馬と共にゴールを目指す長距離耐久レース
2018/12/29 09:50
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投稿者:如月 弥生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「天翔る」は、馬の長距離耐久レースを題材にした物語です。
一般的に “人” が走る長距離耐久レースは、自分自身の身体を酷使したあげく、けがをしてしまうような過酷な競技ですが、馬の耐久レースは健康状態を重視する競技のようです。
コースに何箇所かあるチェック・ポイントで、馬の心拍数、呼吸数、脱水状態、怪我はないか、などの検査をクリアする必要があり、合格しないと失権となります。レースの続行が許可されません。
検査はゴールラインを越えた後にも行われます。それに合格して初めて完走したことになります。最終区間も馬に無理強いさせることはできません。
馬の状態を理解し、その後の行動を正しく選ばないと完走が難しい競技だということがわかります。
小説では、他の競技者が検査にパスしたにも関わらず、馬の異変を微妙に感じ取り、自主的に棄権する家族の描写があります。馬への愛情を感じることができるシーンです。
そんな競技の最高峰でもある “デヴィス・カップ・ライド” へ10代半ばの少女、まりもが挑みます。
自分の大切な馬を気遣いながら、長時間、はるか彼方のゴールを目指し、馬と共にひた走る。ロマンを感じます。
旅をした時は、車やバイク、自転車などの機械にも相棒としていとおしさを感じるのに、生きた馬なら、その想いはどれほどのものになるでしょう。
しかし、この小説は競技自体の描写は少ないです。レースの展開にハラハラ・ドキドキして、ゴールシーンで感極まるような展開は、そう多くはありません。私にとっては少し残念なところでした。
「天翔る」はどちらかと言うと、馬と全く関わりのなかった少女が馬を間近に見るところから始まり、大切な家族を失い、それを埋め合わせるような人たちと出会い、デヴィス・カップの出場までに至る行程を、楽しむ物語だと思います。
まりも以外の登場人物、志渡、貴子も過去の悲しい出来事によって大きく失ったものがあります。3人は欠けてしまった部分をお互いに埋めうことができる大切な存在になりました。
志渡とまりも。まりもと貴子。貴子と志渡。この巡り合わせは、奇跡的だな、と思えます。
ご都合主義だと感じる人もいるでしょう。なかなか現実ではこのような出会いは難しいです。何の救いもなく苦しみ続けている人は多い。だからこそ、せめて小説には希望が欲しいです。
エピローグでは嬉しいことが待っています。馬の疾走する姿を想い描いてください。きっと笑顔で読み終えることができると思います。その時は、瞳が潤んでいるかも。
アニマルセラピー
2018/12/23 22:42
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投稿者:papakuro - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯を見ると乗馬の耐久レースエンデュランスがテーマとなっていますが、実際は心に傷持つ女性二人が馬に癒やされていくという話です。
この作者は「ダブルファンタジー」が売れて、そんな話ばかり書くようになってしまったけれど、「おいコー」から入った自分にとっては、こういう青春ものの方がやっぱりいいです。(余談ですが、「おいコー」はちゃんと終わらせてください。勝利がオーストラリアから帰ったところで終わりにしてもいいところ、あとがきに「あと、もう少し。彼らを見守っていただけたらと祈ります。」と書いたのだから、ちゃんと責任とりましょう。)
友達同士がつきあい始めたのにショックを受けて自傷行動に走ってしまうところは、なんだかなぁなんですが、少女の成長譚としてはよくできていると思います。でも、この娘、不登校にならなければ乗馬と出会えなかったんだよねと思うとちょっと複雑。
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投稿者:うどん - この投稿者のレビュー一覧を見る
不登校になってしまったまりもの気持ちに共感できる部分がたくさんあって、長いけれど1日で一気読みできる本です。悩みがあるときに読むと自分が励まされている感じがしてとても良かったです。
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確かジャケ買いに近かった。購入して一年経って開いた。そして次から次へ楽しくページをめくった。一人の少女と馬との出会い。そして馬との日常の中で少女が逞しく成長していく様子。それが楽しくそして嬉しかった。もっと早く読めば良かった。
今も少女は成長を続けているような気がする。立派に成長し続けているはず。
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馬の話に惹かれて読むことにした。まりもちゃんの、貴子さんの、志渡さんの心にあるものが馬と付き合うことでほぐれていく。まりもちゃんの乗馬姿が目に浮かぶ。"第一章" じゃなくて "第一レグ" なんで? 読めば分かる♪ エンデュランスについてもっと知りたくなった。
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不登校になったまりもは、看護師の貴子(たかこ)から誘われた石狩湾の志渡銀二郎(しどぎんじろう)の牧場で、乗馬の楽しさを知った。そして人と馬が一体となりゴールを目指す耐久レース・エンデュランスと出合う。まりもを見守る大人たちも皆、痛みを抱え生きていた。世界最高峰テヴィス・カップ・ライドへのはるかなる道のりを描く。
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身近じゃないから、ドラマチック。そして、それこそ物語を読む醍醐味なんだ、とあらためて気づかされた。
北海道、馬、いじめに不登校・・・共感ポイントほぼなしのストーリーだけど、だからこそ感動できたんだと思う。
まりもがぐんぐん成長していく様子が、ほんとうに輝かしくて、愛おしくて。サイファと人馬一体になっていく過程もほんとう~に感動的だった。
闇の先には光がある、というとありきたりだけど、でもまさにそれを描いた物語。
まわりの、しどさんや貴子さんもそれぞれに抱えるものがあり読ませるけど、やはり少女の成長ぶりが何より輝いて見えた。
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馬に乗りたい!
馬と触れ合ってみたい!
そう思える本でした。
良本。
関西旅行から帰る道すがら、空港で出会った本。
お酒も入ってたし、いつもなら爆睡のところ、この本読み出したら止まらず、飛行機、リムジンバス中ずーっと読みっぱなし。止まりませんでした。
それくらい面白い。
不登校になってしまった少女の心の苦しさと馬と触れ合う時の清々しく開放的な感じが真っ直ぐに心に突き刺さる感じです。
馬の耐久レースなんて存在知りませんでしたが、馬と人間が一体となって走り抜く(マラソンに近いでしょうか)姿は感動すら覚えます。
感動もしますし、爽快です。
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我が愛馬イリデッセンス号の待望のデビュー戦が終わった。結果は4着であったが、レースっぷりは悪くなかったと思う。勝ち上がる日を夢見て、また次走へ思いを馳せる。
しかし、馬はいいねぇ~。私は動物は好きではないのだけど、馬だけは別。馬が走ることを思うと色んなことを忘れるよ。
さて、この本、それぞれに心にぽっかり空いた穴を持ち、馬に携わることでしかそれを埋められない3人-乗馬牧場を経営する志渡、看護師の傍ら牧場を手伝う貴子、父親を亡くしイジメによって不登校になってしまったまりも-の物語。
冒頭描かれる札幌競馬場での出来事を経て、3人が出会ってからの牧場の場面からして良いな。北海道の碧い空と海、風の音、草の匂い、その中で弾む蹄の音。出産や馴致や牧場経営の実情の話も織り交ぜながら、馬との世界の楽しさが語られる。
その3人が“エンデュランス”という馬術競技の世界を知ることとなり、物語の後半、その世界最高峰のレース、テヴィズ・カップ・ライドを目指すところが描かれる。
馬のことは好きだけど、エンデュランスのことは知らなかった。
ウィキペディアによれば『一般的に数十キロメートルの長距離を数時間かけて騎乗し、その走破タイムを競う競技である。耐久競技のため、一定の区間毎に獣医師が健康診断を行い、獣医師の判断により競技の続行を決定する。そのため、騎手は常に騎乗馬の状態に気を配る必要がある』という競技は、速さの遺伝子を淘汰する競馬とはまた別の意味で、馬本位の競技であることが分かる。
終盤、厳しいレースの様が描かれ、これを完走するために多くの人々がひとつになる。馬に乗る者、横に添う者、ゴールで待つ者、これまでのしがらみを捨て、悩みを置き去り、それぞれの思いが静かに滾り平らかになる。
牧場で疾走する漆黒の馬の姿で締めたエピローグがグッと来た。
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遥かなる水の音から続けて文庫で。
読みやすくて、響きが心地良くて、読後の余韻もとても優しい。
作品を読んで、で、結局?という人がいるけれど、結末が必要な作品とそうでない作品があって、明確な結末がないところに、〜かもしれないという癒しがある。
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久しぶりに、村山由佳読んでよかった。あまりにも切なくて最初号泣。大きな傷を抱えているからこそ、人間的な魅力が醸し出されているような様々な人たちの物語。母校の同窓の集いへ向かう新幹線と電車の中で読了。空がきれいに見えた。
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不登校になっあまりもは、看護師の貴子から誘われた石狩湾の志渡銀二郎の牧場で、乗馬の楽しさを知った。そして人と馬が一体となりゴールを目指す耐久レース・エンデュランスと出会う。まりもを見守る大人たちも皆、痛みを抱えて生きていた。世界最高峰テヴィス・カッププライドへのはるかなる道のりを描く。
まりもを中心に、苦難から少しずつ解き放たれていく大人たち。
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久々の村山本。
エンデュランスについてはほんのちょこっとの知識しかなかったものの、本質はそこじゃないんですよね。いつだかのと同じ、再生の物語。
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馬に携わる仕事をしているので、読んでみました。
エンデュランスはとても過酷な競技で馬と人の信頼関係がきちんと出来ていないと挑戦できないことがわかりました。
この本に出てくるような、馬と人との信頼関係を実際自分も作りたいと思いました。
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単行本がとても気に入っていたので、文庫本になっていたのを発見して即購入。
やはりとてもいいですね。
村山由佳さんの作品の中では久しぶりのヒットです。
どろどろした内容ではなく、一人の女の子が時間が止まってしまってからまた動き出すまでの物語です。
神様は信じられなくてもそれでも生きていける、そういった人間の力強さが伝わります。
是非ご一読あれ!