期待したほどでは
2016/10/28 13:11
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在のドイツが抱える移民難民に対する課題、それに対する復活したヒトラーの意見、周辺の人々の反応課題などをもっと書き込んでほしかった。
現在のドイツ、そして外国人労働者の受け入れが議論されている日本の切実な問題が浮かび上がってこそ、本当の復活したヒトラーへの恐怖感が増すと思う。
ナチスドイツ幹部についての基礎知識がないと面白味が半減すると思う。
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戦争から時間が経ち、直接関わっていないわたしたちが戦争について考えるとき、皮肉と反省とを籠めてならユーモアもありだと考える。
こういう考えを口にすると、戦争を笑い物にするなんて不謹慎と言われる。
そうだろうか。
戦争について都合のいい部分だけを語ったり、暗くなるからと考えることもしなかったり、見たい物だけを見、無かったことのように遠ざけたりすることの方がどれだけ不謹慎かつ卑怯だろう。
この本は現代に蘇ったヒトラーという読むことに気構える必要のない気軽さで読者を招く。
ヒトラーと現代人のどこかズレた会話を面白く読ませ、ヒトラーを笑っていると知らないうちにヒトラーの側に立っていることに気づく。
ヒトラーの恐ろしさは根本的におかしなことを言っているのではなく、素晴らしい思想であるのにいつの間にか異常な方向へ導くことだ。
ヒトラーはただの異常な男でない。多分に魅力的な男であり指導者だった。だからこそドイツ人たちは熱狂し支持したのだ。
現代のわたしたちも他人事ではなく、いつでもドイツ人と同じ道を歩む可能性は秘めている。
だからこそ恐ろしい。
ドイツでは、総統官邸や党本部の建物が現存していると本書にはあった。正直言って驚いた。
勿論、鉤十字などは無いわけではあるけれど、きっと日本ならそういった建物は遺さないか、記念としてのみ遺すのだろう。
悪い記憶は無くそうとする日本人は、正しい反省は出来ない気がする。
物語と直接関係はないが、気のふれた女が飼い犬の落としものを袋に拾い集めている、とヒトラーが怪訝そうに思うシーンがある。
現代のドイツ人は飼い犬の躾やマナーなどがしっかりしていて、街にも犬の汚物始末用の袋が設置してあるようなことを聞いていたので、勝手に昔からマナーが良かったと思い込んでいたけれど違うのだろうか。ここにも驚いた。
こうした本を読むことで戦争についてひとりひとりが少しでも考える機会になれば良いと思う。
戦争は悲惨なことだ。
でも、被害者である面と加害者であり共犯者である側面とを併せ持つ。
わたしたち民衆は、可哀想な被害者であろうとばかりせず、戦争を避けられなかったことや流されるままだったことを反省し、繰り返さないようにしなければならない。
民衆はいつでも被害者になろうとし過ぎだ。自戒をこめて。
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上巻ではヒトラーの物まねタレントとしてテレビ番組に出演しyoutubeで大人気を博したヒトラー本人、下巻ではさらに自分自身がホストの番組を 手がけさらに有名になっていく。そして、ネオナチに暴行され入院するも、そこで政界への足がかりを掴んで行く。ラストに懐古的なヒトラーの肖像ポスターに 「悪いことばかりじゃなかった」というスローガン、非常にビジュアル的で脳内に映像化したポスターがありありと浮かび、ブワっとさぶいぼが立ちました。ど こぞで目にしたキャッチに2012年にドイツで発行、本国で200万部突破、ヘブライ語を含む42ヶ国で翻訳!!!ヘブライ語で翻訳出版されたんですねぇ(驚)。2015年5月にはアメリカ、2016年今年の4月に日本でも出版されまして、うちの近所の田舎の本屋でも平積みでどーーーんと並んでいました。作者は ティムール・ヴェルメシュ。ハンガリアンっぽい名前ですがドイツ人だそうで、翻訳本はあまり読まないので不勉強分野、初めて読んだ作家です。上巻の滑り出しは確かに翻訳本独特のなんとも言え ない違和感を感じましたが、数十ページも進むとそんなんぶっ飛ばすぐらいの面白さ。文庫ですが字も大きくてページも少なくて字もすくないので、サック リ読めますが、一打一打が結構グッサリときます。私の知るドイツ在住ドイツ人、アメリカ在住ドイツ人、ドイツ系アメリカ人はすべてナチ関連はトップ扱いタブーだという感触 が強いです。2000年にオスカー作品賞をとった、『アメリカン・ビューティー』という映画の中でもホモホビックのフィッツ大佐(あのナイロン袋がぐるぐ る回るビデオを撮っていた男子の父)がナチ党のゆかりの品を収集しているのがえらい秘密であるというシーンが印象に深いですが、あんな感じの扱いが一般的 な感じ(だったと思う)。あれから16年、、確かにこの一年弱久々に日本ですごしてみて私が感じたのはWGIPの呪縛を受けていない世代がじわじわ増えているということで、そこらへんの世代交代具合はドイツでも同じではなかろうかと思う。そこらへんも本書がベストセラーになった要因があるんではなかろうか。それと単純に本書が面白いのは総統本人が数十年の時を経て現世に突然ぽっこり現 れて、カルチャーギャップに立ち向かう様子。クリシェではありますが異文化交流コメディは外れず面白いです。本書もそんな”異邦人”を笑う方向なのかと思いきや、実際そんなに笑えない、総統の才能がすごすぎる。総統の言う事がいちいちと納得できたりしてしまう、そしてだんだんと総統に やりこめられる人々を笑い、胸のすくような気分にしてもらっている自分に気付く。そう、あの当時もナチは独裁ではなくて民主主義において投票で選ばれたんですねぇ、当時のドイツ人はこれを読んでいる私よりももっといい気分にしてもらったんだと思います(彼等には前例はなかったことですし)。本書でも強調しているのだが、そこんところをキッチリと胸にきざまんとあかんちゅうことです。日本も同じですねぇ。とんでもない政治家が出て 来て、非常に国内外全ての方向に向けて恥ずかしい気分にさせられますが、そんな政治家も選んだのは国民だということで、げにおそろしきかな民主主義。この 本を読んで���どう思うかは読んだ人のもんですが、きっと多くの日本人のキモを冷やすことだと思います。これ、、もし総統本人ではなくて総統と同じぐらい天才が今、どこかに生まれて育ちはじめていたら、、、。夏に向けていい納涼小説、、、ぞわーーー。
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下巻も読了。ドイツという国を通しながら自国に置き換えてみたりいろいろ考えさせられる部分もたくさんあって、でもエンタメ作品の楽しさもあって引き込まれる作品でした。公開される映画も見てみたいな。
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上下巻通して面白かったのですが、ナチス・ドイツおよびアドルフ・ヒトラーを詳しく知っていると、なお面白いのだと思う。
私は知識があまり無いまま読んでしまったので、そこそこの面白さで終わってしまった。
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本作の“ヒトラー”は、「演じる役柄に100%なり切る」というような方法論で、出番以外の場所でも“役”として振る舞うという、少し奇人のように見える正体不明な芸人として関係者の前に現れるが…「狂気の独裁者」というような禍々しい人物という印象は薄い。「1945年の56歳の男」という以上でも以下でもないようにしか思えない…
書評や、作中の“ヒトラー”が示唆する史実に関連する解説等、面白い内容も添えられた本で、非常に価値が在ると思った。他方、個人的には「1945年5月時点の記憶、考え方のままの56歳の男」の目線で、「何やら嘆かわしい?」というトーンで語られる、或いは「些かの誤解」で評される現代の様子という描写が、非常に愉しかった…色々な「読み方」が出来る作品だ…
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ヒトラーは悪魔か怪物か。
漫画ではその方が都合がよい。キャラも立つ。絶対悪なのだから問答無用で打倒すればよいし、封印されたのだから触れてはならない。話題にしてもいけない。ハーケンクロイツを描くなどもってのほかだ。
現実のヒトラーは人間であり、民主主義で選出された政治家である。
本作のヒトラーは「実はいい人」とは描かれていない。崇高な政治家でもないし、私利私欲を求める悪人でもなく、常軌を逸した復讐者でもない。
彼は何者なのか。
本書解説に「持たざる者が世界に対してどれだけ効果的に怨念を晴らせるか」の一文があった。
「持たざる者」は「持てるもの」の帰結である(研修で「勝者の人生脚本」というテーマがある。「勝者に必要なものは何ですか」の問いに対して、模範解答としては自己責任に帰着する答えを求められる。しかし、勝者に必要なものは「敗者」である)。世界がゼロサムでなければ持たざる者にも「チャンス」(「幻想」という言葉が適切か)はあるが現実は...
ヒトラー的な世界観では、他者(勝者)を滅ぼせば成果は手に入る。そのためには闘争(戦争)が不可欠で、争いが避けられないのであれば勝つしかない。
敗けたらどうする?相手にも何も渡さない。どうせ元々ゼロなのだ。失うものは何もない...
まさに中二病だが「あながち的外れとはいえない」ところが恐ろしい。
「ファシズムは資本主義の鬼っ子」という文を見たことがある。ファシズムに勝利し、共産主義に勝利し、日本型資本主義(?)にも勝利した欧米型資本主義(株主資本主義)は、怖いものなしの勢いで1%、いや0.01%の勝者と「それ以外すべてが敗者」の世界に向かっている。
99.99%の敗者はもう一度ヒトラーを召喚しようとしているのではないだろうか。
ナチスは少なくとも朝鮮民進党よりはマシに思える。
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芸人としてブレイクし出したヒトラーだが、徐々に政治の世界に足を踏み入れていくようになる。
恐ろしいことは、ヒトラー自身は昔と変わっていないこと。
周りの人間がWWⅡのことは過ちであったと認識しているはずなのに、現代社会で問題になっている経済問題、移民問題について、ヒトラーの発言する民族主義的発言に人々が扇動されはじめてしまう。
そしてヒトラーが本格的に政治の世界に参画するところで話は終わる。
過去を意識して反省しないと人は容易に同じ轍を踏む、その恐ろしさを再認識させられた小説でした。
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映画を見た後に一気に上下巻読了。一人称で語られる本書はヒトラーの振る舞い・考え方・演説力をより近く感じられる。一歩間違えると危険な書になるかも。
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前編に引き続きの後編。
映画とは全く異なる終わり方で、この後編の先は読んでる皆様にお任せのあたりが、本らしくていいかなと。
やはりヒトラーの力というのは自然だからこそ驚異的であった。注目のされ方が当時とは異なるが、現代に蘇った時の恐ろしさを感じた。
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なぜかヒトラーが60年ほど冷凍保存され、2011年の現代ドイツに1945年4月末の意識を保ったままよみがえる。
ヒトラーが手がけたきた行為を反芻しながら、本書をよむことが、いかに面白いか。
映画化されたものは未聴だが、これは活字でなくては伝わらない面白さと著者の工夫が随所にある。
本書は、現代ドイツ版の『パパラギ』だろう。
70年前の筋金入りの国家社会主義者からみた現代は驚愕と落胆の連続であり、現代人からすれば懐古的な思想と発言しかできない男をどこまでも訝しく思う。
そして、それは徹底的な風刺であり皮肉であるが、そしてその皮肉を発する主体である「ヒトラー」その人物も、周囲からすれば「ヒトラーになりきった人」という見え方しかされていない。いかにこれが皮肉なことか。
現代におけるヒトラーの滑稽さと、ヒトラーから見た現代の滑稽さを、相当意識的に混同し、読者を困惑させる。賛同はしないが、応援は心から行う。
そういう小説ではないだろうか。
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なかなかの良書。読売新聞にこの本の著者のインタビュー記事が載っていた。それによると著者はヒットラーの著書の贋作を書くことを思い至って、本書を執筆したとのこと。贋作よりもこういったSF(?)にすると面白いし、ぞっとさせられもした。笑えたが最後の一言、「悪いことばかりではなかった」という、ヒトラー再起の選挙ポスターの文言が衝撃的だった。
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微妙。
ヒトラーのことを詳しい人なら面白いのかも。。
私はあまり面白さを感じなかった。
この手のものは映像で見たほうが良いのかも。
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下巻はあっという間。ヒトラーは常にある意味正しいことを言っている。会話のミスマッチが大きな違いを生んでいるのみ、人々はそれを笑っている。あの時代もこうしてヒトラーという人間をドイツ人は選んでいったのだろう。誤解を恐れずに言えば、ヒトラーも信念の人であり、自分の原理原則にひたすら忠実ないち政治家だったのだ。それを受け入れた国民も、こんなはずじゃなかったと思ったけど時すでに遅し。でもそれが民主主義でもある。よい政治家とは何か、よい国民とは何か。それを考えさせられる作品。
最後の「悪いことばかりじゃなかった」というスローガン。笑える?笑えない?複雑で、しかも最後の最後にズーンと重く心にのしかかってきた。
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2011年のベルリンの路上に、アドルフ・ヒトラーその人が現れた。
独特の視点で社会を見つめ、鋭く批判する姿は「前衛的で過激なコメディアン」として受け入れられていく…。
ヒトラーの主張する「一理ある」ように思われる言説と風刺に納得し、笑いながら、ふと
「この人、アドルフ・ヒトラーなんだよね」
と思い出したときにおこる一抹の不安。
本の終わり方と併せて、素晴らしい小説でした。
映画化され、その作品も見ましたがそちらも面白かったです。