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電子書籍
白いパラソルが効果的
2018/09/29 09:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和13年(1938年)9月、「文筆」という雑誌に発表された短編。
文庫本にしてわずか3ページほどの作品だから、短編というより掌編小説ということになるだろうか。
太宰治の人生は大きくいうと3つに分けることができる。
まずは放蕩時代。次に結婚して穏やかな時代。そして、戦争が終わって時代の寵児となるものの晩年となってしまう時代。
では昭和13年はどのあたりになるだろうか。
この年太宰は井伏鱒二の紹介で後に妻となる美知子さんと見合いをしている(結婚は翌年の1月)。
この時期を境にして安定の時代に入っていくことになる。
この時期に書かれた作品は「走れメロス」「女生徒」「富嶽百景」など、太宰を読むのに欠かせないものが多い。
そういう安定の予感を感じさせるのが、この「満願」であろう。
太宰が伊豆の三島で小説を書いている頃体験したという体裁になっている。
その町で知り合った町医者のところに通う「清潔な感じ」の若い奥さんがいた。彼女の夫は肺を悪くして、町医者は彼女に夫婦の営みを禁じた。
そしてとうとうその禁止が解かれることになった。
ただそれだけの話ながら、太宰はそんなささやかなことでも書き留めておきたくなるほど仕合せな時間を過ごしていたのかもしれない。
おゆるしが出た奥さんが「白いパラソルをくるくるっとまわ」すシーンがあるが、野村芳太郎が監督した「張込み」(松本清張原作)にもよく似たシーンが出てくる。
脚本は橋本忍だが、もしかしたら橋本は太宰のこの作品のことが記憶にあったのだろうか。
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