紙の本
イングランド経済を推進するうえで先兵となった海賊たちの歴史的位置づけを平易に提示
2011/11/12 22:30
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は国際政治が専門の獨協大学教授。現代のマラッカ海峡の海賊などを研究している著者が、16世紀のエリザベス1世期のイングランドの海賊たちの活動と、当時およびその後の国家経済への影響をまとめた一冊です。大変興味深く読みました。
海賊のイメージは、テロリストかゲリラかというべき海の無法者。確かに16世紀のイングランドの海賊もスペイン船舶を相手に、掠奪のかぎりをつくす野蛮の徒です。
しかしこの本によれば、エリザベス女王が経済的見返りを期待して海賊たちと契約を結んで投資を行なっていて、それを表だって言い立てはしなかったものの、海賊行為はいわば国家プロジェクトであったのです。羊毛くらいしか取りたてて国際的交易品をもたなかったヨーロッパの果ての国が、大陸の国々と伍していくだけの国力をもつための先兵が海賊だったのです。
スペイン無敵艦隊を倒すための情報収集と軍事活動。
スパイスをめぐる争奪戦。
コーヒー、そして紅茶を獲得する競争。
アフリカ人奴隷の強奪。
こうした16世紀という時代を象徴する世界史的事件の裏側に常に海賊たちの姿があった様子をこの本は解き明かしていきます。東インド会社すら、海賊たちがエリザベス女王に設立をもちかけて出資金を集めた末の組織であったというのです。“学校で教えてくれない世界史”を学ぶことができます。
スパイスが肉の保存用に求められたという記述を以前どこかで目にした記憶が私にもありましたが、この本はそれはありえないと否定し、その上で、スパイス争奪の真の背景は、スパイスが当時は病気や怪我の治療に有効だとされたからだとします。このくだりも、これまで誤って身につけてしまっていた知識を正してもらったというお得感を覚えました。
電子書籍
海賊が作ったイギリス
2020/07/09 09:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスが産業革命を起こして大英帝国として君臨する前の小国だった時代に海賊がエリザベス女王と結びついて果たした役割がよくわかった。スペインの無敵艦隊との戦いや東インド会社に海賊が深く関わっていた。
投稿元:
レビューを見る
最近読んだ本の中でかなり面白かった一冊。エリザベス女王はイギリスを強国にした一人だが、貿易でスペインやオランダに負けを取っていた同国は、女王の名の下に、海賊を使って他国の貿易船を襲撃し、戦利品を横取りしていたという。東インド会社も彼らを中心に作られ、彼らの指示によってケンブリッジの学生がスパイとして各国に散っていたらしい。尖閣諸島でトラブルを起こした中国の船長も、国とは関係ないとしながらも、明らかに国がバックにいると思われるので、同じような状況か。エリザベス女王にはそんな卑怯な手を使ってほしくなかったが、これが世界政治の現状といったところだろう。思えば大国と呼ばれる国の中で、今まで卑怯な手を使ったことのない国なんて一つもないのだから。ちなみに、海賊は海上で真水が手に入りにくかったことから、腐らない水としてお酒を常に持ち歩いていたので、アル中が多かったとか。まさにパイレーツオブカリビアンの世界。
投稿元:
レビューを見る
16世紀、貧しい二流国家イギリスが海賊行為という手法で豊かさを追求し、一流の国家へと変貌していく過程を描いた本。
イギリスでは、国家戦略として海賊が機能していたことがわかります。
学校の教科書とはかけ離れた印象(ただ私がちゃんと勉強してなかっただけかもしれませんが)を受けました。
第一章 英雄としての海賊―ドレークの世界周航
第二章 海洋覇権のゆくえ―イギリス、スペイン、オランダ、フランスの戦い
第三章 スパイス争奪戦―世界貿易と商社の誕生
第四章 コーヒーから紅茶へ―資本の発想と近代社会の成熟
第五章 強奪される奴隷―カリブ海の砂糖貿易
投稿元:
レビューを見る
イギリスの海賊は全てエリザベス女王の後ろ盾があった。最大の敵、被害者はスペイン。イギリスがあれだけ繁栄したのも海賊が世界中の財宝をイギリスに持ちこんだから。それをエリザベス女王が影でバックアップしていた。
イギリスは海賊のスパイ養成としてケンブリッジの優秀な学生も活用していた。
奴隷貿易と海賊による略奪でイギリスは物凄い富と反映を手にしていた。
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパ、殊イギリスの発展のウラ事情が書かれている本。歴史を紐解いてみると、いまの世界の形とその起源のギャップに驚かされる。
・海賊が王家と密接に繋がっていたこと
・略奪と貿易という2つの機能を海賊が果たしていたこと
・スパイス、コーヒー、お茶、砂糖と黒人奴隷、という貿易の大きな流れがあったのがメインの学び。
そこから派生して、
・奴隷貿易を含めた貿易でも受けたお金から、蒸気機関を発明したワットへの投資となっていた可能性というのは、今後の世界の動きというところで見ると、考えておかないといけないテーマだと思う。
・スパイス、コーヒー、お茶、砂糖と黒人奴隷、のどれもが、先進国ではない国々に起源があるということも、考えさせられる。ついつい今の世界のイメージでモノを見てしまうけれど、世界にはそれぞれの国の誇りがたくさんある。
・実はヨーロッパの新興国などに対する寄付文化や貢献活動は、過去のアジア諸国、西アフリカなどに対する罪に対する償いという側面もあるのだろうかと思ったり。
・イギリスがそもそも弱い国だったこと、スペインとポルトガルが大国だったこと、現状と反対で驚いてしまった。
・そしてイギリスという国が這い上がっていく、その始まりとしての16世紀は最高に面白い時代だっただろうと思った。やっていることが犯罪とは切っても切り離せないけれど、限られた資源でどうやって勝っていくかという考え方は、ビジネスでも大切なことで、ワクワクする。こんな昔から、国の外に飛び出していくひとたちがいたのも感激!スケールが小さくても、ドレークやホーキンズのように一旗上げてやる!という気持ちになった。
投稿元:
レビューを見る
ってゆーか女王も堂々と海賊さんたちに肩入れしとったんかい!!
なんて強か!なんて合理的主義!そこに痺れる憧れるぅぅぅ!!!
投稿元:
レビューを見る
某マンガと言うよりは「そして船は行く」の世界。
留学経験の賜物か、日本の学者としてはかなり読みやすい本を書ける人だ。
イングランド(イギリス)ひいてはヨーロッパが中世からどれだけあくどかった事か、お人よしの日本人が太刀打ちできるはずもなし。
投稿元:
レビューを見る
船乗りになりたかったな~職選び間違えたかしら、とか最近思ってるのだけどwオモシロイ本でした。イギリスが資源がないなか、大国にのし上がって行くために海賊をどのように利用したのかがよくわかる。イギリスの諜報活動というのはこのときから盛んなのね。007とかが出てくる背景が理解できた。最近、佐藤優とかがインテリジェンスについて色んな本を書いてるけど、この時代から既に高度な活動が行われてたのね、と感心。歴史の授業では東インド会社がインド支配のために作られたみたいな語られ方がされるけど、ホントは純粋に利益を得るための海賊集団だったのね、ということが分かる。オモシロイ。
投稿元:
レビューを見る
現代の海賊をテーマにしようと思ってたら,なぜか16世紀の海賊の本になってしまったらしい。現代のって「海賊戦隊ゴーカイジャー」とか「ワンピース」じゃないよね…。
海賊と言えばイギリス。エリザベス一世の庇護のもと,スペイン船やポルトガル船を略奪しまくったフランシス・ドレーク,ウォルター・ローリー,ジョン・ホーキンズたちの活躍をまとめている。大航海時代に遅れてきたイギリスが,産業革命を経て栄光の大英帝国を打ち立てるには,海賊の貢献が欠かせなかった。16世紀の終わり頃,スペインの無敵艦隊を撃破した立役者も海賊たちだった。
海賊をやったのは,香辛料とか黒人奴隷の貿易で出遅れてしまい,船ごとかっさらうのが手っ取り早かったから。とはいえ乱暴だな…。ま,海賊だからしょうがないか…。というより乱暴だから海賊なのか。奴隷なんか単にアフリカに行っても何百人も捕まえられない。先行者ポルトガルは,奴隷海岸を拠点に,地元の部族長と結託して効率よく集めてた。そういうのをひっくるめたシステムがものをいうから,新参者はまともな手では勝ち目がない。(人身売買自体まともな手ではないが…)
なので,イギリスの海賊は奴隷船ごと拿捕して,砂糖農場で猫の手も借りたいカリブの島々に奴隷たちを売りさばき,船はわがものにして次の海賊行為に利用する。それがカリブの海賊。著者も執筆のためTDLに足しげく通ったとか(必要か?)。イギリスは,当初略奪をこととしてたが,返り討ちにあって拠点の必要性を痛感し,ジャマイカを分捕る。アフリカー奴隷→カリブ・新大陸ー砂糖・煙草→イギリスー銃・毛織物→アフリカ,という三角貿易。
海賊の活躍で国力をつけたイギリスは,次第にまともに貿易で儲けるようになってくる。香辛料が値崩れしてくると,コーヒーが,その後は茶が重要な貿易品になる。コーヒーと茶,それぞれに一章が割かれて受容史がつづられる。紅茶だけでなく緑茶も人気だったらしい。へぇ。
内容もおもしろく,著者がおちゃめなのもよい(テーマ変更とかTDLとか)。いい本だった。
投稿元:
レビューを見る
16世紀、エリザベス女王時代のイギリス海賊=「女王陛下の海賊」の話。現代の海賊のイメージはいかにして作り上げられたのか。
章によって時代を前後するので、時折前後が繋がらずに首を傾げましたが、イギリスが国策として行った、海賊ビジネスの概要を知る格好の一冊かと思います。
資源の少ない島国が大国へのし上がるため、大国スペインによって作り上げられたヨーロッパのカトリック秩序に対抗するため、イギリスは国策として海賊を使ってのビジネスに乗り出します。
海賊と言えば粗野なイメージが先行しますが、富裕層から貧困層まで、海賊の出自はさまざまです。
大海賊は女王からナイトの爵位を賜っていたし、ただ単なる略奪だけではなくビジネスをする上での交渉術にも長けていました。新大陸からジャガイモやタバコを持ち込んだウォルター・ローリーという有名な海賊は、オックスフォード大学出身のエリート海賊だったそうです。
イギリスに富をもたらした遠洋航海と貿易も、「冒険商人」という名の海賊の功績です。東インド会社なんかは学校の世界史でも習いますが、彼ら商人は海賊です。
そうやってイギリスへ富をもたらし、自らも富豪となった海賊たちが、現在までも続く有名企業の創始者である例はいくつも見られます(「リプトン」や「ロイズ」など)。
国家と密接な関係を保ち、「女王陛下の海賊」として国家の繁栄の先兵となった海賊たち。
現在まで語り継がれる冒険者としての海賊の裏には、そのイメージを作り上げた国家の強かな政策がありました。
投稿元:
レビューを見る
大航海時代あたりに活躍?暗躍?した海賊達についての本。比較的読みやすく書かれていて、面白い。イギリス繁栄の裏話的な感じ。ちょうど学校の授業内容とかぶったこともあり、世界観にのめり込めた。
投稿元:
レビューを見る
大航海時代、世界最強の海賊とうたわれたフランシス・ドレーク。探検家であり女王陛下エリザベスの祝福を受けたかれがどうやってスペインの無敵艦隊を滅ぼしたか。その他、東インド会社の貿易振興も海賊がやってのけた功績。世界史に大きく影響を馳せた海賊たちの歴史に迫る。
海賊の視点から世界史をつく、ユニークな本。
投稿元:
レビューを見る
海賊ブームもあり、海賊の資料本はたくさん世に出回っていますが、そのほとんどがチャールズ・ジョンソンの「イギリス海賊史」と、フィリップ・ゴスの「海賊の世界史」を下敷きにしたもので、あまり目新しいものはありません。
そんな中、この「世界史をつくった海賊」は海賊と世界経済の関係から切り込んでいます。
ジリ貧国家イングランドが海賊を使って大英帝国に成り上がるまでの道のりをドラマティックに描いています。
海賊が国家を救った〈アルマダ海戦〉から始まり、スパイス、コーヒー、紅茶、奴隷などの密貿易、コーヒーハウスから世界初の保険会社が誕生した経緯まで、実に興味深いお話が満載されています。
投稿元:
レビューを見る
女王エリザベス1世の時代、発展途上だったイギリスがスペインやポルトガルのような強国にどうやって対抗していったのか? 「海賊」をキーワードに様々な取り組みが紹介されています。 それにしても現在だったら考えられないような乱暴なやり口だけど、意外と今でもやってることは変わらないのかも。 その他にはスパイスやコーヒー、紅茶の話などが興味深かった。