紙の本
杞憂の面白さ
2021/12/04 17:05
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
続編ものですが、まずページを開けて目についたのは、前作と比べて登場人物の多さ。あれだけ面白かった前作を上回れるのか。読む前からこちらが心配してしまいましたが、全くの杞憂でした。前作は登場人物も少なく、誰が悪い奴かもはっきりしていた反面、今回は登場人物が多いため人間関係も遥かに複雑で、まだこの時点では前作と違い、圧倒的な悪人もおらず、まだまだ手探りで読んでいる感じです。次に期待です!
紙の本
災害小説としての側面
2020/03/30 21:18
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ケン・フォレットは「巨人たちの落日」を読んだが、第一次世界大戦前から新しい秩序が支配する大戦後へと、大きく時代が動いた節目を世界的な視野で捉えた壮大な作品で数多くの登場人物の動かし方も鮮やかだった。
その彼の代表作と言ってもいい「大聖堂」の200年後が舞台となっている本作品。
第二部まで読み進めてきたが、やはり面白い。登場人物も前作の末裔だったりするものの、全く新しい作品と言っていい。今回も政治的な側面、羊毛市のテコ入れを図る経済的な側面、それぞれの人生や恋模様など盛沢山だが、上巻の大きな転換点となる橋の崩落事故に特に注目したい。とてもスペクタクルなシーンだが、作者はこのシーンを高台から橋を見ていた建築家の徒弟の目を通して、まず崩落に至る原因と直前の兆候の発見、そして事故発生を目撃させている。次に自分の命を守ることに全力を傾けている少女から見た生存への執着とその後の行動、さらにいち早く救助に駆け付けて的確な指示をだし、現場を混乱から秩序へと導く羊毛商人の娘、最後に当時としては最先端な治療を施す従軍医師(実は理髪師)のリアリストぶりで締めくくっている。この描写の流れがとても現代的だと思った。この事故の直前には修道院で魔女裁判が行われ、頭のイカれた女があっという間に死刑宣告を受けるシーンがあっただけに、その対比が鮮明だ。一方は私たちがイメージする無知蒙昧な中世で、もう一方は論理的、先進的な啓蒙主義の時代で一体どちらが作者の描きたかった時代だったんだろう。それぞれの時代には前時代的な側面と、やや突出した先進性が混在しているものだということなのか?エンタメだけでなく、いろいろ考えさせてくれる小説だ。
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続編の翻訳が思いがけずいいタイミングで出てしまったので、また逃避系読書。時代の移り変わりに従って中世の都市住民の力が強くなっている様子なんかも描かれていて面白い。前作に引き続き、人間的かつ魅力的なヒロインがいい。
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前作の続編ですが200年経った14世紀が舞台なのでこちらだけ読んでも楽しめると思います。誰が誰の子孫とか、細かいエピソードは出てくるのでもちろん前作を読んでいれば更に面白いです。前作では修道院は庶民に寄り添い、貴族階級と対峙する格好でしたが、200年後では聖職者も貴族と並ぶ権利保有者になりより政治的になっていて既得権益もあり庶民とは離れた存在になっています。それに対し以前はなかった女子修道院が修道院に属する組織として存在し、男性中心の封建社会組織に組み込まれ本来の存在意義を失いつつある男子修道院に代わり、病人の世話をするなど弱い立場の庶民を助けています。
物語はジャックの子孫のマーティン・ラルフの兄弟と、裕福な羊毛商人の娘カリス、土地を持たない最下層の労働者の娘グウェンダの4人が、森で殺人事件を目撃したところから始まり、王、貴族、大司教、修道院長の権力闘争から、登場人物たちの人生の目的達成のそれぞれの苦労と、大きな話から細かい話まで多岐にわたりながらも全体のまとまりは失わずに大団円を迎えるので、一気にスルーっと読めてしまいます。大作です。今回の作品は特に社会のマイノリティである労働者そして女性にスポットがあてられていて、読んでいて共感するところも多かったです。★5つでなく4つなのは、かなりボリュームのある大作を立て続けに読んだので最後少々息が切れてしまったため。一気読みした甲斐はありましたが、もう少し間を空けて読めばもっと良かったかも。
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さらに分厚くなった「大聖堂」の続編。といっても約200年後の話。キングスブリッジを舞台に建築職人のマーティンと、兄ラルフ、羊毛商人の娘カリス、貧しい労働者の娘グウェンダを中心にした物語。前作以上に悪者が悪すぎる!保身や権力闘争のために、卑劣なことでも何でもやる。ムカムカしながらも、マーティンやカリス、グウェンダが彼らにどう立ち向かうかが気になって、読みだしたら止まらない。
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スパイ小説の重鎮、ケン・フォレットの歴史小説。
「大聖堂」より、200年後の世界を舞台に、大聖堂建築をめぐる人間模様が鮮やかに描かれている。
「大聖堂」が12世紀当時の土木技術への挑戦と宗教を描いていたのに対して、この「大聖堂 果てしなき世界」では、台頭してくる商人や吸引力を失っていく教会が描かれている。
<絶対>を失った世界で、イングランドで一番高い塔を建てることを、どう意味つけるのか。
信じていたものに裏切られ、身を守るために意にそわぬ選択をせざる得ず、またそれも砂上の楼閣のようにもろく崩れていくヒロイン。
反対に、不幸な生い立ちながら、愛する男のためという一念を貫いていくもう一人のヒロイン。
2人の対極のヒロインと、没落した貴族の子供として生まれ、建築家と騎士と正反対の生き方をする兄弟が、物語を極上のエンターテイメントに導いてくれている。
フォレットの小説は、人物造詣がいつも素敵だが、これではそれが最大限に生かされてるように感じた。
そう、前作のような建築技術の発展的な部分を求めると肩透かしをくらうし、前作で物足りなかった人が物語を作りあげていくという部分は、この上もなく満足させてくれる。
これほど、最後のページを閉じるのが残念でならなかった物語はない。
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前作と続けて読んだせいか、主人公を阻む勢力が次から次に難題を課したり、必ず悪い結果をもたらすところとか、このカップルはいずれ必ず結ばれるだろうとか、先が読める気がする‥という気分で読んでしまった。たしかにそうだったんだけど、ちょっともったいない。前作から時間をおいて読めばよかった。
しかしすべてのフラッグを見事に回収するのは、読んでいて気持ちが良いのなんの。
四人の主要人物のうち、残念ながら最期まで感情移入できないのが一人。
大聖堂の建築についてのうんちくは少なかった。これも残念の一つ。
あと、カワハギの刑はいやだー!
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少し前にこの前の作品になる大聖堂を読み、一気読みした覚えがあります。続編が出ているのは知っていたので(正確に言うと続編出版時、前作品も本屋で平積みされていたのでそんなに売れている作品なんだ~と読み始めた)いつ読もうかなあ…と思っておりました。でも分厚いし、3巻セットだし…と二の足を踏んでいるときに図書館で発見。喜んで借りてきました。そして2日で一気読み…やっぱり…(笑)
色々な登場人物が出てきてめまぐるしくお話が展開していくので
それを追いかけていくうちにどんどん読むのが止まらなくなる、と言うお話です。でも個人的には前作の方が好きかな。
前作は大聖堂を建てる、と言う一貫したテーマがありましたが今回の舞台はその200年後でもう大聖堂は建てられてますからね。そしてフィリップ修道院長が魅力的だったし…。
今回出てくる聖職者は軒並み堕落した方ばかりでがっかり…。でもそれが現実なのか?
前作もヒロインは輝いておりましたが今回も女性陣は強くたくましくカッコイイ人ばかり。ただカリスさんはあまり理解できないタイプでした。グヴェンダさんやフィリッパ夫人の方がステキにカッコよかったです。
これ、ドラマだったらここで次は来週って展開だろうなあ~なんてそんなことを考えつつ読んでおりました。色々首を傾げるところもありますが勢いで完読。面白かった、です。
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前作に続いて読破。上巻はなぜか先が読めず、もたもたとした感じ。しかし、読み終わると、中巻、下巻とあっという間に読了。
さすがに、ケン・フォレットはエンターテイナーだと恐れ入りました。
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「大聖堂」の続編。
200年後、既に大聖堂が建っている街キングズブリッジ。
騎士のサー・ジェラルドの長男でのちに建築職人になるマーティンと、その弟で大柄で強いが粗暴なラルフ。
裕福な羊毛商人エドマンドの娘で利発な美少女カリス。
土地を持たない貧民の娘グウェンダ。
この子供らが森で偶然に、騎士が襲われて相手を殺す事件を目撃する所から始まります。
そのときの騎士トマスは修道院へ。
修道院長を目指す修道士ゴドウィンは、カリスの伯母の息子。穏当にふるまっていますが、実は野心家。
修道院の内部抗争も描かれます。
女子修道院の存在が大きくなっているのも、時代の流れというか、前作とは違う興味をそそります。
グウェンダが恋するハンサムな農夫のウルフリックには婚約者がいました。
望みのない恋に思えたが、思いがけなくウルフリックの親が亡くなって、その土地所有を巡って危機に陥る。
当時は、当然のように息子が継げるというものでもなかったという意外な盲点が。
薄幸のグウェンダが一途でけなげ。
人が集まっている日に橋が落ちるという大惨事が起き、街は大混乱に。
マーティンは親には期待されない息子でしたが、橋の欠陥を見抜き、才能を発揮していきます。
カリスと想い合いますが、親方の娘に言い寄られて妊娠させたという騒ぎになり、それは濡れ衣だったのですが、ギルドに入れなくなり‥?!
臨場感があり、ドラマチックです。
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圧倒的な筆力で大作をグイグイ読み進ませるのはさすがケン・フォレット。
名作「大聖堂」の続編のプロローグはのっけから引きこまれました。
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「大聖堂」の続作です。
とはいえ、舞台は前作の約200年後のキングズブリッジです。
相変わらずの「不幸」「困難」がてんこ盛りで、読むのがしんどくなりつつもページを繰ってしまいます。
「ちっとはええことおきてくれ!」と、期待をこめて中巻へ。
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大聖堂の続編です。
今回も、不幸が「これでもか!」と連続で来る、ケン・フォレットの力業は健在です。
前作では、主人公たちを中心にしてのいろいろな対立と対比をかなり意識して書いていたと思うのですが、今回は、対立はあるのですが、前回ほど明快ではなくて、混沌としています。
修道院も、かなり腐敗していて、かつてのような理想に生きる人はいない感じです。
そんな中で、それでも、それぞれの思いや、欲望に振り回されながら、たくましく生きている感じが素敵です。
本の後ろのあらすじは、けっこう重要なことまで書いてあります。
特にこの時点で、下巻のあらすじを読んだのは、失敗だったかも……。
まあ、結果だけ知っても、過程がおもしろくない本ではないのでいいんですけどね。驚きは、減っちゃった。
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いつの間にか大聖堂の続編が出ていたとは。不覚でした。感想は下巻で書きます。この本も児玉清の宣伝が帯にありました。つくづく児玉清に先をこされています。
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前作のような派手さはあまりないけど、やっぱり面白かった。
舞台は14世紀のキングズブリッジ。「フィリップ院長の時代が黄金時代」とか「ジャック・ビルダーが…」などといった文言が控えめにちりばめられているのにニヤッとする。今度はキングズブリッジ大聖堂が敵役として登場するのも新鮮。
百年戦争、ペスト大流行の様子やその影響――医療の発達とか荘園制崩壊とか――が相変わらず生き生きと描かれる。登場人物たちの葛藤ももどかしく、感情移入してしまう。一人一人の性格や、問題にあたっての行動に関しては、前作以上の人間らしさを感じた。
最後もきちんと大団円で、ハラハラしつつも安心して読むことができた(除皮剥ぎ。満足満足。