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紙の本
幽霊飴
2015/08/20 07:24
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「幽霊飴」という話が、京都を舞台に作品を発表し続けている花房観音のこの作品に出てくる。
その昔、飴屋に飴を買い求める女がいて、それを訝しんだその店の主がある夜、そっと女の後を追うと、墓場の中に姿を消してしまう。と、墓の中から赤ん坊の泣き声。掘り起こしてみると、赤ん坊は飴を食べて生きのびていたという話。
よく似た話は全国にあって、確か小泉八雲も書いていた。
花房が紹介しているのは、京都六波羅にあると書かれているから、おそらく「みなとや」というお店のことだろう。正式には「幽霊子育飴」という。
怪談めいているが、死んでも子どもを守ろうとした母の愛が教えとなっている。
この物語に母の愛が描かれているかといえばそうではない。
花房は「幽霊飴」の挿話のあと、この女は「子どもへの執着」が執念深くて怖いと、主人公である中学教師の樋口の同僚の女性教師に語らせている。
「子どもへの執着」は女性が持つ特別なものかもしれない。母性と書けば聞こえはいいが、執着となれば男性は身をひくだろう。
樋口にしてもそうだ。何をしてもパッとしない樋口だが、同じ教師であるまり子に積極的にアプローチされる。まり子は子どもが欲しくて、樋口と結婚する。
そういう出産願望は男性にはない。
ひたすら男性の精子を求め、出産だけを望む女性というのは、「幽霊飴」以上に怪談めいている。
樋口は事情のある教え子音葉と卒業後再会し、関係を結ぶことになる。しかし、まり子にすべてを知られ、音葉との関係は終わりを告げるが、その時音葉の胎内には新しい命が宿っていた。
音葉に関係の修復を迫る樋口に、彼女はこう答える。「もう、先生はいらんねん。必要がない。この子さえ、おってくれたらええ」。
ここでも、樋口は子どもを授ける道具に過ぎない。
子どもを産めない男性には到底わかりえない世界観かもしれない。
死んだ母親から飴をもらって生きのびた赤ん坊は成長して高僧になったと、「幽霊飴」の言い伝えは終わる。果たして、この男は女のどんな欲望を見たのだろう。
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