紙の本
意外性で攻めてくるショートショート。
2018/11/05 23:43
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の考えがあとがきでよく分かります。
>何らかの意外な結末をもった世界観のある物語を作りたい。
>そのために幻想、シュール、ナンセンスの三つの軸を意識する。
この本が初めての作品集なので、実質的なデビュー作に
あたるようです。星新一さんのショートショートに魅せられ、
アンソロジーの文庫に一つの作品が収録されてデビューし、
最初は電子雑誌を中心に活動したようです。
おそらくこの本で一定の評価を得たから、のちの作品群が
生み出されたのでしょう。師匠は星新一の弟子である江坂遊
という人で、星新一の流れを組むオマージュ感があります。
おやつみたいに軽く読めて、ショートショートの良さが出ています。
十ページ前後の作品がニ十本並びます。
蜻蛉玉、大根侍、干物、星を探して、夢巻などが
気に入りました。他の作品も自分の趣味とは違うものの、
内容はしっかりしているので、なかなかの出来栄えです。
その中でも表題作の夢巻が秀逸でしたね。こんなお話です。
古い友人に連れられて入った店はシガーバーでした。
悪いけどタバコはという私に、ここはただのシガーバーじゃ
ないんだよと彼に招き入れられます。
小学校の卒業式以来、突然の電話で呼び出された私。
だから、彼なんて呼びかたをする距離感の微妙な関係です。
席につき、話しを掘り下げようとしたところで、
店の人が葉巻と灰皿、そしてマッチを持ってきました。
タバコを吸わない私は、葉巻に興味がありそうなそぶりを
見せながら彼の心をはかりかねています。
すると彼は、私の言葉を待っていたかのように口を開きます。
「あいにくこれは葉巻じゃなくってね」
ひと呼吸おき、「ユメマキといって」「なんだって?」
吸ってみれば分かるさとの言葉に押され、口にくわえてみると
私の頭に強烈なイメージが流れ込んできたのです。
それは夏の景色でした。
クマ蝉、虫取り網、木から木へと渡り歩く自分。
ユメマキとは、子どもの思い出が詰まった代物だったのです。
だって夢巻は、子どもの作文から作るのですから。
友人は私に、子どもの頃の作文や文集、テストなども
全部持ってこさせていました。やっと理由が分かりました。
これで夢巻を作れば……それはそれ、なぜ友人が
私を呼びだしたのでしょう。
そんなお話です。
へええ、という言葉がよく似合う一冊でした。
紙の本
シュールなのに温かい
2016/03/01 00:40
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作はショーショート作家、田丸さんの初単行本です。
どの作品も幻想的でシュールなのに温かい作品で、星新一っぽさを感じます。一方で、物に命を吹き込んで作品にする発想力は田丸さんの方が上かもしれないと思いました。例えば表題作の「夢巻」のテーマは、作文+葉巻。一見ミスマッチだけど面白いし、きちんとオチがあります。
本作が気に入ったら「海酒」も併せてぜひ。
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普段の何気ない物や場所、物語からすっと妄想の世界へいざなってくれる妄想万歳!な一冊でした。
久しぶりにショートショートを読んだのですが、とにかく面白かったです。
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ショートショート
あんまりパッとしないかな
どれもナンセンスなんだけど
たいして面白くない‥
ざんねん
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ふわふわした世界観で面白かったです。
夢の中にいるみたいな輪郭をもたない映像が頭の中に浮かんできました。
ゆるいSFのような、そうでもないような印象の中で何も考えずにページを捲っていった感じです。
特に印象に残ったお話は綿雲堂と大根侍です。綿雲堂はなんというか、頭に流れてきた映像が色鮮やかできれいでした。大根侍はノリが好き。
この作品のような雰囲気のお話が好きな方は、「煙突にハイヒール」という作品もおすすめです。
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「星新一の流れを受け継ぐ新世代ショートショート作家」という売り文句に嘘は無かったです。
ちょっと不思議でキラキラした、20編のショートショートをまとめた著者の初単行本。
印象に残った作品の一つは「妻の力」
「私は闇を抱えているの」と言う女性と結婚した一人の男性。妻となった女性はだんだん自堕落な生活を送るようになり、ぶくぶく太り、ベッドでゴロゴロ。しかしある時、妻の言葉の真意を悟る日がやってきて・・・。
それから奇想天外な設定の「大根侍」も。
大根を買って帰る途中だった私は、大根を持った男とたまたまぶつかってしまう。私はとっさに謝るが、男は「刀と刀がぶつかったからには、一対一で決着をつけるしかない」とまさかの因縁。困惑する私の前に"師範"を名乗る別の男が現れ、私は大根の道を極めることに。果たしてその結果は?
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ショートショート小説期待の若手という噂を聞き読んでみた。奇抜なアイデアを夢のようにフワっと読ませる手法が得意な感じかなぁ。寝ている時に観る幸せな夢の中にいるような感じで気持ちがほっこり緩みます。
しかし、夢だけあって、オチや締まりはよろしいとは言い難い。そういう意味では今後に期待。そして、やっぱり星新一って偉大だったんだなぁと改めて思う
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ショートショートなので、ほんとにすぐ読める。ちょっとひねっていても、基本的に優しい印象。
長編だったらもっと刺さってほしいけど、短編だからこのささやかさでも大丈夫だった。
MV観てるみたいな浮遊感。
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幻想、シュール、ナンセンスという3つの軸を意識していると著者があとがきに記しているように、様々なテイストが詰まったショートショート集。
3つの要素がどの作品にも組み込まれていて、その配分が絶妙。
個人的には、「綿雲堂」や「夢巻」みたいな、幻想強めな作品の美しい描写が好きですが、「大根侍」や「ネギシマ」みたいな、おバカな話も面白かった。
これが1冊目ってマジですか…!
これから要注目な作家さんです。
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ダ・ヴィンチで又吉さんが紹介していて面白そうだったので図書館で予約した。ショートショートなので去年からちびちびと読み進め、年またぎで今日読了した。
はじめは「世にも奇妙な物語」のような少し不思議なお話の詰め合わせだなと思った。でもそれだけではなくて、一瞬で幻想的な世界に連れて行ってくれたり、こんなことがあったら怖いなぁとかあったら素敵だなぁとかそれぞれの話で色んな気持ちにさせてくれた。どれも面白くてとても楽しい本。「文字」「綿雲堂」「夢巻」が特に好きだった。
2015/01/08
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この本を新聞の書評で見かけて、ショートショートを今でも書いている人がいるのかと興味を持って図書館に予約を入れてみたところ、かなりの人気のようで数ヶ月待たされてようやく読むことができました。
文章はとても読みやすく、そこそこおもしろくはあったのですが、全体としては残念ながらあまり好みではありませんでした。
が、いろいろあった話の中で、「大根侍」と「妻の力」の2つについては、非常にインパクトのある話で印象に残りました。そもそも全部に期待するのではなく、気に入る話がいくつかでもあればそれでよしと考えるべきなのかもしれません。
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久しぶりのショートショート集。
学生の頃に星新一さんを読んでちょっと好みじゃないなと途中辞めをして以来のショートショート。
読みやすかったけど、やっぱり自分には合わなかった。。
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+++
星新一の流れを受け継ぐ新世代ショートショート作家の旗手、初の単行本!
田丸ワールド全開の、ちょっと不思議な20編。
+++
日常から題材を取ったショートショートの数々である。日常のひとコマとは言え、視点や想像力、そして創造力によって、ほのぼのとしたり、ぞくっとしたりとテイストはさまざまなので、次が愉しみでどんどんページが進んでしまう。結構好みかもしれない一冊である。
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『大根侍』『分割』『干物』あたりが気になった。
最後の『夢巻』は全ての話に通じてる気がして
夢巻を作るための道具が子供の頃に書いた作文というのがいい。
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ショートショートは星新一氏のものだと思っていたのですが、これはまた一風違ったショートショートだと思います。
星氏がSFものを主軸としたのに対し、田丸氏は日常に潜みそうなものを書いていると思うのです。
面白かったのが「リモコン」「大根侍」、ファンタジー色あふれていたのが「綿雲堂」「千代紙」「タナベくんの袋」
「夢巻」でした。
読み応えがあってよかったし、装丁も素敵な一冊です。
また読みたくなる一冊だと思いました。