という。
これだけであれば、天才・秀才というところだが、熊楠の尋常ならざるところは、その学識だけではなかった。癇癪持ちで著しい奇行はおよそ凡人のものではなかった。一例を挙げれば自由自在に嘔吐ができ、気に入らない相手には吐瀉物を吹きかけることができたという。猥談も大好きで始終一物をぶら下げて歩くが、一方で意中の相手を目の前にするともじもじしてしまう。ある種、無邪気と言ってよく、子供がそのまま大人になったようであった。浮世離れしているというか、出世や金銭には興味がなく、自分の感覚に素直な人物であったのだろう。
そんな「怪人」を、妖怪を描かせたら右に出る者がいない水木しげるが描くのだから、濃くならないはずがない。
水木は怪人・熊楠を描く狂言回しとして、1匹の猫を配す。熊楠は実際、猫好きであったことが知られており、どんなに困窮しても、手元には常に猫がいたという。食べ物は自分がしゃぶった残りかすを猫に与え、布団代わりに猫と寝たというから恐れ入ったものである。
物語は熊楠がアメリカ・イギリスへの外遊後に和歌山に戻ったところから始まる。熊楠は野良猫を飼い、これを「猫楠」と名付ける。実は猫語も操れる熊楠は、それまでの体験を語って聞かせたり、研究に伴ったりする。猫はこの後、熊楠の半生をじっくり見ていくことになる。
熊楠が熱心に取り組んだ粘菌の話もあれば、自身の結婚にまつわる逸話もある。遠野物語のように、妖しのものとのエピソードもある。大小さまざまな事件に熊楠が奮闘する様を、猫楠と仲間の猫たちがゆるりと見守る。猫であるだけに、必要以上に熱くなったり立ち入ったりしない。暑苦しくはないが、さりとて無関心でもない、「猫目線」の距離感が、熊楠ほどの大変人を扱うには、意外にちょうどよいのかもしれない。
全般にこの人は、常人とは違う透徹した目で周囲を見ていたように思われる。同じ世界にいても、他の人と見えるものがまったく違う。それはさながら、ユクスキュルの『生物から見た世界』で、種の違うもの同士がまったく違うものを見ているかのようだ。
晩年、熊楠は昭和天皇に粘菌に関して進講をする栄誉に浴する。それは大きな喜びであったが、一方で、その数年前には、かわいがってきた長男の発狂というショッキングな事件もあった。
粘菌だけでなく、植物や菌類の標本も数多く、熊野の自然を愛し、時代に先駆けて森を守る運動に奔走した。
孫文や柳田国男、ディキンズ(『方丈記』の英訳者)など、多彩な人物との交流もあった。
よく笑い、よく怒り、よく学んだ、密度の濃い一生。
熊楠という複雑な巨人を知るには恰好の1冊だろう。
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水木先生は、信者ぢゃないやお弟子から、南方熊楠と比較されてきたが、なのでまえ「ざっくり熊楠伝」はあったのだが、これは南方大先生が紀州へ引きこもってから、謎のぬこの目を通して彼は幸福だったかを説く。
息子さんが発狂したり隣家と抗争したり、いろいろあった様を書くが、幸福であるかはうにゃうにゃ。
これ読んだ後、南方熊楠全集読んでたら、「フマキラー」が出てきた。あああ、フマキラーだ。
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本書の主人公、粘菌の研究でイグノーベル賞を受賞していたらしい事実を知ったのは2年前。それも英語のリーディングの勉強をしてる最中でした。そこで南方熊楠という人物も知りました。
彼について関心がなくならず、Wikipediaなんかを眺めてるとどこか共感を抱いていました。
本書は、あまり業績については触れず(くわしくは巻末の参考文献にあたってネという感じ)、人間熊楠の生涯を描いています。
奇抜な、あまりに飛び抜けた幼少期も、テスト対策に励む同級生をバカにしてとうとう退学した東大時代も、単身渡米しアメリカ大学に入学するも周りの学生の意欲のなさにげんなりして退学したことも書かれていません。
ストーリーは帰国後からのスタートとなります。
ところで、水木しげる先生はその前にも神秘家列伝シリーズで熊楠を扱っていたのでさぞかしお気に入りだったのかもしれません。
なにせ熊楠は超人的な脳力を持つのに、助平で、「少年の心」を持っていて、癇癪持ちでキレるとゲロを吐きつけて、裏表もなく、定職にはつかず自分の楽しみのために没頭する、明らかに人間社会から逸脱した人物でしたから、ひときわ目を引いたのでしょう。
熊楠の生涯を追っていくと、逸脱したようでいて人間くささを感じさせます(ちょっとヘンですよね)。
1匹の猫が熊楠の人生を見つめる仕掛けのおかげで、奇怪な人物に見える熊楠が、読者に近づいてくれたように思えました。