紙の本
うう、過ごすぎる!!!
2002/07/28 16:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:marikun - この投稿者のレビュー一覧を見る
既読のエルロイ作品の中ではベスト!
ハードボイルド好きの人には絶対に絶対にお勧めです!!!
この作品でエルロイは一皮むけた気がします!
上巻でストーリーのおおまかな展開の説明が終わり、
いよいよ下巻では本格的に事件が展開していくのですが、
例によって事件よりは、人物に焦点が当てられた形で
物語は進みます。しかし今回は、その展開がどんぴしゃりと
はまって大成功!読了後に深い余韻が残ります。
連続殺人の真相に迫るうちに、自らの性癖に気付いて悩む
若くて才能のある郡保安官のアップショー。
妻から離婚の申し立てをされ、子供を手元に残すためには
どうしても今回の事件で名をあげ昇進したいコンシディーン。
そしてマフィアの情婦と命をかけた恋愛に溺れるミークス。
三者三様の理由ながら、3人とも命をかけて事件の解決に
望みをかけます。そしてその事件の解決は…。
とにかくラストが良いのです!
(説明にはなっていないのですが(^^;))
前作「ブラック・ダリア」で、心の中にわだかまっていた
もろもろを消化できて、作家として成長したと言う見方は
うがち過ぎでしょうか?
解説は法月綸太郎氏。やはり、するどい解説なのです。
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やっと読了
天才だと思う
最初から最後まで続く、相変わらずの短いセンテンス、記号での繋ぎの応酬、相変わらずのキャラクターの多さ、その労苦をはるかに報いるカタルシスが得られる精密にはりめぐらされた伏線と完成度の高いプロット
非常に完成度の高い作品です
暴力や低俗な描写なんかは、この人の場合彩りにしかなっていない
前作のブラックダリアはエルロイらしいミステリー小説という枠を抜け切れなかったような気がするけど、このビッグノーウェアは人間模様、人の情念や業、社会情勢、物語、謀略、暴力と、あらゆるものを含有してる小説になってます
内容はというと、上巻のレビューにも書いたように51年の始めに起こるホモばかりを狙った猟奇殺人に端を発し、50年代初頭にあったハリウッドを依り代とするアカ狩りの大陪審を基盤にして進行していきます
バズ・ミークス、ダニー・アップショー、マルコム・コンシディーンの3人の主人公の視点が交互に変わり、3人夫々が抱える事件がホモ殺し事件、大陪審、警察汚職、マフィアの抗争の真相を洗い出していくというもの
特筆すべきはダドリー・リーアム・スミスの完全に近いと形容できる邪悪さだと思う
どす黒い瘴気か何かが蠢いているような恐怖感で終盤ずっと震えていた
人の形をした悪というものを文章で描けるもんなんだと感心したもんです
エルロイが描く人間たちは少年ジャンプのタイトルのような完全懲悪ではなく、どれも人間らしい叩けば埃のたつ人たちばかりだけど、何故かダドリーにだけは人間が生来から持つ善というものを微塵も感じさせない
アメリカのアマゾンでダドリーシリーズなるものを見つけたと何処かのサイトで報告を見つけたんだけど、ペーパーバックが読めるようになったら一度読んでみたいもんだ
もう一つ、良かったのがバズ・ミークスだ
近年ここまで格好良いと思えた男はいないと思えるほど、バズには叩きのめされた
金や権力に翻弄されず、常に自分の立ち位置を把握したうえで自分の流儀を通す
熱くなりすぎずヒリヒリしたぎりぎりのラインで立ち回る姿は圧巻です
エルロイもバズ好きなんじゃないかなー
物語は下巻の終盤にきて超展開を迎え、エルロイの真骨頂ともいえる伏線が終点に向かって収束していくという手法で圧巻の結末を迎えます
これが映画化しないってどういうことよ?
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『ロス暗黒史』4部作の第2册目。動物に噛み切られたような跡が残る惨殺事件が続く。事件に執念を燃やすLA保安官事務所のアップショー。ハリウッドにはびこる赤狩りのための特捜チームに加わったLA地方検事局のコンシディーン。LAのギャング、ミッキー・コーエンの元で情報収集家をやる元腐敗警官の“バズ”ミークス。赤狩りと惨殺事件の共通点が明らかになるにつれてLA市警殺人課警部補ダドリー・スミスが動き出す。
『ブラック・ダリア』よりも複雑でさらに登場人物が多くて大変だった。1940年代のアメリカの人種差別と腐敗が恐ろしい。
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集積回路におけるムーアの法則を思わせるのが、フィクションにおける残酷描写の暴走ぶりです。
特に映画はVFXの飛躍的な進歩によって、ショッキングシーンの歯止めが無くなった感があります。
そんなフィクションに親しんでいる我々ですから、今さらいくら暗黒シリーズと言っても、20年以上前の小説に過度の刺激はないだろう、と思ったんですが、なんの。
後半の盛り上がりぶりは、人間性の奈落に向って、読者の襟首掴んで暴力的に覗かせるような迫力です。
巧いなあ、と感じたのが、鼬の使い方で、その凶暴な生態の描写が非常に巧み暗喩となって小説全体の基調低音となっている。
最終章でのアメリカン・ヒーロー物(というかアンチ・ヒーローですが)的な終劇のさせかたは、伝統芸も出来るんだぜ、という芸域の広さを感じさせますね。
ダドリー・スミスの悪魔的な造詣が冴え渡り、このキャラクターは、もっと世に知られても良いのでないか、と感じました。
デカクて強くて凶暴で悪賢く、自らの信念と欲望だけに忠実な悪魔。
アメリカではフォロワーとかあるんでしょうか?
ちょっと知りたいですね。
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複雑な人間関係と残虐な事件が結末へ一気に集束していく。まとめ方がうまい。全編を貫く鬱屈したアメリカ、腐敗したアメリカの姿は心に残る。
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読書会にむけて再読。暗黒のLA4部作の第2弾。ブラック・ダリアをうまわらんばかりの凄惨な方法で殺害され陵辱された男の遺体が発見される。こうして最初から提示された同性愛がひとつのテーマ。真面目に捜査にあたる若い警官ダニー・アップショーは受け入れることを考えることさえできない本当の自分と向き合わざるを得なくなり、じわじわと追い詰められていく。ナチス、赤狩り、コンシディーン、バス・ミークス、静寂の大きさ、それぞれの愛の形。カリフォルニアの青い空の下にたまった膿が一気に噴きだした感のある、異常性で突き抜けた作品。
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「暗黒のLA4部作」の「ブラック・ダリア」に続く2作目。
読み始めは苦戦したものの、途中からどんどん面白くなり、「ブラック・ダリア」を凌ぐ面白さだった。
主人公のうち、ダニー・アップショー、マルコム・コンシディーンの二人がうちに秘める自身の弱さと、それが露呈することへの恐怖感が、特に自分には共感できる部分だった。
そして、チョイ役と思われたバズ・ミークスの漢気(警察などの体制側にはそんな人は出てこない)に涙が出る。生き延びて欲しいと思った。