紙の本
変わらぬ人の絆
2015/09/10 15:48
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
源氏の物語を著し宮中にその才を認められた藤式部には、他人には言えない秘密がある。それは、娘の賢子の体を借りて、時折、亡くなった姉が降りてくることだ。それなりに世に認められた自分を子供扱いする存在が身近にいることは、疎ましくもあり、心強くもある。例えそれが、あやかしと呼ばれる存在であったとしても。
藤式部はそれを人に言うことはないが、彼女の言動が伝えることもある。そんなわけで、藤式部のもとには、まれにあやかし絡みの相談が持ちかけられる。中宮彰子に仕え始めたばかりの若い伊勢大輔からは、夢に見る櫻の巨木と蜘蛛の相談が。恋多き女である和泉式部からは、夢枕に立つ男の相談が。もうすぐ帝の子を産む中宮彰子の悩みに寄り添い、赤染衛門の後悔はきっぱりと切って捨てる。しかしそんなかりそめの平穏も、昔からの付き合いである藤原公任が連れてきた陰陽師、安倍吉平の長男である安倍時親により、壊されそうになってしまう。
平安時代、紫式部と夭折した彼女の姉との結びつきを通じて、同時代に生きた女たちのあり方を描く。主人公は紫式部のはずだが、中宮彰子が中心であるような印象も受ける。そんな、彼女を取り巻く空気感をうまく写し取った作品であると思う。
紙の本
紫式部の秘密
2012/01/31 08:01
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:胡柚子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は紫式部。本書では、藤式部と呼ばれています。
藤式部は、身近な人たち(伊勢大輔など、古典の授業でおなじみのひとたち!)の「物の怪がらみの悩み」を次々解決していきます。その手助けをしているのが、なんと、亡き姉。ときどき、藤式部の娘にのりうつり、手助けをしていたのです……。
『陰陽ノ京』シリーズの大ファンなので、平安時代ものは待ってました!という感じ。
紫式部や彼女をとりまく人々が活き活きと描かれていて、楽しめました。
とくに紫式部は、物語作者としての悩みまで描かれていて、非常に面白かったです。
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源氏物語なんていわれて小難しいのかなと
思いましたが、
そんなことはなくいつもの渡瀬作品でした。
紫式部の娘に取り付いた姉との話。
まず、設定がいいですね!
紫式部に姉がいたのか!ということをはじめて知りました。
娘がいたことも・・・。
これはこれで終わってしまうと思いますが、
陰陽の京の子を主人子にまた、シリーズにしてほしいなぁ。
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「陰陽ノ京」から連なるお話ですが、時代が少しずれていて、主人公は紫式部(作中では藤式部)です。阿倍吉平が出てきますが、名前だけです。
陰陽師が活躍する話ではありませんので、怪を扱った話としてはとてもライトです。
紫式部が主人公ですが、「源氏物語」を知っている必要はほぼありません。登場人物の名前がちゃんと読めないあたりに、自分の学の無さを痛感しましたが。。。
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渡瀬さんには『空鐘』で惚れたので、異世界ファンタジックな世界から『平安ノ京』を手に取った時は違和感がありました(もちろん平安から読まれている方は、逆の違和感を覚えたと思いますが)。ただこの平安ものが空鐘ぐらいおもしろくて、渡瀬さんの書く陰陽の世界にずいずい引きずり込まれてしまいました。そんな平安の外伝が刊行されてしばらく、単発でぽんと出されたのは、紫式部を主役とする物語。またしても時は平安ながら、京とはまた時代が少しずれています。
タイトル通り物の怪、あやかしの話でまた男性陣の陰陽師が跋扈しそうではありますが、今回はむしろ逆、女房たちを主軸に陰陽師は影の影。この時代では政界に首を突っ込めない女性たちの、女性らしい悩みを女性が解決します。あれこれ口を出せないながらに、女性が果たす政治的役割の比重は半端ないものだと感じました。
少し最後はあっさりし過ぎた感がありますが、単発らしい、後を引きずらない読後感がありました。
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中宮彰子に仕える伊勢大輔、赤染衛門、和泉式部たちが、物の怪がらみの不思議な出来事について同僚の紫式部を頼り…。
当代の歌人たちの前に現れる物の怪を、紫式部に寄り添う死んだ姉の導きで、読み解いていく紫式部。そこで知るのは、ヒトの抑圧した想いが、物の怪となって障るという、時に恐ろしく、時に愛しく儚い4つの物語で…。
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平安の時代、紫式部とその周辺の人々の心模様を、歌とあやかしに映して、織りなされる物語。
タイトルと同作者の「陰陽ノ京」シリーズのイメージのせいで、動きがある怖い話なのかと思いきや、意外にしっとりと静かな内容と文で、「妖怪=退治」のような図式が出来上がっていた脳内に良い刺激になりました。
紫式部を巻き込んで四季ごとに起きる事件は、人の世の儚さや憂い、生きていることの意味…みたいなことを、大それたことを言っているわけじゃないのに感じさせずにはいられなかったです。
最初の「春」の物語の主役・伊勢大輔が健気でかわいかったです。
「陰陽ノ京」の人々も名前だけだけど出ていて、ファンとしては、こっそりにやついてしまいました。
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他の作品とは一風変わったしんみりした作品。作者の時代観がハッキリ出ている作品。紫式部好きにはたまりません。
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タイトルのイメージとは違って
はんなりとした空気感。
それでありながら、平安ものの骨子がしっかり感じられて
とてもおもしろかったです。
もう一度源氏物語を読みなおしたくなりました。
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娘にとり憑いた姉の霊に導かれながら、紫式部が怪異を解いていくお話。四つの季節を舞台に、四人の歌人と紫式部が織りなす四編の短編集。
心に押し込めておけない気持ちが、怪異を呼ぶこともある。四編ともにそんな雰囲気のストーリーで、全体的にもの悲しく美しかった。有名な和歌が散りばめられているのもいい雰囲気出してました。登場人物達の描写はメディアワークスらしくとてもライトで、読者の世代によっては感情移入しやすくて良いのではないかと思います。私は好きでした!
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渡瀬氏の作品はどれも好きだが、やっぱり平安時代が舞台のものが最高! この物語に関しては続きはないそうだが、また、別の人物を主人公に書いていただきたい。文章にストーリーに設定に、夢中になりました!
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紫式部と、姉と、宮中の人々。
平安時代好きとしては、結構キャラクターが楽しい。和泉式部最高。でも、なんか話はもの足りなかった。
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源氏物語を書いた藤式部が主人公。藤式部とその姉が様々な御所内で起こる怪異を解決する。と書くと壮大なファンタジー小説なようだがそうではない。式部を取り巻く後輩、同輩、先輩を助ける話。全体的に長閑、風雅さが漂っていていい雰囲気の小説。
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『源氏』と付きますが光の君は全く関係なし。紫式部が和泉式部ら女房方に憑いた物の怪退治の相談に乗るという新鮮な設定は悪くない。宮中だし、春・夏・秋・冬と物の怪絡みだし、ドロドロおどろおどろしいのかと思ったら全然そんな事はなく、かえって何だかイイ話。和歌も各所に解りやすく引き合いに出され雰囲気を盛り上げてます。怖~い怪談ものを期待するなら不向きだけれど、渡瀬さんの別の作品「陰陽の京」に引き続き、気に入りました。
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陰陽師と物の怪がらみの「源氏物語」というか、紫式部もの。
でも、これは、楽しかっです。
で、この時代のお話らしく、物語の要所要所に、ちゃんと和歌が入ってくる。
すごいうまいつくりです。
同じテーマの「源氏物語」よりも、こっちの方が好みですねぇ。
まあ、口絵の紫式部は、かわいいけど、ちょっと若すぎる感じがしまけどね。
一児の母には見えない。
あと、この人の話を読んでいて、安倍吉平は、あやかしに甘いとか書いてあるのを読むと、思わずニヤニヤしてきますね。
あぁ、同じ世界にいるんだなぁ、彼らもとものすごくさりげなく感じられるのがいいです。