「思いこむ」プロセス
2005/06/10 10:39
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:関東蒲公英 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「誰かの夢を見たらその人がその日亡くなった」、「飼っていた犬が騒いでいると思ったら地震が起こった」、我々は日常的にこんな話をよく耳にする。そして多くの場合、我々はこうした事柄から人知の及ばない未知なる力や超常現象と言った物が存在していると漠然と信じている場合がある。仮に上記の行為を馬鹿馬鹿しいと一笑する人でも、「おみくじで大吉が出たら嬉しい、大凶が出たら気分が悪い」とか「結婚式は仏滅には行わない」とか「子供が出来た時に姓名判断の本を読んでみる」等という事に関してなら多少の心当たりがあるのではないだろうか。
また、これに限らず、我々の世界では実に多くの人が「私はこの目で○○を見た」とか「私はこんな体験をした」という事例に基づいて、ある種の超常現象を立証しようと試みたり、信じたりしている事に気がつくのではあるまいか。
本書では、こうした「超常現象」の存在その物の是非を論じる事はしていない。超常現象があるか無いかの判断は敢えて行っていないが、一般的に我々が信じている事や、偶然にしてはできすぎていると考える事例について、確率論的な分析や、心理学的な分析、人間の生物としての特徴を踏まえて、様々な角度から「思いこむ」という結果に至るプロセスを紹介している。
例えば、人間の目が如何に多くの錯覚を起こす物であるかや、同じ物を見ているはずの人間が、潜在的な意識の違いによって全く別の物だと証言したりする事例、まったく因果関係の無い2つの出来事に関連性を見いだしてしまう人間の本能や心理について、実に様々な検証がなされている。
作品中では、こうした「思いこみ」を利用したいくつもの意地悪な「例題」が図表を交えて示され、解答した後に「騙された」、「しまった」と気がつくプロセスが面白い。また、どうして間違った考えをしてしまったのかを心理学的に説明してくれて、読者の好奇心を刺激して止まない。
この本を読めば、実に多くの迷信やジンクスの類が確率論的には「ごく自然」な事だと理解できるし、超常現象と信じられている物の多くが「誤解」や「錯覚」など「思いこみ」による産物である事が理解できる。
しかし、その上でなお、作者は超常現象を否定したりはしていない。超常現象は本当にあるかもしれないが、そう信じられている物の中には、心理学的に、確率論的に立証できる物が多々あるというスタンスで話がなされている。
読後に、自分の「目で見ている世界」、自分の体験した「記憶」についてふと懐疑的になったり、視野が広がった様な感覚になる。
超常現象を信じる人が、その立証をより正確な物にする為にも、超常現象を否定する人がその立証を確固たる物にする為にも、はたまた人間の「思いこみ」や「錯覚」という世界が如何に多くの場所で日常的に起こっているのかに興味がある人も、読んでみる価値がある一冊だと思う。
「超常現象」がタイトル頭にありますが、心理学の本です。
2002/02/18 01:06
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:torikata - この投稿者のレビュー一覧を見る
超常現象ファンのわたくしとして、タイトルに惹かれて読んでみましたが、残念なことに心理学の本でした。
「事実でない(かもしれない)のに、人は信じてしまう」わけで、その背景とか理由とかプロセスを心理学の観点から分析したものです。わたくしとしては種々の超常現象がサンプルとしてでてきて楽しめるかな、と思ったのですが、それは当て外れでした。UFO関係に関しては、と学会の皆神氏の解説本を「よくまとまっている」と引用しておられます。最近のと学会本って、「例会をまとめて作ってみました」というお手軽系と、「きっちり調べて分析しました」の本気系がある気がして、このUFO本は「本気系」です、って、と学会の本の書評みたいになりました。えっと、この本の著者は、写真からするにまじめそうですが、類書が多いみたいですね。
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内容がとにかく面白い!!認知心理学的な観点から、様々な生活の中での“体験のあやうさ”を検証していきます。
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気功やヒーリングなどの世界から学ぶところは多い。だが、まずこの本を読んで、思考を他人に預けずに学びたいところ。
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▼100文字感想▼
自分の考えることなんてホントに疑わしいものだと
知った。結局、自分の体験が強力に記憶にこびり
ついてるんですね。さらに、自分が目で見たことや、
過去の思い出さえも疑わしいという事実に驚いた。
相手の意見を受け入れられずに悩むあなたへ!
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▼3つの共感ポイント▼
■人はそれぞれ「自分の見たいと思っているように
ものを見る」知覚システムを備えているのです
(P54)
■なんとなく気になるという気持ちから物事を見ると、
そこに確証バイアスが働き、やがて強力な信念
さえも生み出すこともあるのです(P129)
■過ちを犯しやすい自分自身の認知を謙虚に知る
ことこそ、人生や社会のさまざまな問題に立ち
向かう際の基本ではないでしょうか(P206)
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[ 内容 ]
UFO、虫の知らせ、星占い…。
科学的には証明できないことも、実際の体験をとおして信じてしまう。
しかしその「体験」は、本当のできごととは限らない!
超常現象の実在を信じてしまうのは、人の思考システムの本質がかかわっている。
[ 目次 ]
第1章 「信じる心」はどこから生まれるのか?
第2章 「自分の目で見たもの」は信じてよいのか?
第3章 体験していないことをなぜ「体験」できるのか?
第4章 その考え方は正しいのだろうか?
第5章 それは本当に「めったにないこと」なのか?
第6章 「信じる心」を生む「体験」のあやうさ
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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2003年1月購入。
幻覚やら幻聴やら錯覚やらに悩んだときに、この本にずいぶん助けられた。「ねこは青、子ねこは黄緑―共感覚者が自ら語る不思議な世界」も同時期に読了。
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得体の知れない団体に誘われたときにこの本を読んでておかしさに気づきました。
・人は体験(非化学、偶然の一致も)から信じる心が生まれる
・判断する際に、何が事実で何がカンにすぎないか分類
・確率的なものの見方(可能性を評価)
・懐疑的に情報を見る目(クリティカルな目)
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人の認知機能にはバイアスがあり、誤りを起こすようにできている。このことに意識的でないと、正常な判断ができないので注意すべきである。当然、ビジネスの場でも気をつけなければならない。
この原因は、省エネルギーの認知情報処理をしているためで、人の能力が低いからではない。同様の誤りは、自分自身が体験、記憶したことにも起こる。さらに、自分の予期に合致するような情報が選択的に知覚されるバイアスがかかり、認知が歪められる。
これを防ぐためには、自分の見つめる上位のメタ視点を持つことが大事であり、自分と反対の視点に立ち、4分割表などで確率を論理的に議論すべきである。
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人間が陥りがちな様々なバイアスが分かる本。
こういうのを知っておくだけでも、胡散臭いものに騙されにくくなる。
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健康食品などの代替医療を盲信してしまう患者さんの心理が何となく理解できた。
さらに、そのような患者さんへのアプローチ法のヒントも得られたような気がする。
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良書。この一言につきる。
唯一気に入らないのは、なぜこんなタイトルにしたんだろうってこと。
これだと超常現象に興味のある人しか手に取らないと思うなあ。
内容はもっと広い範囲をカバーしてて、いわゆる「クリティカルシンキング」の基礎的な態度や技術が、平易な記述で語られている。
そうだなあ。大学1年生くらいの人たちが、ちゃんと考えるための教科書として精読するのに、最適の本だと思う。
それにしても、ここ数年で
「こんなことが脳科学的に明らかになりました!」
と叫ばれてきたもののほとんどが、ずっと前に「心理学的に明らか」になっているのだなあと感慨。
「脳科学」の権威を相対化するにもよい本なのかもしれないなあ、と思う。
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UFO、心霊現象、血液型性格診断、予知夢(虫の知らせ)。そういう、オカルト・疑似科学的な現象をひっくるめて、ここでは「不思議現象」と呼ぶ。本書で繰り返し述べられていることであるが、著者は、こういった不思議現象の存在を否定しているのではない。その可能性を否定することは、原理的にできない。そのため、不思議現象について議論しようとすると、たいてい水掛け論に陥る。
不思議現象が科学的に認められない訳は、それが科学的知識に反しているからではない。そうではなく、信頼性と妥当性が欠けているからである。(信頼性と妥当性が何か分からない人は、本書を読んで欲しい。)まずはそのことを認めた上で、では、人々はなぜ不思議現象を信じるのかを考えましょう、というのが本書のスタンスである。
「信じる心」がなぜ生まれるのか?それは、一言で言えば、「認知のバイアス」によるものである。本書では、認知のプロセスを「知覚」「記憶」「思考」に分け、各段階で起きるバイアスがどのようにして誤った信念を生みだすかを分析している。
人は、自分が体験したことは、一番信頼できると思っている。ところが、ヒトの知覚システムは、しばしば誤りを犯すようにできているのだ。実在しないUFOや心霊現象が「見える」のは、多くの場合、単純に「知覚のエラー」(見間違え)によって説明できる。また、体験していないことを体験したかのように思い込むことがよくある(「記憶のエラー」)。誘導尋問が可能であることが示すように、記憶は容易に変容されうる。目撃者の証言なんか、あてにならないのだ。そのことを示す、数多くの心理学的な実験がある。
3番目は、思考の段階で入り込む「確証バイアス」である。周りを見渡してみれば、なるほど「A型で几帳面」な人を何人も挙げることができる。そのため、血液型性格診断(や、すべての占いの類)は当たるような気がする。しかしそれでは、「A型」と「几帳面」の間の関連性を示したことにはならない。実際には、「A型だけど几帳面ではない」「A型じゃないけど几帳面」「A型じゃなくて几帳面でない」の数も調べなければならない。要は、統計学を勉強しなさいということだ。ただ、この確証バイアスに関しては、統計学的な思考法を身につければ防ぐことができる。それに対し、知覚と記憶のエラーはヒトの生理的システムに依存するため、避けることは難しい。
本書は平易な日本語で書かれており、とても読み易い。1998年の出版だからもう15年も前になるが、古さを感じさせない。この手の本としては、かなりのロングセラーと言える。
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認知心理学の紹介。
百聞は一見に如かずは、間違えることがある。
菊池聡と谷岡一郎は、誰もが読むべき一冊だと思う。
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人は目から入ってくる情報を写真やビデオのように全て正確に捉えられるわけではない。
そして、反証を考えることがなかなか難しい。ゆえに、自分の思うものと合致するものばかりを探してしまう癖がある。