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言わずと知れた『不思議の国のアリス』の著者、ルイス・キャロルが少女たちに宛てて書いた手紙を纏めた書簡集。
『アリス』にも通じるナンセンスな手紙は物語の断片のようでもあり、ある種の詩のようでもあり、読んでいると不思議な気分になってくる。
それにしても、ルイス・キャロルは随分と筆まめな人物だったようだ。手紙ひとつとっても自筆の絵があったり、鏡文字があったりと凝っている。
しかし、これを全部、幼い女の子に向けて書いたというのは、ちょっと恐ろしくもあるw 今だったら警察沙汰になってそうだw
余談だが、最近の平凡社ライブラリーの帯はふざけているように見えて、やけに内容を的確に表しているのがいい。このまま突き進んで欲しいw
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手紙まで公開されてしまって可愛そうに。
しかし、高橋先生のあとがき。
「むしろ、よりしばしば、彼は少女をからかう。困らせる。かつぐ。叱る。なぶる。ときには、おどしさえする。そこには、まぎれもなく、孤独な地獄から、愛する対象を得てよみがえった魂の声の全音域がある」
これに尽きる。
ただの性欲おじさんでもなく、ただの聖人君子でもなく、ただのユモリストでもなく、ただの人嫌いでもない、ぎりぎりの存在だったからこそ、この人は「いい」んである。
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19世紀イギリス、
数学者にして聖職者、童話作家でもあった
手紙魔ドジソンおじさんが
いたいけな乙女たちに書き送った、
愛と優しさとユーモアと、
ちょっぴりビターな毒を含んだラヴレター集。
但し、あのアリス・リデル宛ての手紙は無し。
至近距離で暮らし、頻繁に顔を合わせていたのだから
当然と言えば当然――と、あとがきにあり。
なるほど。
少女は必ず、いつか少女でなくなるが、
少しずつスライドさせるように相手を変えて
幾人もと交遊を持てば、長いスパンで眺めたとき、
理想的な少女の結晶と言うべきものを
叙述の空間に留め置くことが出来るに違いない、と
内気な作家は考えたのではあるまいか……
そんな訳者の考察に深く頷いた。
物語を書くというのは、そのための作業に他ならない。
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生涯に書いた手紙の総数は十万弱…
すごい!すごすぎる!!と思ったけど今の時代のラインや
メール好きな人ならこれぐらい書くかな?
キャロルのすごいところはこれらの手紙の詳細をすべて記録していたところ
手紙の内容は作品同様ユーモアにあふれている上に
最後の本名の前に書かれた一言がとてもしゃれている
「きみゆえに苦しむ」とか「遠くから君を愛する友」とか
「まちがいなく君を愛する」とか、こんなことばが書かれた手紙
人生に一度くらい欲しかったかも…と思ったけど少女時代に
年齢が離れた男性からもらうのは無理。きっと封を切らずにお返しするでしょう。
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誰かの親密な手紙を盗み見る後ろめたさと愉しみ。
ルイス・キャロルの少女への執着を一概にロリータ・コンプレックスでしかないとは言い切れないし、無関係とは言えない。
彼が、少女が相手の時だけ堰を切ったように語り出す、奔放な想像力が産んだ言葉の遊戯をばかばかしいような切ないような気持ちで読んだ。
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几帳面すぎるキャロルがナンバリングした十万近い手紙の中から、少女に宛てた手紙をさらに厳選した一冊です。とにかくユーモアに富んだその手紙の内容に、思わずくすりと笑みがこぼれます。小難しいことは考えずに、「少女を楽しませるためにだけに」書かれた数多の手紙を、私たちもまた楽しむのが吉でしょう。
一番いいなぁと思ったのはビアトリス・アールへの手紙。やさしかったビアトリスにこわくなってしまったキャロルの筆跡が、ふるふるとふるえている…! なんてかわいらしいのでしょう。あと、晩年の「ひどく老いさらばえた老人」のキャロルが書いた手紙の謙虚さ、温かさにも胸を衝くものがありました。
『ためになるのは「愛」です。世界中がそれでいっぱいだったら、どんなにいいでしょう。』
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なんて慈愛とユーモアに溢れた人物だろう!私も少女の頃にキャロル氏に出会いたかった。どの手紙にもキャロルの創意工夫が窺え、微笑ましかった。
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何とも不思議な、そしてチャーミングな本だ。ルイス・キャロルという人は今のぼくたちの目からすれば異常なほどの筆まめさや几帳面さを持ち合わせ、そして言語感覚や論理的思考能力がおそらくは鋭かったり高すぎたりしたせいで巷間でささやかれる「発達障害」の気質を備えた異常者/マニアとして見えてしまう。おそらくはそこにペドフィリアの性格を見つけることもできるだろう。だが、そうした見方はぼくたち大人の勝手な見方であり、ルイス・キャロルの稚気やユーモアを圧し殺すものでしかない。この本の手紙を読み込む楽しさを奪うことはできない