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怪(あやかし)
2001/03/23 04:27
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投稿者:しおん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第6回電撃ゲーム小説大賞・金賞受賞作品。電撃のサイトで受賞作発表時に、公開された粗筋からもっとも期待していた作品。
欧州のとある国で始めに発見された特殊遺伝子保有生物。日本では、彼らを「怪」(あやかし)と呼び、知性を持つ甲種とそれ以外の乙種に分けている。いわゆる大阪条約により甲種には人権が認められていた。
片倉優樹、彼女は、「怪」であり、日本国内閣総理大臣公認甲種指定生物であり、警視庁刑事部捜査第六課所属の巡査部長である。頭髪の色と、鼻が利くことから、彼女は「白髪犬」と呼ばれ、その能力ゆえに恐れられつつ、警察内部では嫌われていた。
優樹の所属する部署に、山崎太一郎巡査が出向してくる。六課は渋谷のとあるビル内にあり、その存在位置は秘密とされている。張り切る太一郎だが、警察内の人間としての面子の問題もあり、六課にはほとんど仕事が回ってこない。六課の室内に残ったおびただしい前任者の注意書きと、遺留品の数々。歴史を感じさせて物語の世界設定に奥行きを作り出していると感じる。
太一郎の申し出による、彼と優樹の組み手訓練。怪である優樹の圧倒的力の前に、上背では上回っている太一郎も完全に敗北。しかし、太一郎は優樹の格闘術の無駄を発見し、まだまだ強くなることを指摘する。このへんのエピソードは好き。努力で自分を高めていく人種と、手抜きでも余裕で高い能力を出す優位者との絶対的差。
太一郎と優樹の勤務描写。一人に偏ることなく、二人を同時並列的に心理描写していく巧さを感じる。目を失い、耳を食われ、ヒロインがずたずた。スプラッタな描写がライトノベルとしては目新しく新鮮。銃器関係に凝った作品はけっこうあるが、やりすぎるとオタク丸出し作品になるが、適切にやればリアリティが増す。銃器や格闘術など詳しく書き込んであり、作者が女性であることからやや意外に感じた。
「大阪条約」という設定用語(かっこいい)や、色々出てくる政治的な架空設定が作品の雰囲気をいい方向に盛り上げている。
優樹は容姿はハイティーンで止まっているが(背も低い)、年齢は26歳であるという設定。人生経験的な考え方などは頷けるが、やや台詞周りが幼い印象。しかし、独特な言葉遣いや台詞内容には魅力がある。
過去の作品を考えると、「退魔官 赤神恭也」(ことだこうたろう・電撃文庫)や、「闇色の戦天使」(神野オキナ・ファミ通文庫)あたりが連想された。
特に後者は主人公が異種であり、相手の人間との間の心の交流や葛藤を描く所など、テーマ的にもかなり似ているなと思った。
「ダブルブリッド」とは作品中に説明が出てくるが、ダブル・ハイブリッドの略らしい。優樹は怪の父と人間の母の間に生まれたダブルブリッドであるという設定。当然、生い立ちに関する人間的(あやかし的?)悩みも描かれる。
「あやかし」が何だー!
2002/08/08 11:45
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投稿者:ヤーサン - この投稿者のレビュー一覧を見る
何か差別をはっきりと書いたような感じですよね。主人公ユウキを取り巻く環境が、すごく冷たく感じました。それを受け止めている本人もすごいし、「自分ってなんだろうな?」って思ってしまいました。
終盤になると、すごいグロテスクな場面が増えてくるんですけど、でもそうなのかな…って思ってしまいました。
これからどうなるのかがすごい楽しみです。
この作品の根底に流れるものは愛である
2001/03/13 16:24
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投稿者:太田コロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第六回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞。著者があとがきで書いているようにこの作品の根底には愛がある。
主人公、片倉優樹は通称 怪<あやかし>と呼ばれる特異遺伝子因子保持者。再生能力を持っているのにケガをするとひたすら痛そうである。化け物と呼ばれながら、そう呼ぶ人間の為に闘わなければならない優樹。なぜそうまでして闘わなくてはいけないのか、そう聞きたくなる。
それを救うのはもう一人の主人公、警視庁所属の山崎太一郎である。彼と彼女はお互いの立場と観念を越えて通じ合っていく。
この物語はやっぱり愛の物語なのである。
直球ど真ん中
2002/03/08 12:07
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投稿者:十二番目の男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一言で言うならば、グロテスク。丹念に(時々は恐ろしく荒っぽく)描写される肉体破壊のシーンは、人によっては受け付けられないかもしれない。しかしこの醜悪さが、電撃文庫をはじめとするヤングアダルト小説の主流になりつつある。勇者が剣を振り回す時代は、確実に終わりに近づいている。
ただグロテスクなだけならば、スプラッタ小説・ホラー小説に分類されるだろうが、ダブルブリッドがそれらに区分されないのは「グロテスク、だけじゃない」からだ。人間離れしたアヤカシ故の、凄惨な戦闘シーン。それに対応するように描かれているのが、あまりにも人間的な生活感とぬくもりである。
21世紀のヤングアダルト小説の方向性をうかがい知る上でも、参考になるであろう一作。独特の奔放な文体にも注目したい。