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国際的な問題をテーマに、ひたすらのエンタメに徹する筆致は相変わらず見事。今回はウイグルを巡る中国の陰謀。ただ、いくつもの不満もあった。
まず、とびきりの謎であるはずの「カーガー」の秘密と素性があっけなく明らかになってしまうこと。新藤をはじめとする任侠の味方の人数が多すぎ、その各々のエピソードが冗長に過ぎるということ。(新藤の単細胞キャラは邪魔だったし、殺人鬼の味方はいらなかった。)中国の蝙蝠軍団たるものがあまりに弱すぎるということ。国際社会、警察組織の闇のいちいちにジャーナリストたる曜子が過剰に驚きすぎるということ。曾埜田の悪役ぶりがステレオタイプ過ぎるということ。なにより、同じような戦闘シーンが長すぎて冗長過ぎた。
ストーリーの骨子は面白く、ラストシーンの余韻も好きだが、途中の戦闘シーンの中弛み感が半端なく、期待はずれだった感は否めない。
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2020/06/23読了
#このミス作品29冊目
元警視で婚約者を殺された主人公が
正義のヤクザとタッグを組み、
中国組織とそれに加担する悪徳警備局長と
戦う構図が面白い。
戦闘シーンも迫力満点のハードボイルド小説。
しかし中国共産党の新疆ウイグルに対する
陰謀パートについてはすごく生々しい。
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野心に燃えるジャーナリスト仁科曜子は、ネタとして追っていたウィグル族に関する情報提供者を目の前で殺されてしまう。
やがて曜子に接触してきた亡命者グループの人々は、中国がウィグル族の人々に対して行った数々の非道な民族浄化と人体実験の生き証人だった。
彼らを抹殺するために日本に潜入した中国の暗殺者たちから曜子たちを助け出したのは、『カーガー』と呼ばれる謎の男・景村。
そして、曜子を守るために送り込まれた武闘派暴力団『菊原組』の新藤をはじめとする男たち。
警察も、外交上の理由から彼らを守ってはくれない。
明日の朝6時までを生き延び、アメリカ政府の保護下に入ることができるのか。
…と書いてみると、なんてヤボなあらすじ。
ごめんなさい。
強大で理不尽な力に抗う亡命者たちのため、命を賭して闘う男達の血の熱さに、ヒリヒリしながら走り抜ければそれでいい!という感じ。
いくらでも非情になれる政治や暴力の世界に生きる男たちが、ときに抑えきれない人としての情のために、公には出来ない立場で誰かを救い出したい時、「影の中の影」である「カーガー」に全てを託す。
「人は裏切るものだ」と知りながらも、「決して裏切らない」と信じることができる相手を得た喜びは、汚い世界に生きているからこそ、得難いもの。
殺人に快楽をおぼえる異常者・樋口の中にさえ、感謝や思いやりの心があることにも、ぐっとくる。
こうしてみると、月村さんの作品が好きなのは、戦闘シーンを華麗に描きながらただの暴力礼賛にならず、女性や子供の陵辱をやたらと描かず、かといってただ弱いだけや色っぽいだけ、優しいだけの都合のいい存在として済まさないところかな。
いわゆる「ハードボイルドアクション」を読んでちっともスッキリしない時は、たいていこのあたりがダメで、勝手にやってろ!という気分になるんだけど、どうやらその匙加減がイイのです。
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ジャーナリスト仁科曜子(主人公)のスマホが鳴った。相手は〈松坂〉である。テギンヤンタク氏と連絡がついたという。彼はウイグル族の民族自決権の確立を主張する『世界ウイグル会議』の傘下組織であるNPO法人『ウイグル人道支援協会』の理事を務めている。
そしてテギン氏から連絡があり、〈今から一時間後大井埠頭の中央海浜公園の駐車場でお会いしましょう〉と…。
「はじめまして、仁科曜子です。このたびはー」老人の背後に三人の男が忍び寄るのが見えた。全員がナイフを持っている。三人が体ごと老人にぶつかっていくのがほぼ同時であった。テギン氏は自分の腕の中で死んだ。
圧倒的な暴力が、人の命を軽々と奪い去ったのだ。何があっても屈しない。それこそがこれまで仁科曜子自らが標榜してきた信条だったではないか。自分は必ず真相を暴く、暴いてみせる。老人が崩れ落ちる時に「カーガー」と言った。現時点では意味不明である。
中華人民共和国の省や自治区の中でも最大の面積を持つ新疆ウイグル自治区。新疆とは中国語で〈新しい領土〉を意味する言葉であり、もともとその土地に居住していた東トルキスタンの民にとっては一方的に押し付けられた名称でしかない上に、自治区と言いながらウイグル人の自治などまったく認められていない。文化、伝統、宗教を徹底的に弾圧する政策を採っており、少しでも抵抗するものは容赦ない暴力が浴びせられる。そこに人権という概念は存在しない。
曜子は裏社会の実態をテーマに取材を続けていくうちに、日本最大の広域指定暴力団矢渡組の組長と定期的に面談する機会を得ている。おもむろに『カーガーという言葉にお心当たりはありませんか』と尋ねたところ、空気が変わった。突然に。組長は意味を知っている。そして、―触ったらあかんで。
小説の序ノ口の重要なキーワードである。
その後の物語は、さながら米国映画を観ている様でした。本当の黒幕は誰か。世の中は、自らのイデオロギーを正当化し、民族のアイデンティティーを駆逐して都合が良い論理を展開しているかのようだ。
ミステリーですねぇ~。
読書は楽しい。