『物語はいつからはじまるのだろうか?』
2009/07/22 22:02
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投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ガクちゃんが廊下で鉢合わせてして一緒に転んだ毬井ゆかりは紫色の瞳を持った中学生。彼女の秘密は、自分以外の人間がロボットに見えるということだ。
嘘っぽいと思いつつ適当に話を合わせているうちに、ゆかりには本当に人間とロボットの区別がついていないとガクちゃんにも分かり始めたのだが……。
うえお久光は巧い作家だと思います。キャラが活き活きとしていて軽妙な言葉のやりとりが心地良いというだけでなく、しっかり面白い「物語」が紡げるということ。ただ、著作の大半がライトノベルの長編シリーズなので、いきなり読み始めるには辛いかもしれません。ですから、この作品のように1巻ですっきり完結している作品は貴重な入門書かもしれません。
けれども単純に「面白いライトノベル作家の入門書」と言い切るには少しばかりやっかいな作品でもあります。本の帯には「少し不思議な日常系ストーリー」とか書いてありましたが、これが「少し不思議」ならテッド・チャンだって「ちょっと不思議」です。少女たちの友情の物語であり、世界の可能性を足蹴にする探索の物語であり、魔法少女の冒険活劇であり、シュレーディンガーの観測問題に正面から挑んだ平行世界テーマSFの快作と二転三転していくのですから。
でも、この一癖も二癖もあって容易に先の展開を読ませないまま一気に読ませてしまうのがうえお久光の巧さであり、この作品でうえお久光を知るのだとしたら、それは幸せなことではないでしょうか。
認識の相違をキーワードにしてSF展開に進む
2010/07/26 00:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分以外の生き物が全てロボットに見える、ロボットと人間の区別がつかないという少女、毬井紫と友人になった少女、波濤学は、ゆかりの友人でありながら彼女に憎悪を抱いている少女、天条七美と反発したり近づいたりしながら、普通の学校生活を送っていた。
しかし、ゆかりと一人の殺人鬼との出会いが、普通とは少し変わっているけれど平凡な日常をどこかへ追いやり、まなぶにななみが抱いている憎悪の理由を悟らせることになる。まなぶの機能拡張がなされることを代償として。
クオリアの相違という変わった設定はあるけれど、日常のドタバタをまったりと描いていくのかなと思わせる第一章から、第二章ではまなぶを主役として、思いっきりSF的な展開へと変わっていく。
一言でいえば並行世界での試行錯誤なのだが、感覚的にいってこのジャンプの仕方が半端じゃない。そして、ジャンプして戻ってくることで、ゆかりという人物に対する深みと、まなぶという人間の徹底ぶりが理解できるようになっている。
第一章の展開を引き継ぐべきなのはこの回帰した後の世界なのだが、そこは描かれることはない。まさに不確定だ。ただ、あらゆる可能性を検証した上でその経験を捨てたことで、まだ生まれていない可能性を選択できる可能性が生まれたことは確かだと思う。
これ、メチャクチャ好き!!
2025/05/24 00:08
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投稿者:。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずアニメっぽい表紙に惹かれたのですが、絵柄がアニメっぽいので、キャラクターがいるんだって感じで、良かったです。
ゆかりとマナブの関係が…!
この終わり方も、いいんですよねー
担当のイラストレーターさんがコミカライズも担当しており、機会があれば読んでみたいが…
この本、本を読んだことない人でも絶対ハマるんじゃないかな?という位 お勧めです。
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予想外だったので、6点つけても良いくらい。美少女とロボットものから、まさかの急展開で不思議ストーリーへ続くが、この展開の仕方が面白くて良かった。
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書評サイト「Something Orange」ほか激賞のため、在庫調べて買いに行った。
「JINKI」の綱島志朗と組んだ絵物語がスタートで、つまり「ロボと娘っこ」というテーマが与えられての一題噺なのだと思われる。そのアイデアの必然性を、後半の急展開であまり支えられていなかったな、と思えてしまう。ゆかりが女神であり、マナブがその信者であるという関係が最後に至ってあまり変化しなかった(ように思える)こともマイナス点かも。
佳作ではあるが。
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面白かった。
多世界解釈からあんなふうに話を膨らませるとは、その発想がすごい。
シリーズ化もアニメ化も眼中にないところが並のライトノベルと違っていさぎよい。
ゆかりが自分の姿もロボットに見えていればより本格的にクオリアを突き詰めたということで星五つあげたいところだが自分は人間に見えるというところで星四つ。
たとえばある人は人の顔がガミラス人のように青く見えていたとする。ところが、肌色の絵の具もこの人には青く見える。だから青い絵の具で青く顔を描いたはずなのに、他の人から見ればその絵は普通の肌色の人の顔に見える。その人が人の顔が青く見えることは、誰にも分からないし説明できない。そういう自分も、今見えている世界が他の人も同じに見えているとは限らない。
こんなややこしいネタを読みやすくて楽しめる小説に仕上げたところはさすが。一点上記の部分のみ惜しいと思うが、ではどうすればよいのかという代案は浮かばない。
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ちょっとしたキーワードすら口走るとネタばれに繋がりそうなのであんまり言いたくありません。とにかく読者にガンガン読ませる本。先が気になって仕方ない。
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ちょっと意外な仕掛けを使った展開と、ほんわかした結末のSF小説です。
続きが気になってしまい、最後まで一気に読み終えてしまいました。
題材に癖があるので、人によって好みは分かれそうですが…
SF好きな方にはお勧め出来るかも知れません。
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物語の始まりでは、自分以外の人間の姿がロボットに見えるちょっと不思議な女の子が登場。友達のことをスーパー系のデザイン・換装・汎用性と表現したり、ある男の子にドリルがついていることを打ち明けたときに、ドリルはロマンだという話が出たり、ロボ好きに共感できるネタが多数登場。
そのまま、SF系の青春群像劇が続くのかと思いきや・・・。
途中で話ががらっと変化。
後半ではパラレルワールド、並行世界をテーマとした話にシフトしていきます。
後半は文章の流れがよく、自分がSF的な話が好きなのも手伝って、ぐいぐい引き込まれました。
物理学とか脳科学とか、いろいろ小難しい内容の話が出てくるので、人によっては拒否反応が出るかもしれませんが、一応わかりやすく説明がされているのであるていど敷居は低くなっていると思います。
「シュレーディンガーの猫」とか有名な話を聞きかじったことがあるとより入り込みやすいと思いますが。
自分は良い作品だと思いましたが、独特な切り口なので人を選ぶ作品だと思います。
コアなSF好きな人にはオススメです。
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自分以外の人がロボットに見える紫色の瞳を持つ毬井ゆかりとその親友波濤マナブの物語。
序盤は緩い異能モノかと思っていたけど「1/1,000,000,000のキス」に入ってからの展開がなかなかでした。
しっかりSFやってます。
おまけ四コマも良し。
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ラノベじゃなかったら、この内容を理解するのは難解そう
クオリアとか、専門用語的なものがでてきて小難しいなと思ったがこの作品のおかげで興味をそそられた
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量子論の知識が少しでもあれば楽しさ倍増間違いなし!ラノベに見えるけど結構ハードです。良い意味で予想が外されますよ。
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「毬井についてのエトセトラ」は並、「1/1,000,000,000のキス」が面白かった。イラストがJINKIの人なのが嬉しい。
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平行世界論をあつかった作品は多いが、この作品の扱い方は新しい。
クオリアという個と個を分かつフィルターを通して、平行世界を語り、物語を作る。
ライトノベルの軽快さがありながら、世界のあり方について深い考察がなされている。世界のあり方についてとことん考えまくって作られているように思う。
物語としては小松左京の『果てしなき流れの果てで』を思わせるが、あれよりも考察は深いし、面白い。
えぐい描写をさらりと書く作風もいいかんじだった。
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並行世界と自分とはを、テーマにしたSFです。登場人物の一人称で進んでいくせいか、細かいことを気にせず読み進められました。硬いSFにとっつきにくい人には、お勧めかも。