震災後、新たにつくられた三人の家族の物語
2015/11/24 08:32
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫の暴力から逃げてきた女性と、震災で親を亡くした女の子と、ふたりをつなぐおばあさん。おばあさんはふたりの名前を勝手に自分の好きなように呼んで定着させてしまうという強引さを見せるけれど、この強引さによってふたりは救われたのだと思う。それぞれの苦しい思い出と直結する名前からしばらくの間解放され、別の名前で生きるうちにふたりが自分を取り戻していく…そういう話に思えた。
中盤以降はカッパを始め不思議な存在がたくさん出てくる。彼らが力になってくれるというのがミソだが、戦ったりする場面はややひっちゃかめっちゃか気味。後半をもう少しきっちりまとめてほしかった。
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東日本大震災の日、DVの夫から逃げてきたゆりえは、知らない伯父の家に預けられに行く萌花と出会い、一緒に避難します。避難所で身元確認をされたとき、とっさに介護施設入居予定者のキワに、彼女の嫁結(ユイママ)と孫ひよりにしてもらいます。
その後彼女たちは避難所を出て、古民家で家族として暮らし始めます。
ある日、お客があるからとご馳走を準備していたところ、やってきたのは河童で、おばあちゃん(キワ)の依頼で、怖いものを閉じ込めていた封印が津波で解けたことを確認しに行ってくれていたのでした。おばあちゃんは、ふしぎなものたちとのコミュニケーション能力を持った人でした。
その怖いもの退治のために、3人の戦いが始まります。
東日本大震災後の狐崎を舞台に、モノノケ(?)たちの戦いを、人々の震災への想いを巻き込みながら描くファンタジー。
う~ん。正直これは辛いです。
まず、高学年向きとはいえ、児童書に、DVのために家のお金を持って逃げてきた女性が描かれます。これを子どもにわかれというのは難しいでしょう。
次に、東日本大震災。ここへの想いを綴りたかった気持ちはわかりますが、直接描くのではなくファンタジーの舞台にしています。そうするとこの震災への気持ちは単なる下敷き、脇役になってしまう。
それと、登場する不思議なもの達。地域の河童に地元のお地蔵さま、狛犬……。たくさん出てきて、それぞれの紹介が、まるで地元案内。せっかくの戦いの緊張感が削がれます。
あまりにたくさんの要素を詰め込み過ぎたので、ごちゃごちゃになっているのです。
傷ついた女性と少女が古民家でちょっと不思議なおばあちゃんと暮らすうち、心が溶けてきた……これならわかります。
大波で封印が説かれた化け物を、ご縁があって家族になった3世代女性がやっつける……こんなのもいいと思います。
でも、何よりもあの震災は、ファンタジーの下敷きにするには、まだ生々しすぎると思うのです。
挿絵も、最初は漫画チックで興醒めだと思っていましたが、後半はその方が深刻に読まなくてよいとも感じました。
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大好きな柏葉幸子さんの児童書。女流児童書作家、水木しげる版というか、お話の中に、よく、昔からの不思議なものが出てきます。今回は震災後の岩手の話で、最初読み終えられるか心配だったけれど、わたしにとっては、良いリハビリになりました。
最近は、主人公がおばさんだったりすることも多くて、やはり、読者も一緒に年齢を重ねてるのかなぁと。
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冒頭のシーンはあの震災を思い起こさせるので、まだその話が難しい人はもう少したってから読む方が良いかも。
血縁関係もない偶然居合わせたおばあちゃんと女性と女の子が共同生活を初めて一つの家族になっていく物語。
老人介護施設に入居する為に東野から移動してきたおばあちゃん。
DV夫から逃げ出した女性。
両親を亡くし声が出なくなった状態で歓迎されていない親戚の所に預けられる為にやって来た女の子。
同じ日に着いた土地で大震災に見舞われ・・・ってかなり重い始まり方。
でも、このおばあちゃんはとても不思議なおばあちゃんで、
思いもよらない知り合いが。
成り行き上名前を偽りそんなおばあちゃんと一緒に暮らし始める女性と女の子。おばあちゃんのおかげで様々な不思議な体験をし、家族として絆を深めていきます。
地元の人達にも受け入れられ、おばちゃんの不思議な知り合い達とも仲良くなり、ある困難に立ち向かいます。
悲しい事もあるけどほっこりする体験も沢山。
こんな不思議なおうちに住めたら面白そう。
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ある日、津波にあい、避難所にやって来た萌花とゆりえ。
命は助かったが、身元を聞かれて困惑する二人。そこへ救いの手をさしのべたのは、一人のおばあさん、山名キワだった。
そこから、女三人の不思議な生活が始まる。
私はこの本を読んで、津波で起きる奇跡はあるんだ!と思った。津波は、こわいイメージだけど、こんな共同生活が生まれるとは、思いもしなかったからだ。
ぜひ、みなさんも読んでほしい。
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震災を絡めたお話です。作者の方が、頼まれて書いたって聞きましたが、どうなのでしょう。
直接体験された方は、いろいろ思うところもあるでしょうが、わたしは好きなお話でした。
辛い経験も背負っていかなくてはならないけれど、それを過去として、未来をどう生きていくか。選ぶのは自分自身以外にはいないんだなと。
おばあちゃんが素敵でした。
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震災のとき偶然に一緒に居合わせ、そのまま一緒に暮らすことになったおばあさんと女の人と女の子。それぞれ事情を抱えた3人が、震災後の狐崎で一緒に生きていく。
震災という現実に起こった災害に、遠野の不思議な物語がうまく組み合わされ、暗くも重くもない素敵なお話になっている。前半は、ひよりたち3人の生活に焦点があてられ、後半は遠野の昔話や不思議なひとたちが中心になって、どんどん物語の世界にひきこまれていく。おもしろかった。実際の出来事と物語の世界がとてもきれいに溶け合っていると思った。
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『つづきの図書館』もそうだったけど、現実の世界で困難を抱えている人物が、非現実の世界の住人とかかわることで成長し、自らを取り戻す物語。
こちらは、大震災の東北から始まるので、より書くのにも勇気が必要だっただろう。
DV夫から逃げてきた女性と、両親を亡くし、場面緘黙症になった少女と、謎の老女が被災し、古民家で擬似家族となる。そこに遠野物語のふったちやカッパ、座敷わらしが出てくるところが柏葉幸子らしい。
震災で、封印されていた魔物がよみがえり、それを皆が力を合わせて退治する。
現実の設定にちょっと甘さがあるような気はするが、子ども向けだからこれくらいがちょうどいいのかも。
被災した人が読んでも、楽しめて、ふるさとの良さを再確認できるのではないかと思う。お地蔵さんが心配して飛んで来るとか、あって欲しいよね。
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『ビブリオバトルへ、ようこそ!』で紹介されていたのでまんまと読んでみたのだけど、いやあ、おもしろかった。
介護施設に入所する予定だったキワさん、夫の暴力から逃げてきたゆりえ、両親を亡くして親戚に引き取ってもらうところだった萌花。大きな津波が襲ったその日、遠野の近く、狐埼で偶然居合わせた三人は家族として生活を送り始める。
認知症だと言いながらなにもかもわかっているようなおばあちゃんは、三人が暮らす古家を整えたり、昔話を語ったり、とても頼れるのだけれど、なにやらふしぎな友達がたくさんいて…。
「津波のあの日」から始まる物語だったので、読みだしたときは少しどきりとしたけれど、そこから一つの家族のかたちが出来上がっていくのがとてもすてきだと思った。
おばあちゃんはどこか謎めいているけれど、このまま穏やかに進んでいくのかと思いきや、まさか妖怪たちが登場するとは!
海ヘビの必死さはどこか胸に痛かった。
あと伏線回収が大好きなので、コミセンに取りに行ったシーンで「ああ、やっぱりここはそうですよね!」とテンションが高まってぐっときた。
最後、私も「行ってしまう」のかと思ったけれど、この終わり方すきだ。
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柏葉幸子 かしわばさちこ
1953年、岩手県生まれ。東北薬科大学卒業。「霧のむこうのふしぎな町」(講談社)で第15回講談社児童文学新人賞、第9回日本児童文学者協会新人賞を受賞。ほか
え さいとうゆきこ
1981年、青森県十和田市生まれ。岩手大学教育学部特別教科(美術・工芸)教員養成課程で染色を学ぶ。グラフィックデザイナー、イラストレーターとして活動。現在岩手県盛岡市在住。
カッパ、狛犬、座敷童子、そしてマヨイガ・・・
おばあちゃんと不思議なものたちが、
その土地を愛して、
生きていくことを教えてくれたーーー。
2015年9月10日 第一刷発行
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あの日、両親を亡くした萌花は会ったこともない親戚にひきとられるために、そして、ゆりえは暴力をふるう夫から逃れるために、狐崎の駅に降り立った。彼女たちの運命を変えたのは大震災、そしてつづいて襲った巨大な津波だった。命は助かったが、避難先で身元を問われて困惑するふたり。救いの手をさしのべたのは、山名キワという老婆だった。その日から、ゆりえは「結」として、萌花は「ひより」として、キワと三人、不思議な共同生活が始まったのだ―。
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これもYAブックガイドから。立て続けに読むの巻。遠野物語を3.11に絡めて、っていうファンタジー。妖怪好きにも楽しめる作品だったけど、どうしても気になった点が…。ママの旦那、避難所にちらっと探しに来ただけで、すぐに諦めて帰ったの??ここまで来たってことは、それなりの確信をもって訪ねているんだろうし、そんなにすんなり諦めますかね?子どもの叔父さんの方は、幻覚でしか登場しないのに…。最後の場面の布石ってのは分かるけど、それにしても、結構物語の主軸に近い部分だけに、見逃せない瑕疵に思えてならんかった。
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東日本大震災を題材にしたであろうファンタジー。
残った人たちへの、力強く生きてほしい、負けないでほしいというメッセージを感じました。
現実にあったことや作者のメッセージが強く感じられますが、東北の妖怪や伝説が出てきたりとファンタジー要素も多めなので、重くなりすぎず読みやすかったです。
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いきなりの辛い話に涙が出た(T-T)遠野からきたキワおばあちゃんと、辛い事情をかかえた萌花ちゃんとゆりえさんが名前を変えて岬のマヨイガで暮らし始める。このまま徐々に幸せに…と思っていたら、封印されていた悪いものが大震災で封印が解かれて…(゜゜;)そして岩手県中の不思議なものオールスターズが登場!キワおばあちゃんって何者?(・・;)と思いつつも、身近な川のカッパさんが登場したりして嬉しかった(*^^*)最後には大変だけれども3人がいつまでも岬のマヨイガで幸せに暮らして行けそうで、嬉し涙が…(´_`。)゙
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柏葉幸子『岬のマヨイガ』講談社 読了。震災の日、岩手沿岸の町で偶然出会った三世代の女3人が擬似家族になる。遠野物語の世界観そのままに、人の思いを喰らう魔物に対峙するファンタジー児童文学。震災から十年を迎える節目の今年。見えない何かに怯える昨今、本作が舞台化される意義を考えてみたい。