不謹慎かもしれないけれど、非常に面白かった
2021/05/27 20:45
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投稿者:わらび - この投稿者のレビュー一覧を見る
同著者の「津波の霊たち」から。事件当時、高校生だったはずなのだが、なぜか全く記憶にない。インターネット普及前で、テレビもあまり見ない家だったからか。まず筆者の根気強い調査と観察眼、中立たろうという姿勢に脱帽。小説風ルポでありながら、「津波の霊たち」と同様に日本文化の分析にもなっている。日本の「水商売」の独自性というのは、知識としては知っていたつもりでも、やはり海外から見ると理解不能な部分があるのだと気づかされた。
韓国・朝鮮に関する記述がちょっと‥
2015/06/28 10:05
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投稿者:mocha - この投稿者のレビュー一覧を見る
被害者の人柄、とりまく人間関係に関する記述は面白いです。
‥が、犯人の織原城二(金聖鐘)に関する記述、在日韓国人か何故日本にいるのかや韓国と日本の関係性の歴史等、偏った記述が多いです。
韓国側の言い分をそのままのせているような。
これが作者であるイギリス人の歴史観・感覚なのかな、と思うと腹立たしいです。
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[大都会の沼地に、足を取られて]「六本木でホステスとして働く元英国航空の客室乗務員のイギリス人女性が、突如謎の失踪ーー」。世紀末を控えた日本でスキャンダラスに報じられたルーシー・ブラックマン事件の内幕と関係者の心の内を探ったノンフィクション作品。一次資料や関係者の資料を基にしながら、事件に潜む数々の謎に迫った一冊です。著者は、「ザ・タイムズ」紙のアジア編集長・東京支局長を務めたリチャード・ロイド・パリー。訳者は、ときに涙しながら本書の翻訳作業を完成させたという濱野大道。原題は、『People Who Eat Darkness-The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo – and the Evil That Swallowed Her Up』。
今年読んだ本の中でも間違いなくトップクラスに入ってくる一作。加害者の闇、被害者の闇、それぞれの家族や関係者の闇、そして東京の闇……。著者の筆によりずるずると音を立てて引きずり出される漆黒の数々に、ページを繰る手が止まりませんでした。この事件のことを聞いたことがないという方を含めてぜひ一読をオススメしたいです。
20年以上に及ぶ日本における滞在歴があったからこそ書けるであろう著者の日本社会を見つめる眼差しにも感銘を受けました。絶え間ない興味や深い親近感と同時に、一歩その社会からは足を引く絶妙な間の取り方を知ることができるだけでも、本書を購入する価値があるかと。そして何より、著者のたどり着く下記の結論(それはそこだけ切り取ると奇妙に無色透明になってしまうのですが)に胸震わされました。
〜彼女は決して軽率でも愚かでもなかった。ルーシーは--安全ではあるが複雑なこの社会で--きわめて運が悪かったのだ。〜
こういう作品に会うために数々の本を読んでるんですよね☆5つ
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英国人女性ルーシー・ブラックマンが日本で殺された事件の顛末を巡るノンフィクション。ノンフィクションでありながらミステリーのような物語形式で語られる。自分自身あきれることだが、容疑者である織原の写真が出てくるまで、同じく英国人女性が千葉県市川市で殺された事件と混同していたくらい、この事件の事実を知らなかったので、本当に結末がわからないミステリーのように読むことができた。(イギリスでも、市川市の事件とルーシーの事件を混同している人が多いという記載がこの本の中にも出てくるのだが)
著者は「The Times」の東京支局長。2000年夏の事件なので15年も前になる。裁判自体も一審の結審まで6年かかっているが、著者がこの本をまとめるのにも10年以上を費やしている。それほど奇妙な事件であった、ということがこの本を読むとわかる。また、同時に著者の興味を強く引く特別な事件であったこともわかる。立場の違う人が絡み合い、いくつもの奇妙なサブストーリーが紡がれる。すでに離婚をしていたルーシーの父親と母親、家族、一緒に日本に来た友人、犯人と目される織原、多くの女性被害者、そしてルーシー自身。著者はイギリス人であるが、日本の習慣や風俗についての理解は正確だ。その情報が正確であるがゆえ、その言葉がまずは日本以外の読者に向けて発信されていることを意識すると、改めて普段は意識しない日本の特殊性ともいえる様相が浮き上がってくる。六本木という街や、クラブというシステム、そこで働くホステス。それらを日本人でない人に伝えるといった途端にそれがとても奇妙なものであるように思えてくる。また、織原が一代で莫大な資産を遺した在日韓国人の息子であったことも、彼の性癖や事件発覚後の奇異な行動にある種の色を落している。著者は、この事件を通してもっとも奇妙なこととして織原に中学高校時代を通して友人と呼べるものが皆無であったことを挙げている。彼の人生を通してあるべき親密な人間関係が存在した形跡がないというのだ。著者は残念なことに直接織原と話すことはできないままであった。もし、話す機会ができたとしたら、何が聞かれることになったのだろうか。
著者は、日本の裁判制度についても奇妙なものに連なるものとして記述しているように感じられる。起訴後の有罪率が99.85%にも上り、起訴された時点でほぼ犯人と同様に扱われることや、裁判官がそのキャリアで裁判官しか経験していないことなどの日本の裁判の課題について正確に把握し、批判している。出版後のインタビューの中で、事件が長期化した原因として一番大きな影響を与えたものは何かという一種誘導質問に対して、明確に「司法制度、裁判の仕組み」と答えている。
http://honz.jp/articles/-/41526
日本語版へのあとがきでも「警察改革が喫緊の課題」と主張している。重くとらえるべき人が、重くとらえるべき課題であろう。
織原の弁護士や探偵を使った法廷戦術や法廷外でのアピール、1億円をルーシーの父親に渡したこと、そして何よりルーシー殺害の件については無罪となったこと。それ以外の準強姦罪および準強姦致死罪により無期懲役刑となったこと。織原が逮捕された第五部以降が、この本��本題なのかもしれない。
ミステリー形式であっても事実であることを知っているので、読後などまったくさわやかな気分になれない。ただ、ストーリーとしても成立しているし、考えるべきことも多く与えてくれる本だと思う。
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作者の思想にちょっとカチンとくるけど、その他はまあまあ興味深く読んだ。ミネットウォルターズ絶賛みたいな煽りがあって、ミステリ好きだから読んだけど実際にあった事件をミステリ小説風に書くのは少し悪趣味に感じてしまった。海外では流行ってるのかな。
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2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。
犯人の情報。
犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。
父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。
駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。
一家は星山という通名を使っていた。
学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。
目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。
有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。
昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞だったので性交できなかった。
要するに30年間以上にわたり、連れ込んだ女性に睡眠薬を飲ませて、意識を失っている状態の彼女たちをレイプする行為を繰り返し続けていた本物の強姦魔。
ビデオによると女性が意識を取り戻しそうになったら、布に湿らせたクロロホルムを女性の鼻の先に差し出して、また意識を失わせた。そして何時間もレイプし続けた。
数えきれないほどのたくさんの偽名を使っていた。
70台分のプリペイド式携帯電話をまとめて購入したことがあった。
裁判ではルーシー・ブラックマンの準強姦致死罪では有罪にはできなかった。
しかしオーストラリア人女性カリタ・リッジウェイへの準強姦致死罪で有罪となった。
裁判中に自己破産。
ブラックマンの父親に1億円の「見舞金」を支払っている。出どころは不明。
リッジウェイ家にも同様に1億円。
無期懲役刑で現在、刑務所。
最後にルーシー・ブラックマンさんとカリタ・リッジウェイさんのご冥福をお祈りします。
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今や風化しつつあったこの事件を、もの凄い調査量でまとめ上げた1冊。忌まわしい事件に関するノンフィクションだから、読んでいて気分が良いものではなかったが、ここまで丁寧に調べ上げ、取材をして、作り上げた作品として、著者に対して、頭が下がる思い。
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あのルーシー・ブラックマン事件。私は家族で並んで記者会見している図を覚えていて、父親が頑張っているのだなと。
その父親の、行動力が無ければわからなかった事実、警官があれだけ動かなかっただろうし、ブレア首相まで事件解決を日本に要請することも無かったのだろう。その類まれな行動力と、一方で、到底品行方正とは言えない日本での行動、犯人の男から多額の賠償額をもらい、クルーザーを買ってしまう非倫理的といえるようなことをしつつも、第2のルーシーを作らないためのNPOを成功させてもいる。えらい複雑な人格にくらくらとしてくること必定。
裁判結審まで10年以上かかっていたとは知らなかった。
関係者全ての状況がその間に変わり、それぞれが自立と再生の道を歩んでもいる。
犯人の性癖は恐ろしいもので、発覚していないレイプ・殺人があるとしか思えない。ただそれを産んだ日本社会にも一端の責任があるのだろう。
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この事件のことは憶えている。犯人が捕まった後に聞こえてきた事件のおぞましさ。悪魔の所業に吐き気がしたが、何となく自分には関わりのない別世界の事と考えていたような気がする。
でも、本当にそうだったのか?この本を読むと
今もなお残る謎、ある意味平凡な人間が陥ってしまった闇の世界の存在にただ戦慄する。
あとがきにもあるように、イギリス人記者の丹念な取材、構成力による読み応えのあるノンフィクション。まさに「事実は小説より奇なり」日本語訳も素晴らしい。
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多義的な、なんと多義的な。
人間とか正義とか差別とか。
私の今知っているだけの世界の、banaliteの裏の複雑さよ。
そして織原の、過剰なbanaliteよ。
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余りにもミステリ小説じみていて、現実の事件だったとは思えないほど。海外ジャーナリストならではの、日本では出てこない情報や視点、優れた筆力によってグイグイ読ませる。典型的なサイコパスの言動と、彼らの犯罪に対する警察の脆弱性。在日外国人への搾取と、筆者ですら踏み込めない闇。未だ解決どころか改善も見えないこれらの問題に、読後感はずっしり重たい。
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六本木のクラブで働いていたイギリス人女性が行方不明になり、三浦半島で遺体となって発見された事件。今となっては、この程度の記憶しかなく犯人の名前すらすぐに思い出せない。
犯人は在日韓国人の織原城二。在日韓国人であることを日本のマスコミが報じたかどうかも記憶が曖昧だ。
事件は、2000年に起きているが、2007年に市橋達也がイギリス人英語教師リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した事件と混同しがちである。
本書は被害者となったルーシー・ブラックマンさんの親の生い立ちまで遡り、家族関係も綿密に取材している。犯人の織原城二についても詳細な取材をしていて日本のジャーナリズムとの違いを見せつけられた感がある。
日本の警察が組織を過剰に重視する特殊性にも言及している。日本の警察の検挙率が高いのは、警察が優秀なのではなく、日本国民のモラルが高いからとの指摘があった。確かに、前例のない犯罪に対して、日本の警察が右往左往している姿はよく見かけるし、国民のモラルが下がりつつある昨今は警察の威信も下がってきているように感じる。
日本がグローバル化するということは、警察、マスコミ、国民も国外からの視点による本書の様な考察に多く触れるということではないだろうか。
グローバルスタンダードを積極的に受け入れる必要があることを啓発してくれる良書である。
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2000年7月、東京・六本木のナイトクラブで働いていたイギリス人のルーシー・ブラックマンが行方不明となり、翌年2月に最悪の結末を迎えた。同年10月、別の複数の女性への準強制わいせつ容疑で逮捕された織原城二が容疑者として浮かび上がり、事件は収束に向かったが、織原は本事件では無罪となり、他の罪状により無期懲役刑が下された。
そんな中で、本事件の複雑さ、不明瞭さに惹かれて10余年にわたる取材を続け、本書を書き上げたのが、在日20年の「タイムズ」の記者である著者だ。本書は、事件そのものだけでなく、両親などの親族、友人、ジャーナリスト、そして警察官までを含めた膨大な人数の関係者からの証言で構成しており、ダイナミックな仕上がりとなっている。
なぜルーシーは日本で死ななければならなかったのか、そしてなぜ、織原は猟奇的な事件を起こし続けたのか。本書はそうした犯罪の背景をジャーナリスティクな手法で深堀りし、その結果、主にマスコミと警察とで描いたこの事件のストーリーに、まったく別の様相を描き出すことに成功している。
ルーシーをはじめとする被害者女性たちへのレクイエムが、本書のあらゆる行間から聞こえてくる。
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ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。
本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点について切り込んでいる。特に、被害者やその家族との長期にわたる関係は、英語を母語とする英国人記者ならではという気がする。かといって、日本人相手の取材にも不備がないのがすごい。
この事件、あるいは織原の犯罪を、日本人男性による西洋人女性に対する蛮行といった人種的ステレオタイプな一見分かりやすい説明にしてしまうことなく、深く考察されているところが秀逸。
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父親が何回も記者会見をしていた事件としか記憶していなかったし、周りの人は事件を覚えてもいなかった。風化って怖い。
イギリスの新聞の東京支局長が海外の読者に向けて、日本の水商売や日本人男性の心理などを分かりやすく解説していて、日本人の私でもなるほどと感じた。
被害者の家族が詐欺に引っかかっても、それすら救いのように感じるぐらいの心境というのは、想像を絶する。