紙の本
何でもない今の幸せが、ものすごく大切に思えて、怖くなる。
2010/08/20 10:24
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松作品には、昭和40年代生まれを主人公にした作品がいくつかある。そのどの作品を読んでも、昭和43年生まれの私の胸には痛いほど響いてくるのだが。比較的それらの作品では「何でも無いような当たり前の人生」が実実は結構大変なんだよと、それでもドラマチックで、やっぱり素晴らしいのだと表現される事が多いように思う。ただ本作品は、それらの作品とは少し違うように思う。主人公の4人には、とても「普通」とは言えない人生が待っていたのだ。
3人の少年と1人の少女が、昭和初期に炭鉱の町として賑わった北海道のとある町の丘で、夜空を見上げた。美しい夜空を見上げ、ここを「カシオペアの丘」と呼ぼうと決める。そして再開発が決まったこの丘が、いつか遊園地になればいいのにと願いあった。少年の1人はその土地再開発を担った有力者の孫であったから、その夢はきっと叶うだろうと少年達は思っていた。しかしそこで起こった炭鉱事故の真実を知るに連れ、少年達は仲の良い友達同士では、いられなくなった。そして少年達は、大人になった。
離れ離れになった少年達を、辛い現実が襲った。一人の少年は事故で一生足の自由を奪われ、一旦東京に出た少女は辛い堕胎を経験し、地元に戻って少年を支える事を決めた。職を点々とした少年はテレビプロデューサーとなり、あまりに辛い事件の担当となり被害者と共に苦悩する。炭鉱事故を起こした会社の総帥を祖父に持つ少年は逃げるようにして東京へと出て結婚し、子供を設け幸せな日々を送っていた。しかしある日突然、胸に癌が発見されるのだ。あと、たった半年の命。そこで考えること。家族のいとおしさと、過去への憧憬。そして清算しなければならない、他の少年たちへの思い。その思いを抱えて、少年は故郷へと帰って行く。
良く言われることだが、何にもない平凡な毎日こそが幸せだと。家族みんなが健康で、笑顔でいられる事。それ以上の幸せ等無いという事。その幸せを、暗く覆うように突然襲う病魔の影。そんな晴天の霹靂がいつ自分の身に降りかからないとも分からない。今日この日を、大事に生きねばならないなと考えさせられる。そして万一そんな事が起きてしまった時に、一体何が出来るか残してやれるのか。考えておかねばならないなと、痛切に思わされた。
電子書籍
再会の丘
2020/05/24 09:41
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼年期をともに過ごした4人に待ち受ける、過酷な運命に胸が痛みます。再会を果たした時のそれぞれの葛藤と、忘れかけていた大切な思い出が感動的です。
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長い長い、『その日のまえに』。
随所で泣けてきて中々読み進められない。
思い出、家族、重なるものがたくさんあって、本のことで泣いてるのか自分のことで泣いてるのかわからなくなる。
この人は他にもそういう作品あるし、色んな要素を凝縮した感じもするけど、やっぱりそれがいい。
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様々な形の「死」と、
それに対する人々の考え方が
生々しく露呈されている。
過去の家族の死に関わった
幼馴染の親族への感情。
大事な娘を失った悲しみ、そして恨みを
誰とも共有できない、向けられない辛さ。
そして自らの死に直面する中で、
恨みを持ち続けた祖父に会おうとする決意。
この作者の「病気で家族が死ぬネタ」は
はっきり言って何度も使いまわされている。
それでも読みたいと思えるのは
自分たちの周りでいつ起きてもおかしくない、
今まで経験していてもおかしくないような
身近で普遍的なテーマだからかもしれない。
そして何より登場人物がみな
「強くない人間」だからというのも
あると思う。
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登場人物ごとの場面変更と炭坑を中心とした物語の進み方など上下巻立ての長編だからこそのゆったりとした進み具合。読み終えてすぐ下巻を読みたくなりました。あとから重松氏の最長編の作品だったと知り、ひとつの物語に長く浸っていられるのも悪くないなと感じました。
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10/04/25読了 重松作品だしと言う先入観というか信頼感は裏切られることなく。微妙な心理描写が心に響く。
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上下ともに,感動しまくりです。なにより,重い。
テーマがたくさん盛り込まれているけれども,「生」という星座で完結するお話なのだと思う。
この物語は,「死」ではなく,「生」の話だと思う。
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ないた。ないた。
おとんもそうだったのかなって泣いた。
かぞくって?とか、おさななじみって?とか考える。
でも、小学四年生の頃に仲良かった友達ってそんなに残るものだっけ?自分にはない思い出だから悔しいだけなのかな。
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エロゲなんかでファンタジーに死ぬことにある意味慣れてる分、ガンという、自分の身にも起こりうる話は身につまされる。
余命半年なんて宣告されたらどうするかな~?やり残してるエロゲを全て終わらせるかな~。なんて考えてしまう僕は生きることに対して傲慢なのだと思う。マジレスすると、一人でも多くの友達に電話して「ありがとう」って言いたいね、僕は。
なるべく間を空けずに下巻を読みたい。
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やがて、胸の痛みはひりつくような懐かしさに変わる。帰りたい。会いたい。帰れないし、会えない。謝りたい。二人に。拳が胸を打つたびに、ずっと閉じこめられていた思いが切れ切れに外に出てくる。二人は、もう忘れてしまっただろうか、あの丘を最初に「カシオペアの丘」と名付けたのは、僕だったのだ。
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『結論を出すためでも、相手を言い負かすためでもない、ふわふわと漂うような言葉のやりとりが、何よりも幸せなんだと、今は心から思う。』
上巻。ふるさと、悪性腫瘍、男女、家柄、様々な境界条件の下に展開される贖罪の物語。贖罪って、一口に言えばサマになるけど、書き表すには非常に難しいテーマだと思う。行き過ぎれば、安っぽくなってしまうし、短過ぎれば、ただ痛いだけになる。此の人のすごいところは、テーマに合わせて等身大の表現(もちろん対象読者層にとって)で描いている所だろう。生死を絡めた心理描写にあたっても、難しい表現は一切使っていない。胸がいっぱいになっている自らの未熟さを実感しつつも、どう収束させるのか期待に胸膨らませる自分がいる。
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図書館で借りてきて読んでみました。
「生きる」ということと、「死ぬ」ということを
改めて考えさせられる作品です。
物語の中でも特に
小学5年生の息子を持つ、余命数ヶ月の俊介と
一人娘を殺された、優しい父親の川原さんのやりとりが
深く心に残りました。
下巻も借りてきて読んでみようと思います。
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三つの時代構成の中で運命に翻弄された仲間達が、様々な死に直面しながら、生きることと許されることに向き合う物語。
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この作家とは、同じ時代を同じキャンパスで過ごしていたらしい。どこかで絶対すれ違ったか、教室で隣の席に座っていた可能性も濃厚。ということで、大変楽しみに読んでみたのだけれど、いまいちメリハリないストーリー展開に、星ひとつ。下巻までは読まずに終了。
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許されたい人、許したい人、生きたかった人、死にたかった人、残された人
自分の余命が3ヶ月と宣告されたことをきっかけに、罪の意識から離別した幼馴染みと向き合う。 生と死について考えさせられる本でした。
毎晩読んでは泣いて、泣いては読んででした。。
「結論を出すためでも、相手を言い負かすためでもない、ふわふわと漂うような言葉のやりとりが、何よりも幸せなんだと、今は心から思う。」
「たとえそれが後悔や自責の念しか生まなくても、向き合わずにいられないのが、俺は、愛なんだと、思う。」